買い物で、遭遇
本日二話目です。
前の話からお読みください。
冷蔵庫を開けて、中を見たが残り物しかない。
買い物に行けてないからなぁ。
どうしようか……。
「どうしたんだ、夏実?」
背後から声がして、振り返ったらお父さんが居た。
「晩御飯を作ろうとしたら、残り物しかなくて……」
「ん?それでいいぞ」
私の言葉にお父さんは、別に構わないがって顔をする。
「慶太の友達も食べていくって言うから…」
あえて、慶太の友達だと言ってはみたものの、なんだか隠し事してるみたいで、罪悪感が芽生えてくる。
「それは、ちょっと困るな。よし、お父さんと買いに行くか」
と鶴の一声。
でも。
「診察は?」
私が聞けば。
「今日は、午後休診日だぞ」
と返された。
あ、そうか。ならば。
「車出してくれる?」
おねだりしてみる。
「ん?いいけど、何を買うんだ?」
お父さんの疑問に。
「重い物?」
って、疑問で返してみたら、察しがついたらしく。
「わかった」
お父さんが、快く車を出してくれた。
実は、調味料類がもうすぐ切れそうだったのだ。
油とか、醤油やみりんに料理酒も、後お米。
慶太が、沢山食べるからすぐになくなっちゃうんだ。
普段は、私が自転車でえっちらおっちらと運ぶからに往復が当たり前。慶太は、部活があるから一緒に行くことはまず無い。
で、後は冷凍が利く魚介類と肉類。それと野菜や練り物を少々。
うーん。後は何かいるっけ?
「夏実。どれだけ買うんだ?」
お父さんが、カートを押しながら呆れた顔で私を見てくる。
カートを見れば、一台丸々物で溢れていた。
あはは、ちょっと買いすぎ?
でも、仕方ないよね。必要な物だし。
何て苦笑を浮かべながら。
「後ね。お弁当箱を1つ」
そう告げれば。
「弁当箱って、夏実のはあるだろ?」
怪訝な顔をして言うお父さんに。
「私が使うんじゃなくて、ある男の子に作ることになたらから…」
本の些細なことだったんだけど、そうなったからには専用のお弁当箱があった方がいいかなって、思ったんだ。
「そうか。なら、お父さんはここに居るから、見ておいで」
お父さんに笑顔で見送られながら、お弁当箱が置いてあるコーナーへ足を向けた。
うーん。蓮くん一杯食べるだろうから、大きい方がいいよね。
……。
何度も見て回り、これだと思ったのは、シンプルな濃紺の大きめなお弁当箱。
私は、それを手にしてお父さんのところに戻った。
「見つかったか?」
お父さんの言葉に満面の笑みを浮かべて。
「うん」
って答えた。
「よし、じゃあ並ぶぞ」
お父さんが、カートを押してその後を着いていく私。
「あれ?結城さん」
声をかけられて、振り返ったが私は小首を傾げる。
どちら様?
私が首を傾げたのを見て。
「えっ、覚えてない?って、仕方ないのか…。慶太の奴が、俺を排除してたし……」
って遠い目をして言う。
慶太の事を知ってるなら、同級生か上級生だろう。
だけど、私には全然心当たり無いのだが……。
丸顔に茶髪、目はつり上がっていて、鼻は高めで唇は薄め。人懐っこそうな笑顔を向けてくる。
何処かで見た覚えはあるんだけど……。
「…もしかして、新見くん」
お父さんがそう言った。
新見……。
あっ。
「やっと思い出してくれたか」
彼が、ホッとしたような顔をする。
新見くんは、中学では野球部に入っていたため丸坊主だった。だから、なかなか思い出せなかった。
お父さんのフォローがなかったら、気まずかったかも。
「先生。その節は、色々お世話になりました」
新見くんが、お父さんに頭を下げる。
「否、俺は、何もしてないから、取り敢えず頭をあげようか」
お父さんが、オロオロし出す。
ん?何かあったの?
「先生のお陰で、普通の生活はできてるんで」
新見くんが言うから、私はお父さんと新見くんを交互に見る。
「それはよかった。俺たち急いでるから、また」
お父さんはそれだけ言って、歩きだしてる。
「新見くん。またね」
私は、そう声をかけてお父さんの後を追った。