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名もない物語  作者: 林檎の神
1/7

白の仮面の人~プロローグ1~

「はぁはぁはぁはぁ……」


黒装束の二人組は静まりかえる森の中を駆ける。

湿度の高い森のせいなのか顔からは雫がたれ地面を濡らす。

しばらくしてずっと追いかけ続けてきた標的を見つけた。


「はっ!! ようやく見つけたぜ白の人。」


「ずいぶんと逃げてくれましたね。」


声の高さから黒装束の二人組は男と女のようだ。

その二人の視線の先にはボロボロの麻の服を着た中肉中背の何者かがいた。

体格的に男であろう。

特に変わった様子がないように見えるが明らかにおかしい点があった。

真っ白の……穴がひとつも見当たらない仮面をつけている。


二人組は挟み込むように白の仮面の人の前に立った。


「ようやく見つけたぞ?このくそ仮面が!!」

「全くです。この一ヶ月時間を返していただきたい」


白の仮面の人と呼ばれたものは俯いた顔をゆっくりとあげた。


「訂正する。私は逃げてない。逃げるということを考えた覚えがない。」


黒装束の二人組は懐にしまっていた刃物を取り出した。

「お前の首を持ってこいと大司教様からの命令だっ!!悪く思うなよ。恨むなら教会の恨みを買った自分を恨め」


「我思う、故に我ありと」


白の仮面の人は黒装束が襲いかかる直前にふいに告げた。

「しかしながら我がある理由をなくした今我思う、故に我往ねと」

白の仮面の人は、くくくと笑い出した。


「私を殺すか……私としてはありがたいんだけども、あなたたちに私は殺せますか?」

白の仮面の人は、自らの首をハサミで、切るかのように指でチョキンとして見せた。


「けっ、お前さんなんか俺ら(竜殺しの影)にかかれば赤子も同然よ。」

そういって、地面に唾を吐いてにやりと笑って見せる


「くふふ、頭のいたい名前ですね」

黒装束が青筋をたてにやりとしたのを合図に持っていた刃物が男の体から出る赤い煙に巻かれると二メートルを越える鋸のようになった。

「おい、わかってんな?」

「ええ、望み通りに殺します。」

女も同様にして大きさは変わらぬが形状が鋭くなったクナイ型の刃物を作り出した

黒装束の男は一歩踏み出して大剣を振りかぶろうとした。


(こいつで頭蓋ごと破壊してやるわ)


しかし、その視線の先の破壊すべきものは

……ぶれていた。

(何がどうなっている?)

考えようとした


その時には白の仮面の人は、片手を地面につけていた。

手首に回転をかけてねじり無駄なんて決してない側転のような動きで回り、足が頭上に達する前に腕を縮めて、一気に伸ばして男の顎を足で撃ち抜いた。

「かはっっ!!」


一瞬のことだった

綺麗に顎に蹴りを喰らった男はすぐに白目を向いた。



片割れの女は安否を気遣う前に直感的に後ろに動き出していた。

先程の疲れとは違う意味で汗が吹き出していた。

(話が違う。武器を破壊されたことによって逃げ出しているのではないのですか。武器を持っていなければ一般人も同然だと聞いていたのに。)



出逢ってわずかな時間であったのに形勢は一瞬で逆転されてしまった。

「「こんなはずじゃなかった」」

立ち止まってはいけないのに止まってしまった。

「今、心が読まれたと思った?」

後ろを恐る恐る向くと目の前に吸い込まれそうなくらいに白い物が広がった。



表情はわからないはずなのにそれは笑っているように感じた。


白の仮面の人は女の背中に手を回して指を突き立てた。


「どーん。」


ただの言葉だった。何も決してされていない。


しかし、息が出来なくなる。


否、息の仕方を忘れる。


「カヒュゥ、ヒュッ」

(何で息ができないのっ?)


「あれ、どうしたのですか?私はなにもしてませんよ。」


腕をだらっとしておどけて見せる。

しかし、息はできないままだ。


「カヒュッカヒュゥたすぅけ」


女は首を押さえて涎を垂らしながら、助けを請う。

それを聞くと白の仮面の人は、興味をなくしたかのように俯いて女の腹部に足をねじ込んだ。


「かはぁっ!!」


あまりの痛みに目を見開く。

「やはり無理か……」

それはあまりにも小さな呟きだった


「はぁはぁはぁはぁっ!!」


「もう、いい?」

女は息が再びできるようになったことに驚きながら言葉を紡いだ。

「こ、殺さないのか?私たちを」


一度は最初目指してた向きを向いてあるこうとしていた足を止め振り返った。


「…………」


再び前を向き無気力に再び歩みを進める。



(あれが七人の罰人……実力について噂が一人歩きしたものと思っていたがくそ、ここまで差があるのか)


女は片割れの近くに寄って命があるのを確かめると歯を喰いしばり白の仮面の人の消えた方角をずっと見続けていた。









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