第143話 軍隊VS烏合の衆
「あいつら......、まさか銃を手に入れたのか!?」
次々と着弾するそれは、間違いなく銃弾のそれ。
あまりの急展開に動揺を隠せない。
「敵軍からの銃撃なんて初めてだが、いかんせん恐ろしいもんだねー」
「呑気に言っとる場合ですか!」
「まぁやることは変わらんさエルドくん、やるべき義務を遂行するだけだ」
少佐の指示で、待機中だった戦車が前に出る。
「連中にライフルと戦車砲の違いを教えてやるぞ! 撃てっ!!」
大気を叩くような音と共に75ミリ戦車砲が放たれる。
着弾した榴弾はギルドの屋根を吹っ飛ばし、より敵の位置をあらわにした。
「機関銃班は制圧射撃! ライフル分隊は戦車を盾にするか建物を使え! 着実に進むぞ!!」
レーヴァテインの精鋭たちは見事なもので、相手が銃にも関わらず進撃速度をほとんど緩めない。
「この少し重い銃声......、おそらく7.92ミリクラスのライフルですね。王国軍が使ってるタイプと同じ音です」
建物の陰で、セリカが耳を澄ましていた。
「さすがミリオタだな、音でそこまでわかるのか」
「はい、ただ並行して機関銃の音もします。音が軽いから7.92ミリクラスじゃないですね......、レーヴァテインで使ってる9ミリサブマシンガンっぽいですが発射速度が速すぎますし、それよりは音も重いです」
着々と分析していたセリカの額に、汗が浮かぶ。
「心当たりはあるか?」
「はい......1つだけ、ミハイル連邦軍の使用している《PPSHサブマシンガン》ッス。それなら合点がいきます」
「なっ!?」
思わず声を荒らげる。
「連邦の武器をなんであいつらが持ってんだよ!?」
「わたしに言われても知らないッスよ! ただ、連邦軍が武器供与をもししてたら話は最悪です」
あの共産主義者ども! つくづくやってくれる。
もしあいつらが供与したとして、銃なんてどうやって攻略すれば......。
頭を抱えていると、目の前に誰かが立った。
「おや少佐、どうしたんッスか?」
セリカが見上げる。
「いやなに、ちょっとエルドくんを連れてこうと思って」
「ん、どこへ......ですかね?」
「決まってるだろう、前進している主力の掩護だ。身体能力強化を使える君なら僕と2人で斬り込めるだろう?」
「きっ、斬り込みですか!? あの弾幕の中を!?」
「不服かね?」
「いえ、異論ありません」
俺が軍人である以上、命令は絶対。
それがたとえどんなにブラックな内容だろうと、甘んじて受け入れなくてはならないのだ。
「合図で行くぞ、3――――、2――――、1――――」
キッチリ弾倉が入っているのを確認し、俺は全身を魔力でたぎらせた。
「今ッ!!」
俺と少佐は同時に建物を飛び出し、一瞬で戦車を追い抜いた。
セリカの援護射撃を背に、グングンとギルドへ迫る。
「2秒以上同じ動きをするなよエルドくん! 撃たれたくなければ小刻みに移動しろ!」
「了解!!」
空気を切って、俺の耳元を銃弾が駆け抜ける。
「うおぉッ! 銃って撃たれるとこんな怖いのかよ!」
「ハッハッハ! 良い体験になるなエルドくん! さあまずは屋根裏のクソ野郎共を始末しようじゃないか!」
橋を飛び越え、そのまま曳光弾をかいくぐって俺と少佐は屋根裏の空間へ飛び込んだ。
戦車が屋根を吹っ飛ばしたそこには、10体ほどの亜人がいて各々銃を持っていた。
「こんにちは亜人諸君、それを撃ったのなら撃たれる覚悟があるとお見受けする」
少佐と同時にアサルトライフルをフルオートで斉射。
まず閉所では厄介なサブマシンガンと思しきものを片付け、次いで取り回しの悪いライフル持ちへ肉薄する。
「せめて拳銃くらいは予備で持ちたまえ、こういう時によく困るからね」
助言と共に、少佐がナイフで亜人の首筋を掻っ切る。
続いて俺も予備の拳銃を取り出すと、ライフルをコッキングしていた亜人の頭部へありったけ撃ち込んだ。
「クリア、これで大通りの味方も進みやすくなっただろう。問題は――――――」
少佐は落ちている血に塗れた銃を拾う。
「これの出処だな」
王国軍の物によく似た木製の7.92ミリライフルと、明らかに連邦製の7.62ミリサブマシンガンを少佐は両手に持った。
【レンドリース】
本来は米国の武器供与法を指しますが、本作においては武器供与全般を指すものとしています。
平成最後の更新です! 令和になっても引き続き本作をよろしくお願いします!m(_ _;)m




