やっぱり魔鉱石が欲しい
「エラン、やっぱり魔鉱石って必要だと思う!」
いつも通り作業をしていると唐突にミュナがそんなことを言ってきた。
ーーーまだ諦めてなかったのか。
あれから一切その話題を出さなくなっていたのに、心境の変化があったのだろうか。
「だから、言っただろ?高すぎるんだって」
「違う。買うんじゃなくて、探せばいいじゃん」
「探す~?!」
思わず声が裏返った。それを聞いたミュナがけらけらと笑っている。全く、こっちの気も知らないで毎回毎回、面倒くさいこと言い出しやがって!!
「あのなぁ、探すったって……どこを?魔鉱石の採掘場は貴族が管理してるし」
魔鉱石は高い。それは貴重だからだ。幅広く活用できるのに対し、圧倒的に数が少ない。魔鉱石の採掘場は僅かしかなく、その全てを貴族が厳重に管理しているのだ。
「バカ、お貴族様が管理してる採掘場から取ってくるわけないでしょ!最悪の場合、首が飛ぶよ」
「なっ……」
年下のくせにバカ呼ばわりするな!というのと、その幼さで恐ろしいことを言うな!の両方で言葉が出なかった。
絶句する俺の横では、ミュナが視線を斜め上に向けて考え込んでいた。
「ん~……、ヘルーニ近くの森?」
そんな馬鹿な、と思ったが一見本気に見える。 ……いや、訂正しよう。こいつは本気だ。本気であるかも分からない魔鉱石を探すつもりなのだ。
「とりあえず、行動してみなきゃね。意外とあるかもしれないし!やっぱ鉱石といったら洞窟かな?ヘルーニ近くの森って洞窟あったかなー」
「……ちょ、待てって」
「何か見つける方法あるかなぁ。……あっ、魔鉱石が魔鉱石に反応するとか!」
「あのなぁ~!」
「駄目だ、肝心の魔鉱石が無いや」
俺のことなど視界に入っていない様子のミュナに、さすがにカチンときた。
ーーーもう、我慢の限界だ。
思わず俺は大声で叫んだ。
「だから、人の話を聞けーッ!!!」
「きゃー!」
叫びつつ、やや強めにミュナの頭を拳でぐりぐりする。「やめてエラン!いひゃいー!」と涙目で訴えてきてやっと手を止めた。このやり取り何回目だよ、ここ数日の間で二回目だぞ!?
ーーー頭ぐりぐりで多少気が晴れたから、まぁ許してやることにしよう。
「ーーーで、今回はなんでまたそんなことを」
怒りが冷め、俺は努めて冷静に質問した。
「やっぱり魔鉱石が一番良い商品になると思ったんだよー」
「うん、それで?」
ーーー理由はそれだけか?
ミュナの目を見据えると、視線に込められた意味を理解したようだ。表情がすっと引き締まり、俺の目を見て話し始める。どうやら、ちゃんと考えていたらしい。
「さっきのが理由の一つ目。二つ目、ヘルーニの住民は引きこもりだから」
引きこもりーーーそう聞いて、俺は思考を巡らせた。
ヘルーニの住民の中には手仕事を中心にしている人もいるので、他の農村と比べると、家の外に出る人は少ない。そこまで考えて、気付いた。
ミュナが言ってるのはその事ではなく、村の外に出る人がいないということだ。
言われてみると、そうかもしれない。ヘルーニ周辺の森には、村に害をなす魔獣がいない。そうなると、必然的に森へ行く必要がなくなる。魔獣を退治しなくても良いからだ。
「まぁ、ヘルーニの住民は引きこもりだな。もしかして、森に行ったことがある奴なんてほとんどいないんじゃ……」
「その通りなの!子どもだけじゃなくて、大人も森のことを知らないんだよ。これって問題だと思わない?きっと、森には見たことのない食材や素材があるのに!」
ミュナは子どもらしく目を輝かせている。これぐらいの年の子は皆、探検が大好きだ。今のミュナは年相応に見えるのだが、普段は違う。ミュナが楽しそうにしているので、一度森に足を運んでみるのもいいかもしれない。何かしらの発見はあるだろうから。
「せっかくの機会だし、森に行くのもいいかもな」
「ほんと?」
「あぁ。とりあえず下調べしないとな。もし魔獣がいたら対応できないし。……俺は行くとして、イータさん、メリア……」
と、俺が同行する人を考えていると。
「エラン、私も!私も連れてって」
俺の服をつかんで、ミュナが懇願してきた。始めから連れていくつもりだったのですぐに了承する。
「もちろん。提案したの、ミュナだからな」
「やったー!!」
飛び上がって喜ぶミュナを見て、俺も嬉しくなる。そして、同時に苦笑した。
ーーー魔鉱石より、森の探検がメインになってるな……。
相変わらずミュナに振り回されるエラン(笑)。いずれはエランがミュナを振り回す日が来るかもしれませんが……まだまだ先のことになりそうです。
次は、ミュナと一緒に森に行きます。
新キャラ登場です。




