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母の思い

夕飯の支度を終えた頃に父さんと母さんが戻ってきた。

「おっ、今日はやけに豪勢だな」

父さんがニコニコしながら言うなか、母さんが怪訝そうな顔をする。

「そりゃあ、夏実の完治祝いも兼ねてるから…」

慶太が言うと。

「そんなの何回もやってるでしょうが…」

母さんが、冷たい声で言う。

やっぱり、母さんは私の事を…。

「母さん。そんな風に言わないで。夏実だって、好きで怪我したんじゃないし…」

慶太が庇ってくれる。

「そうやって、夏実を庇ってどうするの」

そう言って、母さんはダイニングを出ていった。

母さん…。

私、母さんに嫌われてるんだ。

「夏実。気にしなくて良い。母さん、虫の居所が悪かっただけだから」

父さんが、笑顔で言ってくれるが、怪我する度に母さんの機嫌が悪くなってるような気がする。

「夏実。冷める前に食べるぞ」

慶太が、私の頭を軽く叩いて大丈夫だって顔をする。

「……うん」

私は、自分の席につくと夕飯を食べた。



夕食後。

たまたま両親の部屋を通った。

そこから、漏れ聞こえてきたのは…。

「夏実は、何時になったら落ち着くことが出来るのかしら…。もしかして、私の育てかたが間違いだったのか…」

って、母さんの声だった。

やっぱり…。

私、母さんに嫌われてるんだなぁ。

私はそっと自分の部屋に戻った。


母さんにとっては、慶太が一番大切なんだ。

私は、要らない存在だったんだな。

何時か、母さんが自分の事を認めてくれると思ってた。

慶太と比較されながらも、自分は自分なんだと言い聞かせてきた。

でも、あんなこと聞いたら、自分はダメな子だって思い知らされる。

居ない方がいいんじゃないかって…。


コンコン。

不意にドアがノックされた。

「…はい」

私は、明るい声で返事をする。

「夏実。入るぞ」

部屋に入ってきたのは父さんだった。

「どうしたの?」

笑顔を張り付けて、父さんに聞く。

「お前が、哀しそうな顔をしてたからな、気になってな」

父さんはそう言うと私の隣に座る。

「お前は、何時も人の事ばかり気にかけてるから、直ぐに顔に出る」

気付いて…いたんだ。

「父さんに話せる範囲で良いから、話してごらん」

父さんが、優しく諭すように言う。

「……母さんは、私の事…嫌いなの…かな」

私は、呟くように言った。

すると。

「そんなことない。母さんは、一番夏実の事を心配してるんだ」

父さんは、私の頭を撫でる。

「…でも、私、母さんに避けられてるきがするの…。慶太とも比較されてるの知ってる。…私は私なのに……」

耐えていた涙が溢れ出す。

頬を伝って、私の手の甲にポタリと落ちる。

そんな私を父さんが抱き寄せた。

「母さんな、夏実にどう接したら良いかわからないんだよ。夏実が怪我して帰ってきた時って、何時も父さんと慶太が最初に心配して駆け寄るから、母さんは素直に表現できずに思ってることと反対の事を言っちゃうんだよ。本当は、誰よりもお前の事が心配で仕方ないのに…」

父さんは、そこで言葉を区切った。

母さんが……。

そんなことあるわけない。

「高校だって、夏実の成績なら慶太と同じ高校に行けるって、安心してたのに夏実が突然今の学校を選んだ時だって、何で同じ学校に行ってくれないのかって、ずっと悩んでたんだぞ。夏実が、慶太に劣ってることって、何もないだろう?慶太と一緒の学校に行ってくれたら、安心して夏実を送り出せたのに…。って未だにそう言ってるんだぞ」

父さんが、母さんの代わりに思いを伝えてくれる。

母さんは、慶太と私を比較してたんじゃないの?

今の父さんの話だと、慶太と私の成績を比較してたんじゃなくて、同じ学校に行って欲しくて、比較してたの?

心配だったってこと?

「夏実は、誰から見てもほっとけない女の子になってる。慶太が一緒なら悪い虫もつかないって、母さんは思ってたんだ。それを反発するように違う学校にいくから、心配で仕方ないんだよ」

そうだったんだ…。

私、母さんの思いと正反対の事しかしてないんだ。

「夏実は、好きな男の子とか、気になる子って居ないのか?」

父さんが突然聞いてきた。

「そんなの居ないよ。慶太よりカッコいいって思う人何て居ないもん」

私が言い切ると。

「そっか…。夏実にとって慶太が一番なのか」

そう言って、溜め息を吐く父さん。

「慶太よりカッコいい男の子近くに居るんじゃないのか?」

父さんの言葉に。

「う~ん。私にはそんな存在は居ない」

考えながらそう答えた。

「そっか。夏実にはまだ先になるのかな」

父さんが髪の毛をグチャグッチャに掻き混ぜる。

「まぁ、お風呂に入いってグッスリ寝なよ」

父さんはそれだけ言って、部屋を出ていった。


私は、お風呂の準備をして部屋を出た。


「夏実。まさか泣いてたのか?」

階段に差し掛かった時に慶太が駆け上がってきて、私の頬に手を伸ばしてきた。

「う…うん。もう大丈夫だから…。心配させてごめん」

「ならいい。何かあったら言えよ」

慶太が笑顔で言う。

「うん。ありがとう」

私は慶太にお礼を言って、お風呂場に向かった。



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