アピールって…
ハァーー。
良いことあるかもって思ってたら突然の告白って…。
しかも、あの人気者から……。
何で、私なんかに…。
教室に入ると幸子が私のところにきた。
「おはよう。ねぇねぇ、朝から大谷くんが、何のようだったの?」
興味津々で聞いてくる幸子。
その言葉に教室に居た女子も聞き耳を立ててるようす。
私は、小声で。
「告白された」
そう答えた。
「エーーーッ!」
幸子が叫ぶ。
もちろん、クラス中が幸子の方に注目する。
やっぱり、驚くよね。
私だって、信じられないんだもん。
「…で、もちろんOKしたんだよね?」
幸子が私の顔を覗き込んでくる。
目が、不安そうにしてる。
何で、幸子が不安になってるの?
私は、首を横に振った。
「何で?」
不思議そうな声でそう聞き返してくる。
何でって…。
「私なんかよりも相応しい娘居るし、私自身が、そういう対象で見れないのに応える事出来ないよ」
私は、自分の想いをそのまま告げた。
幸子の目が、嬉しそうにしてる。
私が断ったことが、そんなに嬉しいわけ?
わかんないよ。
「そっか…」
「でもね『諦めないから』って、言われちゃった」
私が、困ったように言うと複雑そうな顔をして。
「それって、これからもうアピールするからってことじゃないの?」
嫌そうな、嬉しそうな顔を交互に見せる。
「そんなこと言わないでよ」
私は、そう言って幸子をあしらった。
昼放課。
私が、幸子とお昼を食べようとした時だった。
「キャー、蓮くんどうしたの?」
女子の黄色い声が教室に木霊する。
声の方を向けば、教室に堂々と入ってくる大谷くんの姿。
今まで、入ってくる事無かったのに。
彼が、キョロキョロと周りを見渡したかと思ったら、私と目が合うと。
「ちょっとごめん」
囲っていた女子達を押し退けて、こっちに来る。
何だって言うの?
「一緒に食べてもいいか?」
大谷くんが、近くの空いていた椅子を持ってきて、私たち(主に私)に向かって聞いてきた。
断る理由もないし…。
「いいですよ」
そう答えながら、幸子の顔を伺う。
嬉しそうなと迷惑そうな顔を見せる。
そんな光景を見ていた周りが、ザワつき出す。
「ねぇ、夏実ちゃん。その卵焼き美味しそうだね。一つ頂戴」
大谷くんが、私のお弁当箱を覗き込んで言う。
これが食べたいの?
「こんなんでよければ…」
私は、お弁当箱の片隅にある卵焼きを差し出す。
大谷くんは、嬉しそうに卵焼きを手にして、口に運ぶ。
「甘くて、美味しい」
大谷くんが、笑顔で言う。
甘い方が好きなのかなぁ?
「お口にあったのなら、よかったです」
私は、クスリと笑みを溢した。
「夏実。次、体育だよ。急いで」
幸子が、戸惑いながら私にそう告げる。
「えっ、あ、うん」
私は、慌ててお弁当を食べ終えて、お弁当箱を片付ける。
体操服の入ってる袋を手にし、教室を出る。
「夏実ちゃん。今日は怪我しないようにね」
大谷くんが、顔に笑みを浮かべてヒラヒラと手を振っていた。