第115話 要塞戦は火力こそ至上
「マジで敵要塞のド真ん中かよ......」
こんにちはご機嫌麗しゅう、いきなり視界が真っ白になったと思ったら召喚魔法で敵地の中心に出現させられたエルドと申します。
本日の天気は快晴、さっきまで王都は曇っていたので相当遠くへ飛ばされたのがよくわかります。
「どうやら、無事に召喚できたようだな」
歩み寄ってきたのは黒いローブを纏った誰かさん。
それは俺たちの前――――魔導砲台らしき物のところでフードを少し上げた。
「お前は!?」
見覚えなど大あり。
彼女は水色のショートヘアを持った小柄な吸血鬼の少女、ロンドニアを襲った魔王軍の最高幹部だったのだ。
突然現れた最高戦力にすぐさま銃を構えようとするが、それはラインメタル少佐によって静止される。
「待ちたまえエルドくん、彼女は味方だ」
「味方......ですか!?」
「あぁ、我々をここに召喚してくれたのは他でもないアルミナくん本人だからね」
うん......? ちょっと待て。
確かに召喚魔法は発動者が現地にいないと使えないが、ならなぜこいつは敵である俺たち王国軍に味方している?
疑問符を浮かべる俺たちへ、アルミナは水色の瞳を向けた。
「そこの勇者とは癒着があるだけだ、お互い必要が必要であるがゆえに協力しているに過ぎない――――――が、今は味方という解釈をしてもらって構わない。それより例のものを......」
「そうだそうだ、いけない忘れるところだった――――」
少佐が出したのは......"月刊ミリタリー島の最新号"!? なんでそんなものを。
他にもいくつか雑誌や本がアルミナに渡されたが、全部俺とセリカが熱心に購読しているものだった。
「感謝する、じゃあこれを」
代わりに渡されたのはなにかの間取り図。
しかしすぐにこの要塞のものだとわかった。
「いやはや感謝するよ、これで『ルナクリスタル』の位置も丸裸というわけだ。だが本当にお礼がそんな雑誌で良かったのかい? もうちょっと欲張っても良かったんだぞ」
「いや......これで構わない、ロンドニアでわたしたちを倒した戦車とやらの兵器も載ってるんでしょ?」
興味深そうにパラパラとめくるアルミナ。
なるほど少し読めてきた、どうして今まで少佐がありえないくらい魔王軍の情報を握っていたか。
「少佐、もしかしてあの最高幹部さんにちょくちょく兵器スペックとか載ってる雑誌を交換して情報貰ってたんスか?」
俺と同じ結論に至ったのであろうセリカが、エンピ片手に少佐へ問う。
「......まぁそんなところかな、とりあえず要塞内には無事入れた。アルミナくんはどうする?」
「わたしはその辺に隠れてこの雑誌を読んでる、帰りたい時は信号弾とか上げてくれればここで帰還用の魔法を発動させるわ。じゃあ後で」
ホントにいたれりつくせりだな。
そんなアルミナは、もう一度フードを深くかぶると城壁から飛び降りてしまった。
「いや〜......なんか、全く状況についてけない自分がいるわ」
「はい、知らないジャンルの専門用語言われまくった後みたいな感じするッス」
俺とセリカが困惑、後ろの大隊員たちもウンウンと頷いていた。
「いや色々と隠しててすまなかった、事情は帰ったらゆっくり説明するよ。でも今は――――――」
突然鳴り響く警報。
魔力反応でバレてしまったのか、これでは次々に敵兵が俺たちのいる砲台陣地へ詰めてきてしまう。
「まずは仕事をしようじゃないか、行くぞ諸君!! 銃弾のプレゼントだ!!」
少佐は魔法陣の上に乗っていた机――――その上に掛かっていた布をバッと剥がした。
出てきたのは火力に特化したヤッベェ重火器たち。
・ダブルドラムマガジンの付いたGPMG(汎用機関銃)
・リフレックスサイト搭載のアサルトライフル
・最強の火力を持つ対戦車無反動砲
・いつか撃退した冒険者クロムが持っていた魔導盾
「セリカくんは対戦車ロケット、エルドくんはGPMG!! 副官! シールド!!」
あっという間に火力支援のための編成が完了、少佐は盾とアサルトライフルを持って扉を蹴り開けた。
「前線を火力でもって突破する!! 総員突撃!!」
まずは中庭を目指すべく俺とセリカ、少佐と他数名が先行。
目標は魔甲障壁の無力化、および司令部施設の破壊だ!




