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元・平民の革命   作者: Eiri
平民のエラン
2/14

納税

 俺は父さんと急いで家に戻った。

 俺も一応村長の息子なので仕事の勉強として経験を積んでいるところなのだ。

 もっぱら村長の仕事に興味は持っていないが。


 村長の仕事というのはどこも同じようなもので、今日のように、半年に一度中央区から来る徴税士に村単位で税を納める。

 やって来る徴税士はもちろん平民だ。平民の税は平民が、貴族の税は貴族が集め、最終的には国王様の元へいく。


 貴族の場合は徴税士ではなく徴税官と言うらしい。らしい、というのはこれも商人から聞いた話だからだ。

 商人は平民の中でも貴族と接する機会がある職業柄、手に入りにくい貴族の情報なども持っているのだ。


 他には、村長は村で作られた農作物や手工業品を商人に売ったりする。

 ざっくり言えば、村長というのは村をまとめる代表で時には雑用だってする。そんな仕事だ。

 別に俺じゃなくてもできる仕事だから、他の人でもいいんじゃないか、と内心では思っているがそれを口にしたことは無い。両親と村の皆は、なぜか俺に村長を継いでほしいようだからだ。全く、意味の分からない人達である。


 しばらくして、玄関の呼び鈴が鳴った。入ってきたのは、毎回ヘルーニに徴税に来る顔馴染みの徴税士だ。


  「こんにちはクリストさん」

  「こんにちは、エラン君。少し背が伸びたみたいだね」


 優しく目を細めて、クリストは俺の深緑の髪をくしゃっと撫でる。この髪色は母さん譲りだ。灰色の瞳は父さん譲りで、俺は髪色も瞳の色も結構気に入っていた。


 クリストはまだ二十三歳くらいで若いが、徴税士という大変な仕事をこなしている。徴税士の中でかなり若い部類に入るんじゃないだろうか。……仕事が大変なせいか、たまに、本当に稀にだが、とても老けているように見える。

 もちろんこの事を本人に言ったことは無い。言ってしまったら最後、クリストさんは心に深い傷を負ってしまうだろう。そんなことにはなってほしくない。ーーーだから言わない。


  「ん?どうしたのエラン君、僕の顔を凝視して」

  「い、いや、別に」


 思わず顔面を凝視してしまっていたようだ。危ない危ない。


  「はい、エラン。半年分の税だ」


 俺が取り繕った笑みを浮かべていると、父さんが麻袋を渡してきた。自分の手で納税しろ、ということだろう。


  「クリストさん。これが半年分のヘルーニの税です」

  「うん、ありがとう。確かに徴税しました」


 受け取った麻袋を丈夫な鍵がついた木箱にしまった。鍵の部分に魔鉱石が使われているので、おそらく魔術具の一種だろうと推測する。

 魔鉱石というのは、魔力使用効率を上げ、魔術を補助する、平民にはあまり縁の無い石のことだ。魔力を持って生まれてくるのは、ほとんどが貴族だからだ。

 おそらく、この木箱にも貴族が関わっているだろう。


  「それにしてもクリストさん。どうして急に、大幅に納税額が上がったんでしょうね。ウチはゆとりがあったからいいものの、周りの村ではかなり問題になったようですが」


 父さんの話に俺は我に返った。今は魔鉱石について考えている場合ではない。

 特に、農村にとって納税額の変動は重大なことなのだから。


 農村の収入は農作物のできに左右されるので、増税ともなれば長期にわたり準備をし、対策を考える必要がある。


 ヘルーニは農業だけでなく、比較的収入が安定している手工業も盛んなので、急な増税にも対応できたが他の農村ではそうはいかないだろう。


 クリストは眉を下げた。


  「それが、増税に関する情報が全く無いんだよ。税務署の方も僕らもお手上げだ。毎日のように問い合わせの文書が山ほど届くんだから。なのに、こっちには返答するための情報が無い。だから、余計に国民の不満が高まる」


 つまり。誰も真実を知らないのだ。

 直接徴税に関わるクリストが知らないということは、平民には一切知らされていないと考えていいだろう。


  ……いや、貴族なら、あるいは。


  だが、急な増税には意味があるに違いないが、俺らが知っている必要は無いのかもしれない。

 なら、追求するのはやめよう。

 現国王は国民に優しく、とても良い人だからそう心配することはない。


  「多分大丈夫ですよ。国王様の信頼は厚いですから。国民が不満を持ってもすぐ消えます」

  「……だよね。国王様は良いお人だから、僕らにとって不利益になるようなことをするはずがない」


  そう言うと、クリストは玄関の取っ手に手をかけた。

 その顔は先程より幾分か明るいように見えた。


  「じゃあ、また。次は半年後かな」

  「はい。さようなら、クリストさん。七精霊の御加護がありますように」

  「ありがとうございました、クリストさん」


  俺が別れの挨拶を言い、父さんと共に頭を下げると、クリストは手を振って帰っていった。


  無事に納税を終えることができて良かった。ホッと一息ついて、ふと思い出す。


  ーーーミュナのこと、すっかり忘れてた。


  慌てて工房へ戻ると、ミュナに「いくらなんでも遅すぎー!」と怒られた。


  そして今後より一層、ミュナは俺の工房に通い詰めるようになった。





やっと二話目です。まだまだ革命は起きませんね……。

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