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第108話 制空権の喪失

航空戦力こそ最強 (うっとり)

 

「キーラ隊全滅!! 敵航空部隊が急速接近中!!」


 これまで無敵を誇っていたキーラ隊、防空網の中核がいとも簡単に突破され新生魔王軍第4梯団ていだんはパニックに陥っていた。


「まさか......キーラ隊がやられるとは......!? 敵の数は?」


 第4梯団指揮官のグルームは、額から汗を落としながら叫ぶ。


「敵総数100以上! 後方にも飛行船部隊の可能性あり。ただちに防空戦闘の準備を!」

「よしっ、全ての黒魔導師に魔法攻撃を行うよう指示する。ここを抜けられれば亜人国ウォストピアまで一直線だぞ!!」


 第4梯団はその数を12000にまで減らしていたが、その分だけ生き残った精鋭も揃っている。

 今防空戦闘を発令した黒魔導師部隊だけでも、冒険者ギルドを2つ3つ潰せる戦力だ。


「敵航空部隊が森上空へ侵入! もうすぐここに――――――」


 魔導探知官が敵の接近を知らせる中、地響きが司令部を襲った。

 ここは地下にあるため、外の状況が直接把握できない。

 間もなく伝令が地下司令部へ突っ走ってきた。


「ほっ、報告! 敵が"光の矢"による攻撃を開始した模様! 地上部隊に被害が出ています!!」

「なんだとッ!?」


 なんと、彼らが光の矢と呼ぶ兵器、"多連装ロケット砲"が森を焼き尽くさんばかりに撃ち込み始めたのだ。

 怒涛のような攻撃は絶え間なく続く地鳴りのように司令部を揺らす。


「ヤツらめ.....! 最初からエルフの森だというのを気にしてすらいないな」

「王国軍は自国領土以外ならなんでもしてくるんだ! あんなの反則だ!!!」

「あんな炸裂魔法の雨をくらったんじゃ、上の黒魔導師部隊だってひとたまりもないぞ......!」


 恐慌状態へ陥る司令部。

 間断なく続けられる砲撃が兵士の精神を磨り減らす、魔王軍においてもそれは例外ではなかった。


 さらに通信用魔導結晶から生き残った見張員の声が飛び込んでくる。


「敵発見!! 上空いっぱいに影が見えます! 空襲!! 空襲――――――ッ!!!」


 ◇


 旧エルフの森上空へと達した王国軍第1波攻撃隊のワイバーン118騎は、急降下と同時に火炎弾を発射。

 対空用にファイアボールや電撃魔法を放つ防空陣地が、次々と火柱を上げた。


「逃げろぉっ!! 数が多すぎる!!!」


 その様子は、巣をつついた愚か者に、大量の蜂が群がるようなという表現が正しいだろう。

 ゴブリンやオーガは為す術もなく焼かれ、急ごしらえで建てた施設が凄まじい勢いで爆発していく。


 後方からの補給物資もワイバーン部隊の集中砲火を受け、食料諸々が炎上した。


 その上――――――


「ダメだ、炎で道が塞がれてる!!」


 ロケット砲の事前砲撃でデコボコになった道をなんとか抜けても、炎の壁が立ち塞がったのだ。


「水属性魔法を使えるやつは!?」

「さっきまでいたが空襲で死んだ!! どうにかして突破を......あがぁっ!!?」


 待っていたかのような急降下爆撃で、また1つ黒魔導師小隊が全滅した。


 そう、王国軍ワイバーン部隊は魔王軍第4梯団ていだんを円で囲むように火炎弾を発射。

 誰一人として逃げられないよう、文字通り炎の壁で包囲したのだ。


「ぐっ......!!」


 崩れた見張台の下敷きになった黒魔導師は、絶望的な状況の中で東方の空にいくつもの巨大物体を見る。


「飛行船.....部隊!?」


 既に火の海と化した旧エルフの森へ、第2波たる王国陸軍第11爆撃航空艦隊が侵入。

 対空砲火もロクに上がらなくなった陣地上空へ到達すると――――――


「えっ......」


 爆炎が見張員を消し飛ばす。

 矢継ぎ早に投下されたナパーム弾が、壊乱状態の第4梯団へ降り注いだのだ。


「たっ、助け――――ガァっ!?」


 飛行船からはナパーム弾だけではない、大量に据え付けられた機関銃が逃げ惑う魔王軍を撃ち降ろしたのだ。

 発射速度の凄まじい汎用機関銃が、背を向けたグレムリンの一団に風穴をあける。


「グルーム様! ここはもうダメです!! すぐに脱出を!!」


 側近が第4梯団長を逃がそうと部屋のトビラを開けるが、既に遅かった。


「うっ、うわあああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!?」


 炎の波が地下司令部内を襲う。

 入口に取り付いた何体ものワイバーンが、最大出力で火炎放射したのだ。


 入り組んだ司令部内を炎が駆け回り、新生魔王軍第4梯団長グルームもろとも焼き尽くした......。


 戦いは終始一方的で、王国軍ワイバーン部隊は4騎が軽く被弾した程度。

 対する魔王軍第4梯団はその数を"12000"から僅か"400"未満にまで激減させた。


 そして、その第4梯団を助けに向かった魔王軍第2軍団は、この惨状と振り上げられた拳に気がつけなかった。


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