呼び出しされました
翌日の朝。
身支度を整えて、家を出る。
今日もいい天気。
何て、のんきに空を見上げてた。
「夏実、無理したらイカン。慶太、送っててやりなさい」
そこにお父さんの声が飛んできた。
「だって。どうする?」
慶太が、私を見る。
慶太は、何時も私を最優先にする。
「じゃあ、途中までお願いしようかな。慶太も私の性で遅刻したりしたらやだし」
私がそう言うと。
「わかりました。お姫様。荷台で申し訳ありませんが、お座りください」
って、茶目っ気タップリな顔で言う。
「何それ…」
吹き出してしまった、私。
「あなた達、早くしないと遅れるわよ」
お母さんの声。
いえの中まで、聞こえてたの。
「やべー。夏実、乗ったか?」
「うん」
「飛ばすから、しっかり捕まっておけよ」
私は、慶太の腹に腕を回した。
何だかんだ言って、慶太は学校まで送ってくれた。
「ありがとう、慶太」
私は、素直にお礼を言う。
「おう。帰りも迎えに来るから、大人しく待ってろよ」
慶太は、私の頭を軽くポンって叩くと、自分の学校に向かって、漕ぎ出した。
遠回りして、遅刻しなきゃいいけど……。
そんな私達のやり取りを遠巻きで見ていく生徒達。
私、何かした?
私は、そんな事を考えながら、足を軽く引き摺るように教室に向かった。
「夏実、おはよう」
教室に入ると幸子が、何か聞きたそうな顔をして声をかけてきた。
「おはよう、幸子」
私は、気付かない振りをして何時ものように返した。
「ねぇ、さっき送ってくれた彼って、夏実の彼氏?」
幸子が、小声で聞いてきた。
首を傾げ彼って、慶太の事?
周りも興味有るのか耳をダンボにしてるし…。
まぁ、言っても支障無いし…。
変な噂たてられても困る。
「彼氏じゃないよ。双子の兄だよ」
私は、否定した。
余り似てないけどね。
「双子!夏実って、双子だったの?」
幸子が驚きの声をあげる。
「うん。慶太と私は双子の兄妹なの。慶太の方が先に生まれてきたからお兄ちゃん。二卵性だし、そんなに似てないかもしれないけど、じっくり見ると似てるところあるよ。まぁ、性格は正反対だけどね」
私は、苦笑を洩らしながら、幸子の質問に答えた。
「…そうなんだ。だから、夏実は他の男子に興味が湧かないんだんだ」
幸子が一人納得する。
「何が?」
何の事かわからず、幸子に聞く。
「気にしないで。でも、夏実が知らないところで変な噂をたてられてるよ」
幸子が、顔を歪めて言う。
噂?
何それ?
「夏実が、二股かけてるって…」
幸子の言葉に驚きが、隠せない。
二股って…。
何で?
何処から、そんな言葉が出てきた?
二股の一人は、慶太だとしてもう一人は誰?
「幸子は、知ってるよね。私に好きな人が居ないこと。二股のもう一人って誰になってるの?」
私は、思ったことを口にした。
「それが、隣のクラスの大谷蓮くんだって…」
幸子が、そう口にした。
複雑な表情の幸子に気付かずに…。
蓮くん?
何で彼が?
彼とは、二言三言交わしただけなのに…。
それだけで、疑われるってなんなの?
考えに没頭してたら。
「結城さん。昼放課に屋上に来てもらえるかしら」
クラスの一人が私に声をかけてきた。
何やら雲行きが怪しい。
まぁ、断っても直ぐ次が来るか罵られるかどっちかだろうなぁ。
「わかりました」
私の返事を聞いて、満足したのか自分の席に戻っていった。