慶太と彼 2
「お帰り、夏実」
慶太が、ぶっちょうずらをして、門柱に持たれて待っていた。
「ただいま」
唇を歪めて答える私。
「借りた"もの"返しに来た」
蓮くんが、にこやかに言う。
「確かに受けとりました。・・・で?」
今は、慶太に抱きつかれてる私です。
それを見てる蓮くんが、とても悔しそうな顔をしてるのは何故なんでしょう?
慶太にされるがままになってる私が、いけないのかな?
何て考えていたら。
「俺の想いは伝えた。後は、夏実ちゃん次第かな」
蓮くんが、とても切なそうな顔で私を見てくる。
あー、もう、慶太の顎が頭にあって、突き刺さって痛い。
それに、何気に体重かけてきてるし・・・。
「ふーん。まぁ、夏実がお前に惚れる事があるかわからんが、そん時は、教えろよ」
何て、興味なさげに言ってるけど、内心ホッとしてるに違いない。
って言うか、人の頭の上で会話するのやめてくれないかな。
背が高いからって、低い私を虐めようとしてるんでしょ?
根性悪いよ。
「はっ、なんで報告しないといけないんだ。まぁ、これからじっくりと惚れさせるつもりだが、文句無いだろ」
にっこり笑顔を浮かべた蓮くんが、慶太の挑発に乗る。
美男同士の睨み合いに挟まれて、ちょっと・・・かなり、怖いです。
ホント、いい加減にして欲しいです。
「と言うことで、宜しくな慶太」
「宜しくはしないが、夏実を泣かしたら承知しないぜ」
「俺が、そんな事するわけ無いでしょ」
蓮くんの目に真剣身を帯びる。
「イヤ、既にしてるだろ。まぁ、頑張って落としてみな」
慶太の声が震えてる。
まるで、嘲笑ってるようだ。
「ああ、そのつもりだ」
何か、私の頭上で火花が散ってるような。
私の気のせいですか・・・。それならいいんですけど・・・。
二人で話してるので、私は空気に徹しようと思います。
「夏実、ほら家に入れ。風邪引くぞ」
慶太に背中を押される。
ん?私は、空気だった筈では・・・。
まぁいっか。
「じゃあ、また明日な。夏実ちゃん」
背後で苦笑して言う蓮くん。
「う・・・うん。お休みなさい」
私は、そう言葉を返した。
「そうそう。夏実はどう返事をしたんだ?」
慶太が、真顔で聞いてきた。
「今まで慶太に守られてきたから、異性としての対応の仕方がわから無い。けど、私の中に一人だけ気になる存在が出来たのは、事実。それが、好きなのかどうかは、わかっていないから応える事が出来無い。ちゃんと答えが出るまで待っててくれる?って伝えた」
はしょりながらも、自分の言葉で伝えれたんだと思った。
「そっか・・・。で、どうするつもりだ?」
「ん。ちゃんと向き合おうと思ってる。今の私が出来る精一杯で彼への応えを見つけようと思う」
「・・・そ。まぁ、今は俺から何か言うことはない。ただ、何かあったら俺を頼れ。蓮に言えないことでも、俺には言えるだろ」
慶太が心配そうに言う。
それは・・・、どうでしょうね。
「じゃあ、必ず話すこと。蓮との事でも学校での事でもいいから言え」
釘を指してくる慶太。
「わかったか?」
有無を言わせぬ言い方。
仕方がない、これは素直に頷くしかないな。
「う・・・うん」
「本当に?」
慶太が確認するように目をジッと見てくる。
はぁ・・・。
慶太には、嘘つけない。
「その時にならなければ、わからない」
「だよなぁ。お前は、そういう奴だもんなぁ。だから、ホッとけないんだよ」
最後の方は、小声だったが、耳に届いた。
「ほら、飯食うぞ」
そう言って、慶太が準備し出す。
私もそれを手伝った。