ゴンとタクヤと私
すみません。ゆっくり進めることになってしまいます。申し訳ありません。
真夜中に私は音を聞いた。ドアの開く音だ。そして、たんたんたんと軽快な音がする。私は、寝ぼけていた。これはタクヤの足音だ。あ、夜遅くにやっと帰ってきたんだ。私はそう思った。
「おかえり」
そう言ってから、はたと現実が私を目覚めへと誘う。タクヤは、死んだのだ。死んだタクヤを想って私は毎日嘆いていたのではないだろうか。
しかし、はっきり聞こえたのだ。タクヤの足音が。幽霊?幽霊でも、いい。もしタクヤに会えるのなら。私はベッドから飛び起きた。
階下に向かう。しかし、ドアは固く閉ざされている。鍵もかかっているし、何より、内側からチェーンもかけられている。外から開けられた形跡も中から開けられた形跡もない。では一体誰が。
私は再び家を彷徨う。タクヤを探して。
この家は元々、タクヤの家だ。家がタクヤを夢見たのだろうか。私は週末には、ここに泊まりこむ。親も私がもう何をしようとも気にしてはいない。出来のいい兄の大学進学で頭がいっぱいなのだ。
タクヤに会いたい。そう想う。会いたいよタクヤ、会いたいよ。
「タクヤ!」
私は声を出す。すると、返事が返ってきた。
「夜に大声出さないでよ!」
私は驚いて、声がした方を見る。しかし、そこにはゴンがいるだけだった。まさかね。
「もう、メソメソすんなよ。お前がメソメソするから、タクヤは、向こうにいけないんじゃないか。」
「え、ど、どういうこと?ゴン、私、気がおかしくなっちゃったのかな?」
「いや、違うよ。今日は満月だろ。満月の時だけ、僕らは、波長が合う人間とは、話せるんだよ、まあ、もとろん、話したければだけど。」
「なんで今まで話してくれなかったの?」
「それは、」「それは僕から話そう。」
急に、ゴンが立ち上がって、鼻の頭をかいた。これはタクヤの癖だ。
「マリがずっと泣いているから慰めたくて、ゴンにお願いしたのさ。慰めさせて欲しいってね。」
私はあまりにびっくりして固まってしまった。ついに気がおかしくなってしまったのかしら。それが私が気絶する前に考えたことだった。
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