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登戸村への練炭補充と炭団構想 <C259>

2月29日の話になります。

炭屋に練炭を運び値段について確認します。その帰りに新しい炭団について考え始めます。


■安永7年(1778年)2月下旬 登戸村


 翌朝金程村を出て、登戸村の炭屋へ直接向う。

 前回の訪問から3日目のことだった。

 店の入り口の看板を見ると『練炭有ります。普通1個320文』と出ている。

 薄厚練炭は売り切れてしまったようだ。

「こんにちは、金程村の義兵衛です。

 補充の練炭をお持ちしました」

 声を掛けると、小僧ではなく番頭の中田さんが飛び出してきた。

 そして、義兵衛を奥へ引きずりこんだ。


「今日持ってきた練炭をありったけ置いていって欲しい。

 もう練炭が凄いことになっておるのじゃ。

 薄厚練炭は80文と出した日に全部掃けてしもうた。

 普通練炭は最初の日に260文で6個売れた。

 なので、翌日280文にしたが、また4個売れる。

 昨日は300文にしたら、2個売れた。

 なので、今日は320文にして、昼前で1個売れている。

 毎日20文上げていったがこのざまだ。

 残りは3個しかない」

 今の話だと、炭屋の練炭の売り上げは、全部で4880文もなっている。


「委託手数料は、2割ということなので、今回8割の3904文を金程村にお支払いすることになる。

 普通練炭が320文(=8000円)でもまだ売れるということであれば、薄厚練炭は80文(=2000円)では安すぎたようだ。

 今なら、薄厚を100文(=2500円)で出すのが良いと思うのだが、どうかな」

「僕が言うのも何ですが、なぜこんなに高くても売れるのかが解りません。

 どんな人が買っていくのか教えてください」

「うむ、どうやら加登屋で練炭の実演をしているようだが、それを見た青梅のいかだ流しの船頭や漕手が面白がって買っていく。

 それ以外に、近隣の村からやってきた人も買っていく。

 初めてみる顔の人が多い。

 なぜか練炭の評判が先に立っている感じだ」

 これでは、高値でも売れる理由が良く判らない。

 可能性としては、同じようなものを作ろうとして、見本のため高値でも購入している可能性も考えられる。

 とりあえず、持ってきた普通練炭24個と薄厚練炭64個を引き渡した。

 これで委託販売分が全部掃ければ14000文(=35万円)の売り上げになり、村としては11200文(=28万円)の収入になる。


「多分、普通320文、薄厚100文が上限だと思います。

 数日以内にまた運んできますので、看板の値段はこれ以上、上げないようにお願いします。

 ところで、炭団については、本店から何か連絡はありましたか」

「はい、確か炭団の小売値をどうするか、という確認でしたな。

 10個頂き本店に送り、1個20文(=500円)が妥当かということの問合せをしました。

 本店は少し高いのではという感触を返してきました。

 しかし、重さで見ると普通練炭が350匁(=1300g)に対して炭団が22匁(=82g)と丁度16分の1。

 値段も320文に対して20文なら、妥当なのかも知れません。

 もし、お持ちのものがあればこちらで委託販売させてください。

 そうすると、値段がはっきりすると思いますよ。

 数量は、そうですね、薄厚練炭のことを考えると最低でも200個位は欲しいですな」

「今は手持ちがありませんので、次回持ってきましょう」

 そう言って、義兵衛は炭屋を出て、その足で加登屋へ向った。

 七輪が普及していない今の時点では、安価な炭団のほうが、需要があるかも知れない。

 村では練炭と薄厚に注力しているが、炭団も量産したほうがいいだろう。


「今日は、練炭を持ってきておりません。

 しかし、先日お願いした布海苔の買い集めについて、どうなっているのかをお聞きしたく、お訪ねしました」

「はい、ちゃんと買い集めています。

 今、丁度200文(=5000円)分ありますよ」

「それでは、これで頂きたくお願いします。

 あと、これからもよろしくお願いしますよ。

 ところで、今、加登屋さんのところには、どれだけ練炭がありますか」


「糀屋さんの蔵を借りる交渉の時に、手土産として普通練炭2個と薄厚練炭2個を持っていった。

 それから、店で見せるために、普通練炭を5個、薄厚練炭を4個使っている。

 なので、普通練炭が17個、薄厚練炭が58個残っている状況です」

「炭屋さんのところで、普通練炭320文、薄厚練炭100文で売るよう上限を決めてきました。

 もしよければ、この店でも同じ値段で売ってもいいと思います」

 自分の店で使わなければ11240文(=約28万円)相当の総額になる。

「あと、炭屋さんのところで炭団の値段について話をしたのですが、20文で売り出しできる見込みです。

 なので、こちらでも同じ値段の20文で売ってみてください。

 炭団はいくつ残っていますか」

「実は前頂いてから、全然使っていません。

 なので、240個、丸ごと残っていますよ。

 これを1個20文で売ってみるのですか。

 確か、炭団については代金をお支払いしておりませんでしたな。

 炭屋さんが委託料2割なら、こちらへの卸しは小売の9割となりますから、1個18文で、4320文(=約10万円)をお支払いしますよ。

 この売れ具合が楽しみですな」


「ところで七輪2個はどうされますか」

「これまで売り物でない、と言ってきた都合もあるので、練炭複数個との組み合わせで抱き合わせて売ろうと考えています。

 今教えて頂いた炭屋の値段を参考にすると、そうさなぁ。

 七輪1個に、普通練炭6個、薄厚練炭15個を付けて、全部まとめて金1両(=4000文=10万円)で出してみようかと思います」

「それはとてもいい考えです。

 是非、そうしてください。

 では、また数日後には練炭をお持ちしますので、よろしくお願いします」

 結局、義兵衛は8024文(=約20万円)を懐に、200文分の布海苔を背に、登戸村を後にしたのだ。

 何度も売りにきて、この銭に、金額に慣れてしまったが、実際には2両という大金なのだ。


 道々、炭団について考え始める。

 炭団について20文と値を決めたが、まだまだ改善の余地はある。

 直径2寸、厚さ1寸の円柱形状だが、方形にしてみたらどうだろうか。

 持ち運びや保存は円柱に比べ格段に良くなるハズだ。

 円柱の炭団に合わせた大きさで作った道具の中に、脇に隙間はできるがきっちり収まる大きさにすれば良い。

 対角線で2寸の正方形とすれば、重さは今の炭団の22匁から14匁(=53g)ぐらいになる。

 真ん中に紐を通す穴を開け、4隅の下側に凹み・上側に凸部を噛み合うように付ける。

 10個単位で紐でくくればいい。

 下側にくくる紐を留める凹みをつけてもいい。

 縦横の大きさが同じで厚さに変化をつけて、10匁(=38g)で作れないか。

 上側に金程印の刻みを入れるように版木を作るといいだろう。


 小炭団とでもいう名前で、登戸村から江戸方向へ行商に行く棒手振ぼてぶりの人に卸し売って貰うのがいいかも知れない。

 値段は、重さから見て8文(=200円)でどうだろう。

 こういった構想を考えている時が、俺の至福のひと時なのだ。

 早くこの構想を助太郎に伝えたい。

 そう思いながら、金程村に急ぐのだった。


安価な薄厚練炭から売れるというのは、まだ本格的に使われていない証拠なのですよね。

さらに安価な炭団なら、飛ぶように売れる可能性もあると踏んで、妄想が始まりました。

次回は、細山組二人も含め、各自の作業内容を変更する、という話です。

いつものことですが、感想・コメント・アドバイスなど歓迎します。

勿論、ブックマーク・評価は大歓迎です。よろしくお願いします。

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