第11話 国営パーティーは新武器も反則級だった
––––王国陸軍・王都駐屯地の射撃場。
たくさんの的が並ぶ広い敷地で、レーヴァテイン大隊は少佐の前に整列していた。
「さて大隊諸君! トロイメライ祭に際して、我が部隊は新装備を使うことが決まった!」
「はい拍手ー!!」
少佐が山積みになったケースを叩き、セリカが音頭を取る。
拍手するのは、俺を含めたレーヴァテイン大隊の面々だ。
普段は会わない基地暮らしの者も含め、この場には100人以上、トロイメライへの派遣が決まった者たちがいた。
「まず1つ目、対小型モンスター用の『サブマシンガン』。まだ量産前の試作品だが、実戦評価を兼ねて我が隊で使うこととなった」
掲げられたのは、ついこないだ写真集で見たばかりの新型サブマシンガンだった。
鋼鉄の武器は、コンパクトながらも迫力があった。
「この光沢最高だあ! これでやっと重いライフルから開放される……! あぁ〜早く撃ちたいッ!」
さぁもう横のミリオタが目をキラキラと輝かせているぞ。
みんなはもう慣れているのか、セリカが各部をイジりまくっているのを見ても全く気にしていない。
「数人を除いて、今回は全員これで統一する。火力も大幅アップだ」
「となると拳銃もですか少佐?」
「あぁそうだ。次にこれ、『サイレンサー付き9ミリ拳銃』」
少佐がケースから、消音器の付いた拳銃を出した。
ここまでの流れで、俺もテンションが上がってしまう。
なんと素晴らしきかな国営パーティー、税金によって強化された最新鋭の武器ばかりだ。
「非常に静かな武器だ、取り回しも良いから使いやすいだろう」
「少佐ー! せっかくなのでサブマシンガンとか撃ってくださいよー!」
もうテンションアゲアゲのセリカに、少佐は「良いとも」と二つ返事でオーケー。
慣れた手付きで細長い弾倉を差し込むと、薬室へ装填。
かつて勇者の剣を使っていたとは思えない、美しいフォームで射撃。
軽い発砲音が連続で響き渡り、的に次々と穴がこじ開けられた。
「装弾数32発、フルオート射撃の制圧力は素晴らしいと言える。市街戦においてはモンスター相手に十分な働きを見せるだろう」
「うっはー! さすが少佐ッス、わたしも早く撃ちたいー!」
「なら撃ってみるかい? ついでにエルド君も触ってごらん」
「えっ、俺もですか?」
前に出て、新たに出されたサブマシンガンを受け取る。
「付与魔法は?」
「問題ないようです」
「よしテストだ、撃ち方用意!」
装填し、初めて触る武器を頬付けした。
「エルドさんなら余裕ですよ!」
「じゃあエルド君が僕より的を倒せれば全員にジュースを奢ろう、外したらその逆だ––––頑張りたまえ」
「ぐっ……、セリカめ余計なことを!」
狙いを定める。
……いやいや無理だろこれ、少佐どれだけ射撃上手いんだよ。
なんと1弾倉分で6体が倒されている。
だがあの手なら!
「エンチャント––––『炸裂』!」
「なっ!?」
トリガーを引き連射。
地面ごと的を爆発で吹っ飛ばし、エンチャントで強化された弾丸が20体をまとめて薙ぎ倒した。
勝利条件が撃ち抜くではなく"倒す"だったので、一応セーフなはず……。
「おー、これまた上手いこと裏を突いてきたッスね〜。奢りですよね少佐?」
「ゆっ、勇者に二言は無い、100人全員にジュースを奢ろうじゃないか……」
気のせいか、少佐の声が少し震えている。
「まあ新武器の威力はこんなものだ、トロイメライ祭のモンスターコロシアムは1週間後。万が一に備えて気を引き締めるように!」
「「「「「はっ!!」」」」」
新たに武器を手に入れた国営パーティーことレーヴァテイン大隊は、来たるべき祭の日へ備えた。
【サブマシンガン】
拳銃の弾を使った小型の機関銃で、軽い! 強い! 安い! の三種を備えた個人用火器。
発射速度が結構速く、近距離で使用するとクソ強い




