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厳戒態勢

俺がテレビに視線を戻した瞬間、先月日本で起きた南海トラフ地震で発生した津波によって住宅が流される映像から画面がいきなりスタジオに戻った。しかも写っているアナウンサーの顔がものすごく緊張している。アナウンサーは意を決したように顔を上げると緊張した声で話し始めた。

「今朝、中国当局は南沙諸島にて航行の自由作戦を実施していたアーレイバーク級駆逐艦に4発にも及ぶ対艦ミサイルを撃ち込みこれを撃沈しました」

その時俺、マイケル、ジェリー、4人の海兵隊員……つまり妻とチャットしていたベン以外全員が同じ言葉を発した。

「Holy shit!!(クソ、なんてこった!)」

緊張した顔のアナウンサーは続ける。

「続けて撃沈されたアーレイバーク級駆逐艦ともに航行していたズムウォルト級駆逐艦が報復として6発のミサイルを中国艦に向け発射。これを撃沈しました」

ベンもやっと事態を把握した頃には全員の顔が蒼白になり言葉も出ないでいた。

しばらくそのことを繰り返し報道していたアナウンサーはその度に新しい情報を持ち込んできた。撃沈されたアーレイバーク級駆逐艦の艦名は「フィッツジェラルド」。横須賀基地に配備されていた艦艇だった。

テレビに釘付けになっていた我々を現実に引き戻す出来事が起きた。卓上の電話がけたたましく鳴ったのだ。すぐに海兵隊員の1人が電話に出ると彼は我々に向かって叫んだ。

「QRF出動!ソレットコンDデルタ!繰り返す!ソレットコンDデルタ!」

反射的に我々は間近にある武器庫へと走り出した。ソレットコンとは「Threat Condition 」の略で、アメリカ合衆国が攻撃される危険性を表している。低い方からNormal、Alpha、Bravo、Charlie、Deltaとなる。今回はDelta、つまりアメリカが攻撃されているということである。先頭を走っていた私が鉄製の扉を開けて1番最初に武器庫へとなだれ込んだ。迷わずダニエル・ディフェンス社製のセミオート(半自動的)スナイパーライフルDD5V1を持ち出して続いて最新式のM9A4拳銃をホルスターにしまう。

武器庫から出た俺は次にバラクラバという目以外の頭部覆う特殊なマスクを被る。これは俺を含めて特殊部隊員全員が戦闘時同軍人以外人のの前に出るときに被るものであり、特殊部隊員は通常その素顔を決して明かさない。次に俺はヘッドセットを装着する。これは左耳にヘッドフォン、そのから口にはマイクが、左目にはHMD(Head Mount Display:頭部装着型ディスプレイ)が来るもので、このHMDに戦闘に必要な情報が映される。その上から特殊作戦用ヘルメットであるFASTヘルメットを被った俺はDD5V1のチャージングハンドルを引いて初弾をチャンバーに送った。そして素早くボディーアーマーを装着した俺は部下とともに正門すぐ横の建物の屋上に上がった。屋上に上がりながら俺は今朝のブリーフィングを思い出していた。少佐は第二次世界大戦時のナチス・ドイツによるソ連への突然の侵攻を例にとって説明していた。

屋上に上がった俺たちは一目散に正門側へと走って各自狙撃の準備にかかる。俺はストックを立ててそれを壁の内側に当ててそれを左手で固定し銃の前後の動きがないようにしてスコープを覗いた。

突然両耳のヘッドフォンから少佐の声がした。

「いいか、お前ら!中国がアジアで暴れ始めた今ここは対中の最前線だ!この基地はこれより厳戒態勢に移る。しっかり頼むぞ。」

厳戒態勢…要するに怪しい奴がいたら即射殺である。見るとすでに銃座に.50キャリバー(直径12.7㎜)を発射するM806重機関銃(以下.50キャリバー重機関銃)をマウント(搭載)したL-ATV(軽装甲機動車)が2両ゲートの前に駐車した。ここで怪しい奴が出ると.50キャリバー2丁と優秀な狙撃手4名が一斉にそいつを狙うことになる。何者であろうともここからは逃げられない。

MPがゲートを封鎖し、完全武装の海兵隊員がフェンスの内側をうろつき始めた。耳まですっぽり覆うヘルメットをつけてFN社製のSCAR-L小銃を持った屈強な男がHMD越しにこちらに鋭い目を向けながら巡回していたら誰だって近づきたくないだろう。私たちを含めて全員がというか基地全体が殺気立っていた。ここにいるほとんどが実戦未経験者なのである。リーコン・マリーンになる最終審査は実戦なのでフォース・リーコン隊員は全員が実戦経験者である。私も中東のISISを殲滅するイラク軍による最後の決戦において初の実戦を経験した。

……しかしこれからそれをはるかに超える戦いが始まることは目に見えていた。


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