ヘルーニの村
広い世界を、俺は見た。
本当なら目にできないようなことも、気にしなくていいようなことも。
だとしても、誰かに問われたらこう答える。
それは決して無駄なことではなかったと。
少なくとも俺は、何かを守れた気がしているから。
俺は小さな村の、村長の一人息子として生まれた。名前はエラン。
お貴族様と違い平民の俺に姓名は無い。
むしろ短くて助かるとすら思っている。お貴族様は無駄に名前が長ったらしいから。
……まぁそれも、村にやって来る商人から聞いた話だけど。
俺の住む小さな村はリンデルハルト王国の郊外にあり、ヘルーニという。周囲の村と比較しても小さく、人口およそ千人。
しかし、農業と手工業が盛んなため、毎日のように国の中央区から商人が来るので活気で溢れている。
まだ15歳の俺は、他の子供と同じように手仕事に明け暮れる毎日を送っていた。
ちなみに俺の得意分野は細工と加工で、手先の器用さには自信がある。今日はガラス細工を作っていた。俺のガラス細工は評判がいいのだ。
「エラン~!一緒に遊ぼうよー」
「無理」
「無理じゃないでしょ!やればできるから」
「じゃ、やりたくない」
「えぇ~」
集中して作業しているところに、またコイツが現れた。暇があれば毎日のように俺の工房へ乱入してくる、ご近所さんの七歳少女ミュナ。
「ねーねー、どうせ暇でしょ?」
俺が座っている椅子の背に後ろからもたれかかり、ミュナがしつこく付きまとう。
「これのどこが暇に見える?」
手は止めずに言う。
一体これのどこが暇に見えるっていうんだ。お前の目は節穴か。
「私から見たらスローペースだもん。急いでないよね?どうせ納品まで二週間ぐらいあるんでしょ」
……驚いた。完全に図星だった。毎日工房に通ってくるだけのことはある。
振り返ってみれば、ミュナはしてやったり顔をしていた。
ーーーなんだそのムカつく顔は。
仕方なく俺は横を指差して、
「分かった。そこ使っていいから。素材は向こうから取ってきて」
「やったー!ありがとうエラン神!」
「おだてても何もあげないからな?」
「分かってるよーだ」
スキップをしながらご機嫌にミュナは素材を取りに行った。
ミュナにとって俺と遊ぶということは、一緒に作業をすることなのだ。
素材と道具さえ与えておけば静かなので、そこらの子どもよりよほど扱いやすい点では助かっている。
ミュナが俺の横で作業を始めてそう経たないうちに、父さんが俺を呼びに来た。
理由はわざわざ尋ねなくても分かる。今日は半年に一度の納税の日なのだ。もうすぐ徴税士が来るのだろう。
「悪い、ミュナ。徴税士が来るからいったん戻るな」
「はぁい、お利口にしてまーす。勝手に漁ったりしません」
「頼むからな!作りかけの商品壊すなよ」
そう言い残し、俺は父さんと工房を後にした。
ついに初投稿です。
楽しいお話を書けるように頑張ります!
最後までお付き合いいただけたら幸いです。




