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第122話 VSグレイプニル

 

 いくつもの銃傷を負って倒れる亜人。


「はぁっ......はぁっ、思えば数多すぎんだろ」


 残り10発ちょっとになったアサルトライフルのマガジンを見ながら、俺は逡巡しゅんじゅんしていた。


 さーて、ひとまず突っ込んだはいいいがここからどうする?

 先ほど通路に入ってすぐに待ち伏せの魔法攻撃を受けて見動きが取れなくなった部隊、その打開のために単身突撃したはいいが......。


「王国軍め! 殺せッ!!!」


 クッソが! やっぱ来るよな怒るよな!

 だが俺だって国営パーティーの一員だ、こんなところでくたばる気なんぞ毛頭ない!!


「おらああぁぁッ!!!」


 突っ込んできた亜人を銃床ストックでぶん殴り、倒れ込んだところへさらにフルオートで10発。

 すぐさまマガジンを抜き取ると、手から魔力を込める。


炸裂魔法付与ブラスト!!』


 回転するように真後ろの敵へ投擲した。

 爆風が吹き荒れる、全員が怯んだ隙にマガジンを交換。

 再びフルオート射撃を開始した。


 弾き出された薬莢やっきょうが放物線を描きながら次々に床へ落ちる。

 だが当然ながら数で圧倒されているため、こんな30発装填のライフルでは全くカバーできない。


「あっぶねっ!!!」


 亜人の斧が身を掠める。

 すぐさま『身体能力強化オリオン』を発動して空中へ待避する、あともう少し反応が遅れてたら脳天をかち割られていただろう。


「あとは......」


 上空からアサルトライフルを斉射。

 何体かを倒したところで、俺は真っ黒い四足歩行の魔導兵器を着地しながら見た。


「あれがグレイプニルってやつか、ソフィア戦闘団の戦車大隊が交戦したとは聞いてたが......歩兵の身だとさすがに分が悪いか?」


 さっき通路に炸裂魔法、連射式魔導弾を撃っていたのもこいつだろう。

 ならばこいつを倒さない限りセリカたちは前進できないというわけだ。


「『貫通魔法付与ショット』!!」


 残りの残弾をグレイプニルへ撃ち込むが、エンチャント付きの弾丸はものの見事に弾かれた。


「クソッタレ! 硬さもいっちょ前ってわけか! 今ので抜けないのは結構ショックだぞ!!」


 これは少なくとも軽戦車ないし、中戦車に近い防御力を持っているということか。

 だとしたら対戦車ライフル、セリカが1発だけ持っている対戦車無反動砲を使う必要が出てくる。


 だが......。


 チラリと部屋の中央へ視線を移す。

 そこには、これみよがしに小型の魔甲障壁に守られた『

 ルナクリスタル』の姿があった。


 これを破壊するためにも、無反動砲は温存しておかねばならない。

 だったら1つ......また賭けでもやってみるか!


身体能力強化オリオン』を発動しながらグレイプニル目掛けて突っ込む。

 当然迎撃が大量に飛んできて、すぐさま俺は魔導弾と炸裂魔法の雨に襲われた。


「怯むッ......かあッ!!!」


 飛んできた破片が頭を掠って血を流すが問題なし。

 弾幕をかいくぐり、俺を迎え撃とうとした亜人へ7.92ミリ弾をおみまいして道を無理矢理こじ開けた。


「はっ!!」


 思いっきりジャンプ。

 素早く空中でマガジンチェンジを終えた俺は、グレイプニルを上から見下ろす形で連射。


 狙う箇所は脚の"関節部"。


「『貫通魔法付与ショット』!!」


 こればっかりは正直アーチャースキルがあるとはいえ当てれる自信が薄かった。

 しかし本当に、本当に運が良かったのだろう。

 左前脚の関節部分に弾が突き刺さり、そのままグレイプニルは動きを弱めた。


 今しかないッ、ここで踏ん張らなければ作戦の成否に関わる!

 頭の血を乱暴に拭うと、再び突撃を敢行した。


「来るぞッ! グレイプニルに近づけるな!!」

「邪魔すんじゃねえぇ――――――――ッ!!」


 立ちふさがってきた亜人を思い切りぶん殴ることで強引に突破、まだ動きを鈍らせていたグレイプニルへ肉薄した。


「『貫通魔法付与ショット』!!!」


 全弾を関節部に叩き込む。

 けたたましい騒音とマズルフラッシュが駆け巡り、やがて最後の薬莢が弾き出された頃――――――


『ジソウフノウ、ジソウフノウ、カンセツニジュウダイナソンショウアリ』


 やたら棒読みな声がグレイプニルから出てくる。

 あとは動けないこいつの処理だ。


「おい......、あいつ何をッ!?」


 後ろに引いていた亜人たちがざわめく。

 今自分は隙だらけだがそのおかげで助かった。


「ぬおおぉ......りゃあぁぁあああああッ!!!!」


 全身が悲鳴を上げながらも、俺はこの巨体――――グレイプニルを持ち上げた。

 レベルに合わせて向上する身体能力に物を言わせた、強引なやり方だ。


「ばっ、化け物だ......!!」

「化け物? こちとらただの一般兵だっつーの......!!」


 俺は力の限りを使い、まだ棒読みでなにかを叫んでいるグレイプニルを亜人目掛けて――――――ぶん投げた。


「『炸裂魔法付与ブラストォォッ』!!!」


 敵の兵器にエンチャントをするなど考えたこともなかった。

 だが、7.92ミリ弾を弾くこいつにトドメをさし、なおかつ亜人部隊を一掃できる方法はもうたった1つしかなかったのだ。


「吹っ飛べ!!」


炸裂魔法ブラスト』を付与されたグレイプニルが、亜人集団のド真ん中に直撃。

 猛烈な爆発が要塞を揺らし、爆風が入り乱れた。


「展開位置をほぼ制圧!! 掃討のためにも前進されたし!!」


 俺は通信で、まだ通路にいた他のレーヴァテインメンバーへ前進を促した。



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