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元・平民の革命   作者: Eiri
平民のエラン
11/14

キオとジルス 前編

 まだ長になってカラ十数年しかたっていない頃、いつものように森に採集に行くト、二十歳ぐらいの若い男が木のそばで倒れているのを見つけタ。


  「……オイ、お前。大丈夫カ?」


 声をかけたが、反応がナイ。森の獣にでも襲われたのだろうカと思いよく見れバ、腹部に獣の咬み跡があリ、出血していタ。


  「この程度の傷で意識を失うなんテ……人間はひ弱ダナ」


 この森で人に危害を加える獣はネヴェラぐらいしかいないカラ、おそらくネヴェラの仕業(しわざ)だろウ。


  ーーーまだ明るいのニ、ネヴェラにしては早い活動だナ。


 そう疑問に思ったガ、とりあえず目の前の男を村へ連れ帰るべく、オレは自分より大きい男を背負い転移魔術を使っタ。





  「キオ様、その者は一体どうされたのですカ?!」


 転移魔術でいきなり家の中に現れたオレを見テ、長の補佐役のロウが慌てて駆け寄ってキタ。


  「ロウ、そんなに急いだらマタ……」


 転ぶゾ、という前ニ、ロウはオレの目の前で派手に転んダ。相変わらずロウはいつもそそっかしイ。この間なんカ、何もないところで大量の本を持った状態で転んだのダ。慌てずもう少し落ち着いて行動すれば良いと思ウ。


  「ロウ、大丈夫カ?」

  「キオ様、すぐに治療を始めましょウ。キオ様はまず着替えてくださイ」


 ロウは転んだことなど全く気にも止めない様子ですぐに起き上がり、オレの代わりに男を背負っタ。


  ーーーあんなに重かったのニ、軽々ト……。


 オレは軽いショックを受けタ。年はあまり離れているようには見えないガ、まだ四十歳で成長途中の少年であるオレト、一族の中でも長生きな部類に入る九百七十二歳のロウとでは体格も腕力も違うのだカラ仕方ないのかもしれなイ。


 謎の敗北感を味わいながラ、手早く外着から部屋着に着替えてロウの元へ向かっタ。


 ロウによリ、男は寝室のベッドに寝かされていタ。その横では既にロウが待機していテ、「さぁさぁキオ様。せっかくですので連立詠唱を行いましょウ」と柔らかい笑顔で言っタ。


  「オレ一人でもロウ一人でもできるものをどうしてわざわざ」

  「そんなのもちろン、若くして長になられたキオ様にいろいろな経験を積んでもらうためですヨ」


 当たり前のようにそう言わレ、なおかつ正論デ、オレは反論できなかっタ。


 ロウは代々長の補佐をしてきた家系の出デ、先代の長ーーーオレの父サンーーーの補佐も務めていたのダ。幼い頃に母親が病で亡くなリ、同じように若くして亡くなった父親の代わりにオレを育ててくれたのがロウダ。長としての知識やオレに足りないものを補ってくレ、できる限りのことを教えてくれるのはありがたイ。しかシ、だからなのだろうカ。ロウはスパルタ教育者なのダ。


 さっきロウが口にした連立詠唱は難易度が高い方法の一つデ、二人の術者が同時に魔術詠唱を行うのダガ、術者同士のタイミングが合わなければ成功せず些細なズレで失敗してしまウ。


 ダガ、難しい分効果は大きいイ。互いの魔力が放出され空中で衝突する際に力が増シ、相乗効果が生まれるのダ。熟練の術者は当たり前のように習得している方法、できるに越したことはなイ。


 オレが両手を男の方へかざすト、ロウも同じように手をかざス。基本魔力は手から放出するからダ。魔力の存在を強く意識しながらロウと同時に唱えル。


  「「シュピール」」


 緑の一族は緑の精霊の加護を持ツ。緑の精霊が司る緑属性の魔法は生物成長。「シュピール」は緑属性の下位回復魔術デ、生物の回復を促す術ダ。回復術は他の属性にもあるが回復に特化しているのは光属性なのデ、どうしても他属性の回復魔術は劣ってしまウ。


 オレの発する魔力とロウが発する魔力が空中で一度触れ合イーーー眩しく瞬き光を増して男の体へ降り注いダ。


  「案外簡単なんだナ」

  「キオ様、油断なさらないようお気を付けくださイ。簡単だと感じるのは私とキオ様は長い間共に過ごし信頼関係が築かれているからですヨ。初めて出会った人とも一定水準はこなせるようにしなけれバ。どれだけ波長が合うかで効果にも差が生じるのでス」


 気を抜いた途端にロウから叱責が飛ぶ。確かに初めて会った人と息を合わせるのは大変かもしれないガ、今必要なことではないのでとりあえず魔術に集中しタ。


 出血していた男の腹部の傷がみるみる塞がリ、他の切り傷などは跡形もなく消えタ。


 思いの外軽傷だったようで傷の治りが早ク、安心しタ。ホッと息を吐くト、ロウも表情を緩めゆっくりと両手を降ろしタ。もうこれ以上は大丈夫ということだろウ、ロウの手の平から流れていた魔力が止まっタ。


「このくらいで充分でしょウ、もう少しすれば目を覚ますと思いますヨ。そろそろ食事にしましょうカ。もう日が暮れていますからネ」

「エッ、まだ早くないカ?」


 そうオレは言イ、窓に視線を向けて少し驚ク。森で男を拾った時は真昼をだいぶ過ぎた頃デ、家に転移してからそう時間はたっていないハズ、だと思っていたのダ。どうやら連立詠唱に集中している間にかなり時間がたっていたようダ。


 連立詠唱は上手くいけばいくほど効果が大きくなル。つまリ、自分が発する魔力よりはるかに大きい効果を得られるのダ。しかしそれは同時に悪いことでもアル。魔力調整に気を付けないと予想以上の効果が生じ逆に悪い結果を招くことにつながるのダ。ダカラ、オレは魔力を抑えて慎重に行っタ。その結果時間がかかってしまったのだろウ。まだ魔力調整に慣れていないようダ。


「ロウ、魔力調整はどうしたらできル?」

「そんなもノ、感覚ですヨ、感覚」 

「……ハ?」

「言葉で表せるようなものではないですシ、人によって違いますカラ。私の調整をお教えしてもキオ様の役には立たないと思いますヨ?」

「そんなこと言われてモ……じゃあどうすればいいんダ?!」

「経験を積んでくださイ。それに限りまス」


 ーーー困っタ。相変わらずのスパルタっぷりダ。


 アドバイスをくれたっていいじゃないカと抗議の目をロウに向けるト、ロウは意味あり気に笑みを浮かべて調理場へ行ってしまっタ。


「全ク……。早くできるようにならないとナ」


 ため息をつキ、オレはベッドの横にあった椅子に腰かけて男の顔をぼんやりと眺めル。


 なかなかに整った顔立ちダ。肌はオレ達とは違い色白デ、綺麗な線を描く眉、すっと通る鼻。


 傷が痛み苦しげだった表情も力が抜け和らいでいテ、何より規則正しい呼吸音が彼の状態が良くなっていることを物語っていタ。


 ーーー食事までに目を覚ますだろうカ。


 顔色も悪くないし今日中には目を覚ますだろウ、そう思いオレが調理場の方へ目を向けた時。


「………ん」


 背後で男がゆっくりと身を起こしていタ。




 初の前後編です。


 予想以上にジルスがイケメンになりました(笑)


 意外と神経が図太いキオは冷静です。


 次は後編です。

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