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第114話 ウォールブレイク作戦第1段階

 

 ――――ウォストブレイド国境大要塞。


 巨大な魔甲障壁と3枚ある壁を進んだ先に、司令部要塞はあった。

 それ自体も王城に近い大きさを持ち、湖の傍で今日も静かに佇んでいる。


 つい最近この要塞へ配属された猫獣人キャットピープルのモルドは、設置されている弩砲バリスタの前で葉巻を吸っていた。


「ふ〜ッ......」


 紫煙を吐き出し、柵の下を見下ろす。

 巨大な司令部要塞の足元からは、居住区の賑わいが伺えてとても幻想的だった。


「一服か? モルド」


 扉を開けて同僚が出てくる。


「あぁ......故郷を思い出してね」

「故郷? ウォストセントラルか、妹さんがいるんだっけ?」

「そうだよ、サーニャっていう可愛い妹が俺の帰りを待ってる」

「羨ましいぜ、俺なんて見送りすら家族にされなかったってのに」


 ちょっと悲しげなことを言った同僚は、そのままバリスタへもたれかかる。


「モルド、この戦争......どうなると思う?」

「戦局予想か? お前らしくない、それに聞いたらたぶん怒るぜ」

「構わねーよ、暇だし聞かせてくれ」


 再び紫煙を吐き出したモルドは、つい最近部屋から漏れ聞こえてきた幹部連中の話を思い出す。


「先日、【旧エルフの平原】が人間共に占領されたらしい。政府含め上は隠したがっているが王国とはあまりに技術、工業規格で差が開いてるんだと」

「......マジかよ」

「当然軍事力もだ、敵の新型部隊によって平原にいた連隊がまるごと包囲撃滅くらったらしい。ここにもいつ連中が来るかわからん」


 ウォストピア政府は都合の悪い情報を隠すどころか、"敵部隊を圧倒撃滅した!"と嘘をつき続けている。

 モルドが盗み聞きした時と同様、同僚もショックを隠せないでいた。


「じゃあ【旧エルフの森】を奪取できたってのは......?」

「真っ赤なウソだ、あそこはとっくに王国軍の拠点だよ」

「最近投入された4足魔導兵器のグレイプニルがあったろ、活躍したと聞いたんだが......!」

「戦車とかいう鉄の車に粉砕されたらしい、......文字通り全滅だ」


 葉巻を靴の裏で踏みにじる。


「嘘だろ......、じゃあもうこの国境大要塞の目前まで敵が来てるってことじゃねえか......」

「そうなる、まぁ魔甲障壁がある内は大丈夫だろうがな」

「だっ、だよなぁー」


 そんな談笑が上で交わされていた頃、司令部要塞地下にある魔力レーダー監視員は妙な影を捉えていた。


「――――うん?」

「どうした? なにかあったか」

「いえ、先程からこの司令部要塞に魔力反応が現れまして......」

「見張りが葉巻に火でもつけようと魔法を使ったんじゃないのか?」


 もっともであった。

 ここは障壁と3重の壁で守られた鉄壁の要塞である。

 考えられるとすれば身内の仕業だ。


「そうですね、きっと気のせい......気の......」


 だが、魔力レーダーの反応は収まるどころかドンドン大きくなっていった。

 それはやがて砲台区画の中心で輝く。


「これは......ッ!! 大至急解析しろ!!! 身内の仕業じゃない!!」


 魔法が具現化する直前、腕のいいレーダー員はすぐさま種類を特定。

 ――――そして絶望した。


「特定完了! 班長! これは召喚魔法です!! なにかが要塞内に召喚されようとしています!!!」

「バカなッ、召喚魔法だと!? 今すぐ止めろ!!」

「無理です間に合いません!! すぐに警報を発令してください!! 我々はふところへ侵入されました!!」


 レーダー室の班長は警報を発令。

 机を勢いよく叩いた。


「奴らの狙いは――――――ここかぁッ!!!!」


 ――――09:15。

 レーヴァテイン大隊120名が【ウォストブレイド国境大要塞】へ出現、ウォールブレイク作戦の第1段階がスタートした。


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