第16話 VSスケルトンメイジ
「キャキャキャキャキャキャッ!!」
スケルトンメイジはその火力が最も厄介と言われており、集団で上位魔法を連発してくる最高にうっとうしいモンスターだ。
次々と発現する魔法陣を見て、俺はすぐさま防御魔法を展開した。
「あっぶねェッ!」
寸前でスケルトンメイジの炸裂魔法を防ぐ。
まさか本当にモンスターが逃げ出すとは思っていなかったが、無垢だと思っていた少女に騙されたことも合わさり、今の俺の機嫌は最高に悪かった。
「良い度胸だ骨野郎ッ!!」
もはや一切のためらいなくサブマシンガンの引き金を引いた。
黒煙から飛び出した大量の弾丸を受け、まず正面にいた数体が無機物へと還る。
すかさず防御の体勢を取るスケルトンメイジ群へ、俺は一気に肉薄した。
防御魔法を使うものとして、防御魔法の弱点くらい知り尽くしている。
距離を取って戦う習性を持つスケルトンメイジへ、俺は至近距離の白兵戦へ持ち込んだ。
驚いた様子はローブ越しにも伝わり、同時に彼らの死を決定づけた。
石畳を蹴って大きくジャンプし、敵を飛び越えながらサブマシンガンの掃射を浴びせる。
神ではなく国の鉄槌を浴びせ、現世より鉛弾をもって冥土に送って差し上げよう。
白骨共に、極楽行き超特急の切符をプレゼントだ。
「グキャ……ギャギャ!」
もはや声にすらならないスケルトンメイジの慟哭が響く。
地上に残る2体が魔法杖を無差別に振り回し、ところ構わず魔法を放ってきた。
着地した俺はまず左にいたスケルトンメイジの杖を蹴り飛ばし、すかさずフルオート射撃を加える。
ローブを切り裂き、弾丸が敵を砕いた。
その隙を狙ったのだろう、炸裂魔法を付与した杖を振りかざした敵に、返す刀で回し蹴りを叩き込む。
数メートルほど吹っ飛んだスケルトンメイジは、そのまま倒れ込んだ。
もちろんこれだけでは死なないだろう、空になったサブマシンガンの弾倉を抜くと、俺はそれを掴む手に魔力を込める。
「『炸裂』」
俺は振り返りざまに弾倉を最後の1体目掛けて放り投げ、すかさず障壁を張る。
もちろん、起き上がったスケルトンメイジの額に当たったそれは、もうただの弾倉ではない。
––––パァンッ––––!!
激しく爆発したそれは、エンチャントによって手榴弾と化した弾倉。
路地裏に爆風が吹き荒れ、爆心地にいたスケルトンメイジは粉微塵になっていた。
手近な物をエンチャントで手榴弾に早変わりさせるというのは、ずっと昔に考えていたがまさか実践することになるとは。
「……なんとか片付いたな、とにかく状況を掴まないと––––!?」
魔力の流れを感じてすぐさま防御魔法を発現。
直後、真上から大量の炸裂魔法が降り注いだ。
「くっそ! まだいたか!!」
障壁越しに見えたのは、屋根上で浮遊する2体のスケルトンメイジ。
連中は俺に間断のない魔法を浴びせ続ける。
「食らいはしないが、これじゃ動けんな」
そんな困り果てていた俺に、やっとのことでペアが到着した。
「はあぁっ!!」
屋根上に陣取っていたスケルトンメイジへ、勢いよく拳を叩きつけたのは通信のため離脱していたセリカだった。
「エルドさん! 大丈夫ッスか!?」
「俺は問題ない! 残りを頼んだ!」
言うが早いか、既にセリカは2体目のスケルトンメイジへ照準をつけ速射。
高低差というアドバンテージを無くしたスケルトンメイジは、サブマシンガンの射撃によって粉砕された。
「怪我した子と女の子はどこですか!?」
「女の子は勝手に消えたよ、怪我してるってのも仔猫のことで人間じゃない」
「ハメられましたね……、早く大通りへ戻りましょう!」
「街の様子は?」
「もうパニックですよ、先行した冒険者パーティーが応戦してますが、苦戦しているようです」
銃声が街中から聞こえてくる。
「よし、なら早く戻ろう」
「あれ、その仔猫は置いてくんですか?」
「えっ?」
戦闘によってとっくに逃げたと思っていたが、怪我をした仔猫は俺の傍まで歩み寄っていた。
冷静に考えれば、怪我してるのに逃げられるわけなんかないか……。
「だーもう! セリカ、コイツも一緒に連れてくぞ!」
「マジッスか!? いやわたしは別に構いませんが」
弾倉を交換し、俺は仔猫を抱きかかえた。