工房の体制を見直そう <C260>
細山村からの応援をある程度自由に使って良いことになったため、やっと色々なことに手が出せる状況になってきました。
村に戻ると、百太郎が家で待っていた。
「登戸村で炭屋に練炭の補充を行いました。
これからは、普通練炭320文、薄厚練炭100文で販売していくこととなりました。
委託販売した売上代金分として3904文を受け取りました。
また、加登屋さんのところに渡していた炭団を1個20文で売ることになり、その代金4320文を受け取っています。
ただ、布海苔を200文分仕入れましたので、8024文をお渡しします」
「ご苦労だった。
さて、今朝与忽右衛門さんに炭の要請をしてきた。
今の時点で金程村に送る分を除き65俵手持ちがあるそうだ。
そして、今年はあと3窯立てる予定なので、これから20俵位は渡せる見込みだと言われた。
なので、85俵はあてにして良いとのことだ。
ザク炭の代金の17000文は、いつでも良いということだ。
これで2ヶ月分の材料はある算段になるだろう。
とりあえず、これで様子見してはどうかな」
炭団・小炭団構想もあるので、原料の消費が増える可能性は高い。
「あと、細山村の二人組を、当面続けて助太郎が使って良いとの了解も得た。
手当てについては、年末に清算することで決着が付いている。
なので、粉炭作り以外でも、今回の練炭・七輪にかかわる仕事をさせてみてはどうかな」
多分、七輪の原料となる水田の土の掘り起こしに使ってみてはどうか、ということと理解した。
「ありがとうございます。
早速、助太郎と相談してきます」
布海苔200文分を持って、工房へ向う。
「今日は来れないと思っていた」
助太郎の声に迎え入れられた。
「皆、作業を続けるように」
助太郎はそう指図し、いつも作戦会議をする工房の奥に向う。
「今時点で粉炭が7俵(=105kg)分あります。
毎日4俵(=60kg)分作り、2俵(=30kg)分使うので、増える一方です。
どこかで一杯になるので、作業調整が必要です」
助太郎が開口一番言ったのは、細山村の二人の件だった。
「この二人だが、今最初の買い付け分20俵(=300kg)の運搬と粉炭作りということで来てもらっている。
だが、細山村から調達するザク炭が65俵(=975kg)追加になったことを伝えておく。
また、まだこれから窯を興す分で約20俵(=300kg)あるということだ。
これを持ってくる都度全部粉炭にするのではなく、毎日使う分だけ、つまり2俵あるいは2日に1回4俵分を擦るという考え方もある。
そして、作業が空いた細山組の二人を水田の掘り起こしに使っていいという了解を名主から得た。
なのでまずは、ザク炭の俵の保管場所を確保して欲しい。
今のところ100俵程度入る場所があればいいと思う。
次に、水田の土・粘土を確保する場所だ。
あの水田で決まりだが、掘り出した粘土と同じ分を山土で戻す必要がある。
なので、まず保管場所から土を掘り出しておき、水田を掘り、土と粘土を交換するという方法を取る。
まず半畝(=50平方メートル=10m×5m)を掘り起こそう。
どの程度の深さまで粘土があるか判らないので、赤土が出るところまで掘り下げるが、まあ2尺(=60cm)ぐらいは粘土層と思って準備すればいい。
水田からもって来る土は、多分16000貫(=60t)くらいになると思っている。
一気にする必要はないと思うので、少しずつ粘土と土の交換を進めてもいいと思う。
七輪には1個あたり大体1.5貫(=5.6kg)の粘土を使うので、10000個分の七輪を作る量がある。
これだけあれば、当面は充分だろう」
まずは、一気にまくし立てた。
早口でいろんな話しを混ぜているが、助太郎は間違いなく理解したようだ。
「それから、登戸村で炭団の売値が20文と決まった。
こちらは七輪が必要ないことと安価なことから、結構な数が出る見込みだ。
炭屋の番頭さんから200個位は欲しいといわれている。
量産できないかを考えて欲しい。
あと、炭団ももう少し安い形のものを考えた」
そう言って、道々考えた小炭団の構想を説明する。
「なるほど、炭団と小炭団の量産ですね。
ここは寺子屋組を充てましょう。
炭団の型はそれなりにあるので、一日で500個位は型から抜くことができます。
小炭団はこれから型を作るとして、やはり1枚の板で16個、上下の押し型も入れて3枚一組か。
2~3日かけて2組作ってみましょう。
まずは、炭団の指示からしましょう」
助太郎は、米・梅、寺子屋組3名、細山村組2名の7人を呼び集めると、明日からの作業の準備ついて指示をした。
「明日から、仕事の割り振りを見直したい。
まず、左平治と種蔵の二人は、毎朝ザク炭を4俵持ってきてもらっているが、それは当面続けてもらう。
ただ、細山村のザク炭は全部金程村が買い付けたので、当初の20俵から更に65俵分が追加になる。
そして、毎日持ってきた木炭を全部粉炭にしていたが、当面3日に1日だけ、6俵分を粉炭にするということにしたい。
だいぶ慣れてきたので、二人で1日6俵(=90kg)ぐらいはできるだろう。
それで手が空く3日のうち2日は、穴掘りと土運びをしてもらいたい。
場所は明日説明する。
次に、福太郎と春は、炭団を作ってもらいたい。
型が4枚あるので、それを使う。
どうすればいいのかは、米と梅が指導してくれ。
近蔵は、出来上がった練炭の検査だ。
重さは天秤に載せ、重い分銅より軽く、軽い分銅より重いものが合格だ。
直径と高さの寸法は、それぞれ2つの型を使う。
いずれも大きいほうの穴を潜り、小さいほうの穴を通らないことを確認すれば合格だ。
不合格の普通練炭、薄厚練炭は、避けておいてくれ。
不合格となった練炭の扱い・処置についても近蔵に頼みたい。
米と梅は今まで通り、薄厚練炭の型抜きと、手が空いたほうは七輪製造の手伝いだ。
今日は今まで通りの作業をして、切が良い所で終わりにして欲しい」
的確な指示をした後解散し、皆は作業に戻った。
「米と梅は、今日から家で与ることになった。
朝、風呂敷に着るものなんかを包んで持ってきて、親ともども家に挨拶にきた。
これで、家も賑やかになるし、工房も明日から毎朝掃除してくれることになるし、いいこと尽くめだ」
助太郎は感謝してくるが、甲三郎様の巡視で勢い付いたというタイミングもあるのだろう。
「近蔵が検査だけだと、仕事として軽すぎないか」
「いや、検査で不合格になった練炭を粉炭に戻す作業もさせる。
木炭を擦ったものとは別枠に扱っていて、小炭団の原料に混ぜることを考えている。
なので、小炭団の型ができたら、粉炭の捏ね、型押しもさせたいと思っているので、心配ない」
さすがに良く考えている。
「ところで、大丸村・円照寺に七輪・練炭を持っていきたいのだが、在庫はあるのか」
「七輪6個、普通練炭24個、薄厚練炭80個が仕上がっている。
乾燥中は、今日送り込む分を入れて普通が24個、薄厚が96個だ。
七輪は乾燥中が3個になる」
打てば響くように反ってくるのを聞いて、安心した。
「ならば、七輪3個と普通を12個、薄厚を60個位持って行きたい。
あと、焼印の案を見せるつもりだが、これで了解が取れたら押す模様は作れるかな」
臨済宗・圓照寺
火伏せ・秋葉大権現
大麻止乃豆乃天神社
この3行をこの順に並べ、周囲を枠で囲んだ紙を見せた。
「素焼きの七輪なので、ちょっと見えにくいかも知れないが、できないことはない。
すでに金程の文字も入っているので、文字だらけの七輪になってしまうぞ」
確かにそうだ。
そう笑いながら、荷梯子に七輪と練炭をくくりつける。
重さは14貫(=52.5kg)で持っていきやすい量だ。
「あと、炭団も30個ばかり載せておいたぞ」
これから主力になるかもしれない製品なので、これは心丈夫だ。
米と梅が大工の彦左衛門の家であずかることになりました。この感想は、また別の場面(65話近辺)で少しだけ出てきます。なお、色恋沙汰は出てこない予定ですので、予めご承知ください。
次回は、大丸村に出かけます。
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