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俺はついにリーコン・マリーンになったんだ!

俺は将来なにになりたいか、そう聞かれた時に中2からの私はアメリカ海兵隊員と答えるようになっていた。理由は簡単、世界最強のアメリカ軍に入りたかったからである。そのことを相談した先生には「お前は枠からはみ出ているのが好きなのか…」と分析されたのを今でも覚えている。


2028年 アメリカ海兵隊 キャンプ・ペンドルトン

あたりは真っ白……のはずだ。あたりに充満する白い催涙ガスが容赦なく俺の喉、鼻を刺してくる。もちろん目なんか開けられない。涙が止まらない。ヒリヒリという痛みを超えた今までに味わったことのない痛みだ。ただ聞こえるのは仲間の悲痛な叫びとと荒い息、そして容器から催涙ガスが勢いよくでるシューという音だけだ。そんな中でもタクティカル・インストラクター(教官)の怒鳴り声が聞こえてくる。

「どーした!目を開けろ!歩くんだ!」

肩に背負っている90キロもあるクソッタレの人形が容赦なく体力を奪っていく。

「ウァァァァ!」

自分でもよくわからない声をあげて俺は再び立ち上がった。あと少し……あと少しで俺はフォース・リーコンに入れる。そのために今日まで12週間の地獄の訓練に耐えてきたんだ。

フォース・リーコン……それは海兵隊の作戦予定地域にどの部隊よりも早く潜入し情報を集める特殊部隊でこの隊員となると精鋭を誇る海兵隊の中でも「Recon marine (リーコン・マリーン)」と呼ばれエリートとして扱われる。しかしそれになるための訓練がハンパじゃない。その辛さは世界最強の特殊部隊として名高いアメリカ海軍の「Navy SEALs」と並ぶほどであるという。今まで日本人で海兵隊員、ましてやアメリカ軍の特殊部隊員になった人は私の知る限り1人しかいない。

俺が2番目になるんだ!絶対に!……その心だけで私は今までこのクソッタレの訓練を乗り越えてきたんだ!あとたった2マイル!こんなところでへこたれてたまるかッ!

私は素早く息を整えて再び白い地獄へと身を乗り出していった……



それから2年後の2030年、私は兼ねてからの希望であったスカウト・スナイパー(偵察狙撃兵)のものを含めてすべての訓練を終えリーコン・スクールを卒業した。私の胸に潜水員の背景にに落下傘が描かれた徽章をつけながらタクティカル・インストラクターのマクリー少佐は言った。

「You did a great job Koyama, you are recon marine now.(よくやった小山。お前はもうフォース・リーコン隊員だ)」

そう言って見せた笑顔は衝撃的だった。今まで私たちを砂まみれにし、血が出るほど懸垂をやらせ私たちを半殺しにしてきたマクリー少佐が笑顔をみせた……俺の人生の中でこれほど嬉しいことはなかった。俺はついになったんだ!リーコン・マリーンになったんだ!

そう考えると余計に嬉しくなり、危うく涙が出てきそうだった。勇猛果敢なフォース・リーコン隊員はやはり酒好きが多い。卒業式が終わった夜には親が日本から持ってきてくれた日本酒も含めてみんなで飲み騒いだ。ちなみに言うと俺はこの後学生時代からの付き合いである彼女と結婚し子供もできていたのだ。いよいよ本物の理想を実現してしまった。



それから1年後の2031年5月3日、私は日本にいた。場所は沖縄県のキャンプ・コートニー。その日も俺はいつものように朝のPT(Physical Training:基礎体力訓練)を済ませ、基地のQRF(Quick Reaction Force:緊急即応部隊)として小隊の部下のジェリー・バーンハート1等軍曹、マイケル・フォスター1等軍曹、そしてベン・ピーターソン2等軍曹と海兵隊員4人とともに基地の武器庫において点検と警備に当たっていた。朝の8時にフォース・リーコン第3小隊の仲間と後退してから夕方の後退時間までやることが全くない。

朝のニュース番組を見ていた俺はテーブルの上に置いてあった円柱の容器の中からチューインガムを2個取り出して口の中に入れた。パソコンで妻とチャットしているベンをチラリと見て視線をテレビに戻した……


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