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「そろそろ帰らないと慶太が心配してるだろ」

 彼が声をかけてきた。

 確かに心配性の慶太の事だ、外で待っているかもしれない。

「うん、そうだね」

 私は、そう言う。

「夏実ちゃん。お願いがあるんだけど・・・」

 ベンチから立ち上がった私に彼が言う。

 彼は、まだベンチに座っていて、私が見下ろす形になる。

 彼が、捨てられた子犬みたいな目で見てくるから、何を言われるか戸惑ってしまう。

「俺の事、連って呼んで。それから、避けるのやめて欲しい。夏実ちゃんの方で問題があるのなら、言って欲しい。俺は、君を傷付けるヤツは許せないから」

 私の目を見て言う。

 彼を避けてた理由は、私にも非があるから言えない。

 けど、これ以上心配させるわけにもいかない。

「う、うん。わかった」

 そう口にするしか出来なかった。

「夏実ちゃん。試しに俺の名前言ってみて」

 じっとこっちを見て、おねだりしてくる。

 私は、視線を逸らして。

「おお・・・じゃなくて、れ・・・れ、蓮くん」

 急だったから、照れ臭くて、噛み噛みになっちゃったよ。

「・・・・っ」

 蓮くんの声が漏れ聞こえてきたから、視線を戻すと片手で口許を隠して顔を背けてる彼が居た。

 よく見ると耳がほんの少し赤くなってる。

 何か、可愛い。

「ちょ・・・そんなに見るなって・・・」

 視線で気付いたのか、彼が慌てて言う。

 そんな彼が可笑しくて、口許を緩めてしまった。

「やっと、笑ったな」

 彼が、私に頭にポンって手を置く。

「えっ、私、笑ってなかった?」

「あっ、うーん。俺の前では・・・かな。何時も怒ってたり、困った顔しか見てない」

 って、苦笑して言う。

 何となく、心当たりがあるかな。

「これ以上遅くなったら慶太に俺が怒られるから、帰ろ」

 彼が思い出したように言う。

 確かに、暗闇が広がっていた。

 だからって、慶太に怒られる事はないと思う。

「ねぇ、夏実ちゃん。俺の事意識して欲しい。俺は、夏実ちゃんしか見てないから」

 蓮くんが、優しい眼差しで私を見てくる。

 私は、その言葉に頷くしか出来なかった。



 蓮くんは、家までちゃんと送ってくれました。

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