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第159話 王立魔法学院包囲

 

 ――――突入作戦から3日後。

 捕縛されたルノアール学院長は、どこかの施設へ送られたらしい。

 俺の知る由はないが、やった事がことだ......どうなるかはなんとなく想像できる。


《アルファよりHQ、"魔法学院包囲完了"。周辺道路も全て封鎖、警務隊の突入待ちです》

《HQ了解、間もなくそちらにスイスラスト共和国 聖宝騎士団が到着する。しばし待機されたし》


 魔導通信機からやり取りが漏れる。

 そう......あれから3日しか経っていないのに、俺たちはさらなる突入作戦に駆り出されたのだ。


 闇夜に包まれた広場の先にうっすら見えるのは、俺のかつていた『王立魔法学院』。

 そこは今、広場を挟んで大量の兵士や装甲車、警務隊に包囲されていた。


「古巣を包囲した気分はどうッスか、エルドさん?」


 装甲車にもたれていた俺に、すっかり怪我を治したセリカが近寄ってくる。


「別にどうも思わないよ、任務を遂行する。それだけだ」

「だいぶ軍人っぽくなってきましたね〜、まぁ抵抗がないならなによりです」

「まあな、ところで――――」


 俺は気になっていた疑問を口に出す。


「セリカ、なんでお前は銃を持っていない......?」


 彼女はなんと今回ライフルを持ってきていないのだ、ありえないことに右手には"エンピ"ことスコップが握られていた。


「なんでって、わたしは気づいたんッスよエルドさん......」


 グッと拳を握るセリカ。


「銃を持った時の勝率がやたら悪いことに!! だから近接職セイバーらしく原点回帰でエンピを持ってきたんです! これなら弾切れだってしません!」


 そういえばそうだな......。

 彼女......、セリカは銃を使った戦いだと実は結構やられてる場面が多い。

 そのくせエンピを持った時の勝率はやたら高いのだ。


「つまり、セリカさんは初心に戻ったってことですね」


 封鎖用の鉄条網をアッサリ飛び越えて、オオミナトがやって来た。

 彼女の服装は相変わらず上下体操服、唯一変わったと言えば首に赤いマフラーを巻いてることくらい。


 もう息も白いというのに元気な子だ。


「久しぶりにエルドさんたちと一緒に戦えそうでテンションMAXですよ! 今までお留守番ばかりでしたからね! オオミナトさんチート! 無自覚系最強主人公! って呼ばれちゃうくらい暴れてやりますよ!」


 うん、相変わらずのオオミナトだ。

 やはり意味のよくわからない単語を連発する彼女を見ていると、本部との通信を終えたラインメタル少佐が戻ってきた。


「どうだいエルドくん、久しぶりに全員集合した気分は」

「賑やかで良いんじゃないでしょうか、まぁ......出番がないことを祈りますが......」


 今回俺たち王国軍はもしもの時のバックアップ要員だ。

 最初に警務隊が突入し、もし抵抗があるなら俺たちが主攻に回る。


 投入戦力は俺たちレーヴァテイン大隊、さらに中央の精鋭たる近衛師団。

 そして――――


「ん、どうやらお出ましのようだね」


 少佐が見た先には、俺たち王国軍とは正反対の白が基調となった軍服を纏い、マガジンを横から挿すタイプのサブマシンガンを装備した1個小隊がいた。


「うわっ、サブマシンガンなのにバイポッド付いてるッスよ。えーと、あれはどこの国の装備だったっけ......」


 記憶を漁るセリカ。

 そんな彼女へ向かって、白い軍服連中の中から1人の見慣れた少女が駆け寄ってきた。


「久しぶりセリカ!」


 元気よく声を掛けてきたのは、空色の髪を腰まで伸ばしたアルナ教会王都支部長のプリースト――――ルシア・ミリタリアスだった。


「わぁー! 久しぶりルシア! 元気してた!?」

「元気してたはこっちのセリフだよ、もう怪我は大丈夫なの?」

「治癒魔法と回復ポーションでバッチリです!」


 セリカとルシアがキャッキャとはしゃぐ横で、俺は少佐に聞いてみる。


「少佐、あの部隊は?」

「あぁ、あれはスイスラスト共和国の騎士団らしい。今回の突入作戦を合同で行うことになったんだと」

「永世中立国の軍隊が王国内で活動を? ありえるんですか?」

「以前にアルナ教会が亜人に襲われてルシアくんが重傷を負っただろう? それで信頼を失ってしまったようでね......、あの真っ白な1個小隊はルシアくんの護衛要員だ」


 それでルシアがいるのか。

 しかしあれがスイスラスト共和国の騎士団もとい軍隊か......、初めて見るがなかなか格好いいな。


 ミリヲタの血がつい騒いでしまう。


「しかしなぜプリーストであるルシアも今回の作戦に?」

「幽霊騒動の発生源がこの学院の地下だと判明したからね、"安定"をしないといけないらしい」


 なるほど。そういうことか。


「あーそうだエルドくん、セリカくん、オオミナトくん。1つ見せとく物があった」


 少佐はポケットから小さなケースを取り出す。

 中にはよくわからない液体の入った注射針が3本ほど入っていた。


 注射が苦手なのだろう、セリカが露骨に顔をしかめた。


「これは最近技研が開発した『魔力ブースター』だ、これ1本で一定時間の間凄まじい魔力の底上げができる」

「それは凄いですね、してデメリットは......?」

「よくぞ聞いてくれたエルドくん、まだこれは試作品でね......1本使っただけでも尋常じゃない副作用が襲うらしい」


 絶対使わないと皆が心に決めたのだろう。

 場が静まり返った。


「まぁ使う事態はないだろうけど、一応教えておこうと思ってね。それに試作品で貴重だし」

「はいはーい! じゃあそのケースわたしに持たせてくださいよ少佐」


 手を挙げたのはオオミナト。


「いやなんでお前なんだよ、持っとくのは少佐でいいだろ」

「少佐っていっつも前線で暴れ回ってるから、いざという時に傍にいないことが多いって聞いてるんですよ。どうせわたしは後援だし持つにはちょうどいいかなって」


 まぁ確かにそうだ。

 ウォストブレイドの時といい、少佐は割と単独行動が多い。

 その強さ故にだろう。


「そう言われると僕も痛いな〜、よし、じゃあオオミナトくんに持っててもらおうかな」

「わーい!」


 こいつ......実は持ちたかっただけじゃないのか?


 そうこうしている内に、何人かの警務官が広場を進み始めた。

 照明の付いていない学院へ近づいていく。


「彼らが何事もなく捜査できれば、我々の出番はないということですよね?」

「そうなる、だが――――」


 少佐が言いよどむ。


「それは希望的観測だ.....」


 消灯していたはずの魔法学院に、一斉に照明が灯る。

 窓が開け放たれ、いくつもの魔法陣が出現した。

 それは炸裂魔法から電撃魔法、火炎魔法まで様々で、次々と前にいた警務隊を襲った。


「なッ!?」

「やっぱりか」


 動揺しながらも俺はトレンチガンのスライドを、少佐や他の兵士もコッキングレバーを引いた。


「総員戦闘用意! 敵さんの待ち伏せだ! 突入プラン02へ移行! 武器使用許可! 強制執行を開始せよ!!」


 草木も眠る深夜――――王立魔法学院への強制捜査が開始された。

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