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翌日、私は学校を休んだ。


「夏実。この問題集をやっておけば、大丈夫だからな」

慶太が問題集を渡してくる。

「ありがとう、慶太」

「夏実なら、余裕で受かるさ。じゃあ、俺行くな」

「うん、気を付けて」

慶太の背中にそう告げた。


「夏実。父さん学校に行って、手続きしてくるな」

父さんもそれだけ言って、家を出ていった。


「はい、夏実」

母さんが、私の前にコーヒーを差し出す。

私は、それを素直に受け取った。

母さんは、私の向かいのソファーに座ると、同じようなマグカップに口をつける。

「こんなことになるなら、最初っから慶太と同じ学校に行けばよかったのよ」

母さんが、皮肉を言う。

今は、リビングに母さんと二人だけ。

一緒にいたくないのに…。

「けど、夏実は夏実なんだから、無理しなくてもいいのよ」

って、母さんが含み笑いをする。

何、その言い方?

「ねぇ、夏実。昨日の慶太は本当の事言ってなかったでしょ?」

エッ…。

私は、驚きを隠せなかった。

母さんが、一口啜ってから。

「わかるわよ、それぐらい。何があったかちゃんと話して」

母さんが、優しく私に聞いてきた。

私は昨日の事を全て話した。



「そっか、そんな事があったの。でも、それって、ただ逃げてるだけだよね。夏実はそれでいいの?」

母さんの言葉に首を横に振った。

「そうだね。夏実は、常に慶太に守られてきたから、自分から立ち向かうことすらしなかった。夏実は、夏実らしくあるべきなの。わざわざ、慶太の学校に編入しなくていい。それに今頃、夏実に告白してくきた彼は、後悔してる筈よ。本当の気持ちを友人に話せないでいるならね」

母さんが、意味深な言葉をかけてきた。

「母さん、私…どうしたらいいのかな?」

「取り敢えず、自分の今の気持ちを正直に伝えることね。夏実が男の子に引かれたのって、初めての事だからね。遊ばれた事に対しても、キチンと話をすることね」

母さんとこんな話が出来るなんて、思っていなかった。

「うん、逃げないで立ち向かってみる」

私の決意に。

「それでこそ、夏実だわ。編入の事は白紙に戻しましょうね」

母さんはそう言うと父さんに電話し出した。

私は、逃げることしか考えてなかった。

立ち向かう勇気なんて、これっぽっちもなかった。

母さんに聞いてもらって、背中を押してもらえるとは、思わなかった。

「夏実の編入の事なんだけど、無かったことにしてね」

って、母さんが用件だけ伝えて、電話を切った。

それでいいの?

父さん、疑問だらけじゃないの?

「慶太には悪いけど、私は、夏実に逃げて欲しくないの」

母さんが、私に向かってガッツポーズする。

アハハ…。

「夏実も恋することができたんだね」

それ、どういう意味なんだろう?

「そんな不思議そうな顔しない。夏実は、中学の時から男の子に目を付けられていたんだからね」

エッ、それはどういう事なんでしょう?

私が、男の子に目をつけられてた?何かの冗談だよね。

「夏実に近付こうとする男の子は、全部慶太が追い払ってたんだよ」

って、悪戯が成功したかのような笑いかたを母さんがする。凄く、楽しそう。

私、そんなの知らない。

「夏実が知らないのも無理もない。慶太は、夏実の事になると見境無くて、全部私達に報告してたからね」

そんな話をしてた時だった。

バンッ!

リビングのドアが、勢いよく開いた。


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