表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/380

第14話 国営パーティーは見逃さない

 

 数多の人間で賑わうトロイメライ祭。そのコロシアムを行う会場のモンスター搬入口に、軍服を着た人間の姿があった。


「レーヴァテインへ、こちらスカウト02。搬入予定のモンスターが到着した模様。ゴブリンにスケルトンメイジを確認、送れ」


 男の連絡先は、王国軍の警備本部。

 民家にふんしたそこに、レーヴァテイン大隊長ラインメタル少佐はいた。


「ご苦労スカウト、引き続き監視を続行せよ」

「了解」


 少佐は通信を終えたと思いきや、また次の人物へ通信を繋げた。


「レーヴァテインよりスカウト01、コロシアム内の様子はどうだ?」


 熱気に包まれる会場の観客席で、客に偽装した軍人が答える。


「こちらスカウト01、コロシアム内は現在予行プログラム中で小型モンスターと冒険者が戦っています。目立った問題はまだ起きていません」

「そうか、さきほど新たなモンスターが搬入された。我々の予測が正しければ、"連中"は間違いなく動くだろう」

「"連中"ですか……魔法学院へ部下を侵入させた成果とやらですね?」


 ラインメタル少佐は頬を吊り上げ答える。


「さすが、偵察のプロは情報が早い。その通りだ」

「仕事柄耳に入るので……檻を護衛している冒険者パーティーは?」

「檻1つに対し15人、おそらく突破されるだろうな」

「悲しい限りです、下級冒険者に護衛を頼んだツケは高いでしょうな」


 王国軍は以前より、モンスターを入れる檻の護衛を申し出ていた。

 それが、軍服を着るものは信用ならないという感情的な理由で運営に断られたのだ。


 そして、代わりに依頼されたのが中堅以下の冒険者ギルドだ。

 安いだけで責任を持たない、それこそ真に信用ならない者に仕事を頼むコロシアム運営の姿は、滑稽こっけいそのものであった。


「案外強かったり––––という希望的観測をもってはいけませんかね?」

「時代遅れの剣と弓だけで戦えるほど、今の戦いは甘く無いよ。勇者だった僕が言うんだ。間違いない」

「あぁ、勇者殿が言うのであれば間違いありませんな。そういえば新しく入ったという魔導士はどうですか?」


 スカウトの問いへ、少佐は愚問とばかりに答えた。


「エルド君は実に最高の人材だ、中堅ギルド5個は軽く超えるような働きを見せてくれるだろう」

「頼もしい限りですな、面白い紋章も持っていると聞いてますが」

「『マナ無限の紋章』か……、彼が軍に理解を示してくれる人間で助かったよ。あれは国家が管理下に置かねばならない最強クラスの紋章だからね」

「冒険者としてフラつかせるより、軍に置いた方が安心というわけですね」


 ラインメタル少佐は知っていた。

 魔力無限の魔導士が、武器を手に取ればどうなるか。

 その恐ろしく強力な紋章と才能は、軍でこそ発揮されるものであるとも。


『スカウト03よりレーヴァテインへ、南の搬入口に黒色のローブを着た不審者を確認しました』

「来たな……、そのまま追跡せよ」

「了解」


 トロイメライの祭に、不吉な何かが影を落とし始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ