家族
「母さん。さっきの電話は、一体なんだ!」
父さんが、息を切らしながら入ってきた。
「言った通りよ。編入試験の事は白紙にするの。夏実もそれを望んでる」
母さんが、ニッコリと父さんに言う。
それを見て、唖然とする父さん。
「だから、どういう事なんだ、説明してくれ!」
苛たち気に言う父さん。
「夏実は、ただ逃げたかっただけだから…。真実を知りたくなくて、逃げようとしただけなの」
母さんは、父さんに説明し出す。
「そういう事か…。まぁ、幸い、学校に辿り着く前に電話を貰ってよかったよ」
父さんが、ホッとした顔をした。
「夏実の気持ちが、優先だ。慶太には、俺から伝える」
優しい笑顔が垣間見得る。
「今日、一日休んだら、明日はちゃんと学校へ行くんだぞ」
父さんが、私の頭を撫でる。
「うん。ごめんなさい」
私は、両親に頭を下げた。
「夏実。そんな頭を下げること無いのよ。誰だって、逃げ出したくなる時があるんだからね」
母さんが、優しい声で言う。
「今が、その時かもしれないな。夏実は、慶太に守られ過ぎてたから、これが初めての試練だな」
父さんまでもニコニコしながら言う。
「頑張って、夏実。応援してるから」
母さんも目尻を下げて、言う。
二人に応援されたら、頑張るしかない。
「うん。頑張って、彼に自分の想い伝える」
私はそう口にして、意気込んだ。
その後、自分の部屋に籠り、慶太から渡された問題集に手をつけた。
夕方になり、慶太が帰ってきた。
部屋にいた私。
そこに。
「ただいま、夏実」
ドアのノックも無しに入ってきた慶太。
「お帰り」
私もきにせずにそう返した。
「夏実。父さんから聞いた。ちょっと残念だが、それが夏実の出した答えなら、俺は応援する。また、何かあったら、相談に乗ってやるから…」
慶太がワシャワシャと頭を撫でてくる。
私は、犬ですかって思いながら。
「ありがとう、慶太」
お礼を言う。
「それから、夏実のお見舞いに男が来てたから、追い返しておいたぞ」
男?
誰がきたんだろう?
仲のいい男の子なんて、居ない筈だけど…。
まぁ、明日になればわかるよね。
「ん、じゃあ、夕飯宜しく」
それだけ言って、部屋を出ていく慶太。
ん?あれ、今日の当番は、慶太じゃ…。
まぁいいか…。
窓の外に目を向ければ、太陽が地平線に沈み、宵闇が広がり出していた。
私は、自分の部屋のカーテンを閉めようと窓に近付いたときだった。
目の中に人影が写った。
壁に凭れて立って、一点を見詰めてる人が。
あれって…。
私は、慌てて部屋を出た。
階段を駆け降りた。
「夏実、どうした?」
慶太が、声をかけてきたが、そんなの無視して外に出た。