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第121話 魔力無限の異端な魔導士

 

「全員集合完了しました!!」


 王国軍が進撃しているであろう道とは逆の資材運搬口から、亜人部隊はルナクリスタルのある大広間に展開していた。


 80体の亜人はみなそれぞれに武器を持ち、身構える。

 その中には漆黒の四足魔導兵器・グレイプニルの姿もあった。

 これは炸裂魔法発射装置と、連射式魔導弾を備えたウォストピアの誇る陸戦兵器だ。


 元は古代文明のものを発掘、解析したものだがスペック的にはどの魔導士よりも優れている。

 もっとも、先にあった【旧エルフの平原撃滅戦】では投入した全てが王国軍戦車大隊によって粉砕されているが......。


「まもなく敵が来る! 各員魔法斉射用意!!」


 大広間の正面――――開け放った門の先に見える大きな通路が最終防衛線だ。

 ここを通すまいと、モルドたち亜人は各属性の魔法を用意。

 そしてその奥、階段よりいくつもの黒い軍服を着た者たちが続々と現れたのが戦いの合図だった。


「全魔法発射! 王国軍を近づけるな!!!」


 モルドの号令であらゆる属性魔法が、カラフルな弾幕となって王国軍へ向かっていった。


『タイショウハッケン、コウゲキカイシ』


 同時にグレイプニルも連射式魔導弾を発射。

 広い通路は一瞬で弾幕に包まれた。


「いいぞ! このまま時間を稼ぐ! 奴らを絶対に近づけるな!!」


 濃密な攻撃を展開。

 このまま通路に釘付けておけば、さしもの王国軍とて動けはしない。

 あとは数キロ離れた第3防壁からの増援を待てば勝機はあった。


 だが――――――


「モ、モルド隊長!!」

「なんだ!!」


 淡い期待はまるでシャボン玉のように――――――


「単騎で突っ込んでくるヤツがいます! とんでもない速度です!」

「なんだと!?」


 弾けて消えたのだ――――――


「だ、弾幕を抜けてきてる......!? あんな芸当が可能なのは『身体能力強化オリオン』くらいだぞ。連中めヤケを起こしたか!」


 エンチャントの『身体能力強化オリオン』とはいわゆる誰も使えない、使おうともしない欠陥魔法というのが常識だ。

 ひとたび発動すれば10秒と経たず魔力を燃やし尽くし、劇的な身体能力の向上を得られる。


 しかし、そもそも魔導士というのはレンジを取って攻撃するもの。

 限りある魔力を無駄にしてまで距離を詰めるメリットなどないのだ。


 つまりあれは自爆にも等しい特攻だと誰もが考えたが、すぐさまモルドは青ざめた。


「バカなッ!?」


 もう魔力が枯渇してもいいはず。

 なのに、弾幕のカーテンをかいくぐってたった1人の男が凄まじい速度で距離を詰めてきていたのだ。


「やむを得ん......! 炸裂魔法発射ッ!! ヤツを止められればなんでもいい!!」


 素早い点を叩くため、亜人部隊とグレイプニルは徹底して"面"で叩く。

 それでも、男は速度を落とすどころか加速して突っ込んできた。


「まだ魔力が切れないだと......、どういうことだ!!」


 激昂する魔導士。

 だが答えは、図らずも教えられることとなった。


「悪いな、こちとら魔力量だけが取り柄の魔導士なもんで」


 ――――ダァンッ――――!!!


 響いたのは乾いた発砲音。

 アサルトライフルから撃ち出された7.92ミリ弾が、至近距離から魔法を放っていた亜人のこめかみをブチ抜いたのだ。


「なッ!!?」


 振り向くモルド。

 そこには、王国軍を示す黒い軍服を纒った男が銃を持って立っていたのだ。


「いつの間に」と叫ぼうとしたが、腕や胸に激痛が走る。


「がっ......あぁ......ッ!」


 モルドの体を、数発の銃弾が貫通していた。

 それは目の前の魔導士が持つ武器、銃によってやられたのだと気付く。


 3発のセミオート射撃で、モルドは意識を失わないまでも動けなくなり――――そのまま倒れ込んだ。


「全く......1人で突っ込めなんてセリカもヘッケラー大尉も無茶を言いやがる、これだから国営ブラックなんて揶揄されるんだ」


 自分を囲む亜人部隊を一瞥しながら、魔力無限の魔導士――――エルド・フォルティスは瞳を夕暮れ時のように輝かせた。


「まぁ、給料分の仕事はしないとな」


 モルドの眼前――――『炸裂魔法ブラスト』付きの弾丸で同僚が吹き飛んだのはその直後だった。


「国営パーティーを舐めるなよ、ウォストピア。ウチの国民が――――ルシアが味わった苦痛はしっかりと返してやる」


 エルドはセレクターを"フルオート"に切り替えると、攻撃をこちらに向けようとした亜人へマズルフラッシュを瞬かせた。


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