第12話 えっ、なにこのミリオタ......女子力高い
トロイメライ祭で行われるモンスターコロシアムは、文字通りモンスター同士を戦わせる新たな娯楽だ。
しかし迫力満点の代わりに危険も孕んでおり、王国軍や警務隊はその開催に以前より難色を示していた。
だが見込まれる莫大な経済効果が開催を推進し、モンスターの捕獲を依頼する冒険者ギルドも潤うということで、なし崩し的に進んでしまったのだ。
「トロイメライの街が、なぜ水の都と呼ばれてるか知ってますか?」
「なんだいきなり、水源の豊富な島に造ったからだろ?」
「ほぼ正解ッスね、まあもう一つ理由としてトロイメライは海峡越しに離島なので、水上都市と昔言われてたからみたいです」
なるほど、それで最大限の妥協として離島での開催というわけか。
「じゃあ、この景色の良さも納得だな」
そう、トロイメライへ行くには海峡を列車か船で渡らねばならないのだ。
今回我々は列車のため、大橋を走る車両の窓から水平線が覗いていた。
天気は快晴、空も澄んでいて明るいのに月まで見える。
「あっ! あそこに海軍の軍艦も見えますよ!」
ガタゴトと揺れる車内で、セリカが海を指差した。
「デカいな……戦艦か?」
「みたいッスね、あれは確か最近就役したばかりの艦だったはずです。なんでも魔王軍の再びの襲来に備えたんだとか」
「2連装主砲が物々しいな…….頼もしい限りだが」
海峡には大型輸送船や、民間の漁船などもひしめいている。
日常と非日常が交錯する不思議な光景だった。
「そういえばエルドさん、お昼はシフト空いてますよね?」
「ああ、昼なら一応空いてるが……」
「なら休憩時間にどこか周りましょうよ! トロイメライで評判のアイス屋さんも既にリサーチ済みッス!」
こういう部分はさすが女子といったところか、レーヴァテイン大隊の乗る列車がトロイメライ中央駅へ着く頃には、もう観光コースの選定も終わっていた。
◇
「––––これより市街警備に移る! 各員、弾倉を銃に装填せよ!」
水の都トロイメライへ着いた俺たちは、さっそく与えられた新型サブマシンガンを装備していた。
弾倉を押し込み装填、セーフティをしっかり掛ける。
既に他の部隊も来ているらしく、大勢の王国軍人が通りを歩いていた。
「我々の担当は中央市街地だ、もしモンスターが脱走した時は発砲を許可する。遠慮はするな、一方的に殲滅せよ!」
「「「はっ!!」」」
少佐はコホンと咳払いをして続ける。
「これが初任務のエルド君は、セリカ君とペアを組んでもらう。もしもの場合はためらうな、国家の力を遠慮なく叩きつけてやれ」
「了解!」
やっと与えられた軍服は、俺の中の士気を一層上げていた。
「フッフッフ! エルドさんは新参、つまりわたしの後輩ということですね! 良いでしょう! みっちり指導してあげますよ!!」
「今までずっとあいつが後輩だったから……えらいはしゃいでんな」
「エルドの方が身長高いし、どっちかっつーと先輩より妹だな」
大隊の皆さんが笑う。
「うっさいッスねそこー! わたしの先輩らしいとこ見て腰抜かさないでくださいよ!」
「はいはい、暇があったら見ときますよ」
「だーっ! あいつらわたしを妹キャラみたいに言ってー! 今に見ててくださいよ!」
なるほど、あいつはイジられキャラで通ってるのか。
確かにそんなイメージはある。
「ま、頼りになるお姉さんって感じはしないな」
「んなぁー! エルドさんまで……! この裏切り者ー! 外れ紋章ー!」
ガックガクと俺の首を揺らしてくるセリカ。
ようやく落ち着いたところで、少佐が全員に一声を掛けた。
「準備はいいかね? では諸君、水の都の調律を保とうではないか、行動開始!」
【戦艦】
超デカイ大砲をガン積みした、クッソ強い海の要塞であり男のロマン。
その昔――――この戦艦をいくつ保有しているかでその国の国力を計ってたりしたらしい