鼻唄
準備がようやく整ったというのです
見てくださる人が増えるように精進します
少女を拾い……拾わされました
さっきまで飯を食っていた少女は図々しくも今はアトロの背中をベッドにして寝ている。
「いやぁしかしどうしますか?その少女のこと」
隣にいるアレスが声をかける
「今なら、ご飯だけで仲間になりますので旅につれていってくださいといわれてもなぁ」
そう、少女はそれだけを伝えたからと思ったら
「……寝ます」
と言ってさも当たり前のようにアトロの背中に乗ってきたのだ。
「まぁ少女を一人で魔物もでるこんな場所に放っておけませんしこの先にある村についたら丁重にお断りさせてもらいましょうか。」
「異議はなし」
「意義あり……」
背中から声が聞こえる。
「起きてたのか?」
「起きたくなかったけど……私を捨てる話しているから」
「まてまてまて、誤解を招くことを言うな。」
背中の少女は顔をプイッそむけてごんごんと頭を打ち付けてくる。
「第一俺たちが悪い人間だったらお前どうしたんだ?」
「あなたたちは悪くないでしょ?」
「いや、もしかしたら奴隷商人かもしれないぞ?」
「奴隷商人だったら、弱っている人に優しくなんかしない……」
何をいっても返されるだけあるのがわかった……
「わかったじゃあこうしよう。次についた村につくまでに俺たちに有益だと言うことを示してくれ。」
「(ちょろい……)」
何かが聞こえた気がするが気のせいであろう。
とにかく邪魔なお荷物入らない。こちらに寄生しようとしているというところか。
少女も冒険者という格好ではなくローブをきているだけなので近くの村の家出少女と言ったところであろう。
「何でもいい、料理でも戦闘でも何でもいいから」
「料理は…できない」
思った通りであった。
料理ができる人間ならというか冒険者なら自分で山菜とかでもとって、調理して食べるのが普通らしい。
(アレスさんの場合は近くに水がなかったようだ)
思った通り冒険者ではないようだ。
戦闘なんかは言うまでもないローブしかないこいつに戦闘は無理だろう。つまり、それらの理由から次の村でこいつは置いていける
「アトロさん……何やら悪い顔になっていますよ」
(おっといけない、隠さなくてわ……しかしこいつ重いなぁ)
「失礼なこと考えているでしょ……?」
「滅相もございません」
顔に汗を滴ながら必死に弁明する
「そんなことよりお前の名前を教えてくれよ」
「名前はネアス・カルラです……」
「まぁ少しの間よろしくな」
超爽やかスマイルを決める
「少しじゃないけど、よろしく……」
そうしたこともありながら難なく村に向けて進んでいく。
「なぁそろそろ降りてくれないか?」
「地面には危険が多いよ…?」
アトロには背負うのに嫌な理由が少なくとも二つあった
まず、一つ目に動きにくいということ。
動きにくくてはもしモンスターに襲われたときなどに非常に迷惑であるからだ。
そして、二つ目これが決定的であった。
重いのだ。女の子だからこんなことをいうのは失礼とかそんなもんじゃなくて、かるく見積もって80㎏以上はあるのだ。それが信じられない。まぁ冒険者などであれば80㎏や90㎏等あってもおかしくない。なぜならば彼らは防具という重りをつけているからだ。しかし今背負っている少女はローブを羽織っているのみのようにしか見えないのだ。
「重い……」
蚊の鳴くような声でいったつもりだったが背負っていたため、もしくはローブからでもわかるピコピコ耳のせいで聞こえていたのだろう。
カプリっ
頭を噛まれてしまった。
「イッタッ!!」
「次、重いっていったら噛む……」
(もう噛んでいるのではないですか?)
背負っているために見えないが白い目で見られている気がしてならなかった。
そして、それから二時間たち、村の近くである印のモーゼの森と呼ばれているらしい森(アレスから聞いた)のなかの道を通り始めた頃已然として俺の背中で眠っていたカルラはぱっと目を覚まし告げた。
「……おろして」
理由はわからなかったが
「はいはい」
と言ってとりあえず降ろすとすごいスピードで駆けた。
さっきまでのふにゃふにゃした感じなど微塵もなく、ローブをはためかせながら起きたときに向いていた森方に向かって駆ける
(けっこう速いな)
あっという間に森のなかに紛れて見えなくなった。
「どうしたんだ。あいつ?ご飯の臭いでも嗅ぎ付けたのか?」
すると近くにいたアレスが
「これはちょっとまずいですね……」
「何が?」
頬をかきながら説明してくれた
「実は、彼女の向かった50メートル先に十ぴきほどのゴブリンの群れがあるみたいなんです……」
「じゃあつまり群れに突っ込んでいったってことか?」
「はい」
(バカかあいつは?)
思わず開いた口が閉まらない。
「そんなに俺たちについてきたいのかよ?まぁとにかく助けにいかないとな、あいつほぼ装備なしで……」
仕方なく助けに向かおうとして
「あぁそれなんですけどね彼女もう全部倒したみたいで……」
そう告げられて、またもや唖然とする。
「それにしてもどうやってあいつ倒し……あっ」
「彼女の足捌きからから武芸をたしなんでいるとは思ったのですがねここまでとは……」
そして重大なことに気がつく
「まさか……」
汗が止まらない
顔をアレスの方に向ける。
アレスは苦笑いをしている
「その通りかと」
「その通り……」
声のする方を向くと
見覚えのあるローブが突っ込んでいった場所から顔を覗かしていた。
「私たちは鎖よりも固い結束で結ばれている仲間……」
あまり変えない無表情のような顔をそのときばかり満開の花のように笑顔を咲かせた
「約束は守るよね?……」
その笑顔にはマモレヨ?の圧力があったそうです。
アトロがしまったなと後悔しても後の祭りである
素早く背中に戻ってカルラは鼻唄を謡だした
ふんふふんふーふん♪
森にリズムの通り雨が降り注ぎそれに森の住人たちは自信を揺らして拍手をした。
ネアス・カルラが仲間となった。