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「え?」
着地に失敗しないよう身構えていた沙美は、いつものクッションと違う感触に、体を支える強い腕にびっくりしながら周囲を見回した。
自分のお尻の下には、フレデリクの腕。不満げに杖をもって真正面に居るのはローラン。そして、お姫様を羽交い絞めにしているファビオが、「お嬢ちゃ~ん」と器用に手を振っていた。
「すみませんサミさん。ここに、あの大量のクッションを持ってくるのは目立ちすぎますので、今日はディックの腕で代用致しました」
ローラン、実は自分が受け止めたかったのだが、術を操りながらそんな芸当は流石に無理だと渋々諦めた。渋々、仕方が無く、フレデリクにその役目を譲った。激しく渋々。
「ったくよぉ、何で俺が、お姫さんを抑える役なんだよっ!」
「分かってる理由を聞くな!」
いつものローランの台詞に、ファビオがいつものように返答しようとするが、今まで小さく部屋に流れていた歯軋り音のボリュームが上がり、呆れて口を閉じた。音の出所、腕の中のナデージュを伺う。
「お、お姫様……折角の真珠のような歯が………」
沙美は、あまりに的確に捕獲されているナデージュを可哀相に思いながらも、真っ先に思う事を口にする。
「勇者殿っ…」
じたばたと暴れながらも、ナデージュは満面の笑みを浮かべている。だが、一歩も動けない。相変わらずの酷い姫君対応のファビオに、沙美は変な感心をする。
「あの~お姫様。サミって呼んでくれるのなら、戒め外してもらいますけど…」
沙美は、自分もかなり酷い扱いしているなーと思いながらも、懐かしい勇者という言葉に毛羽立っていた。速攻お願いである。
「でしたら、勇者殿もナデージュとっ!」
「お姫様………大変大変申し訳ないんですが、珍しくあたしにも諸事情がありまして、もう少し修行が終わるまでお姫様でお願いします」
沙美の言葉に、おっさん達三人は苦笑を浮かべる。未だ、修行が足りないのかと、ディックは沙美の頭を小突いた。
その光景を沙美の言葉を訝しく思いながらも、ナデージュは「では、いつかはナデージュと呼んでもらえますね?」と言葉を続ける。
「はい。修行が終わり次第、ぜひ!なんでしたら……ん~……ナ~ジュとか、ナジュとかどうでしょう?可愛い呼び方っ?!」
沙美は最後まで言えなかった。ナデージュの浮かべた綺麗で嬉しそうな笑みに見惚れる。そして、その表情が沙美の記憶を刺激した。拳をぎゅっと握り締めた。
「分かりました。では、僭越ながらサミと」
羽交い絞めされながらも、その範囲で優雅な礼をする。素晴らしい騎士道精神だと、再び沙美は感心する。拳が解ける。
「はい。ありがとうございます。
んじゃファビさん、離そうねー」
「大丈夫かぁ?」
「だって、これから二人っきりで、お茶会するんだよ?」
沙美は楽しそうに笑って、ファビオを覗き込む。間に居る、ナデージュが激しく嬉しそう。
「そうにゃぁ、見えねぇけどなぁ……」
呆れた声音だが、自然な動作でファビオはナデージュを開放した。「んじゃぁ、俺達は行くか」と、陽気な声で出口に向かう。同時に、フレデリクも沙美を下ろした。
その、あっさりとした行動に、ナデージュは訝しげに三人を見るが、当人達は気にした様子も無い。全員扉に向かってる。
「お嬢ちゃん、後でなー」
ファビオは、手を振った。
「サミさん、後ほど」
ローランはチラリと虚空を見上げ、その後自然に沙美に向かって小さく頭を下げる。
フレデリクは、何も言わず掌だけを振った。
静かに、扉は閉まる。
沙美は、振っていた手を下ろし、ナデージュに向き直った。
「お姫様、あたし、今まで、おっさん達から色々昔話を聞いてたんです」
今まで居た場所とは反対側に、小ぶりのテーブルと二脚の椅子。テーブルの上には、お菓子とお茶、そして軽食。頼んでいた通りの状態。
沙美は、近い椅子にストンと腰をおろし、ナデージュにも座るよう勧める。心の中で、目上の人より先に座って椅子を勧めるって、だめだよねぇ…と思いながら。
「今日は、我侭言って、お姫様の昔話を聞きにきました。それと、いくつかの質問があるので…もし良かったら、答えて下さい!」
「ロ、ローランから、す、好きな人の話を聞きたいと……」
ナデージュは、沙美と目を合わせず、少し頬を染めて言う。
「はい。……あの、あまりに個人的な話なんで、嫌だったら無しでもいいです。色々聞きたい事を聞いちゃいます。
でも、女の子同士で恋の話をするのは定番ですよね!お姫様もたまには、いいかなぁ~って思ったんですけど……だめですか?」
覗き込むような沙美の仕草に、「う…」と呻いて、それから片手で顔を覆う。
「サミ……」
「はい」
「先ほどのを、お願いしていいだろうか?ナジュでもナージュでもいい。サミが、そう言ってくれれば……話せると…思う……」
「はい、ナジュ。それともナージュ…う~ん、その場の雰囲気に合わせて使い分けますね」
沙美の記憶にある名前から、かけ離れた愛称。それならば、安心して言えると、沙美は大盤振る舞い。
ナデージュは、そんな沙美の言葉に、さっきの質問以上に頬を染め、そして微笑んだ。
「10年前のお話を、おっさん達から聞いたんですけど……あの、いつからファビさんが好きなんですか?」
微笑みが、固まった。
「え?…あ……なななななな何で、そそそこに、ファ、ファビオが出てくるっ?!」
「へ?だってナジュの好きな人って、ファビさんですよね?違うんですか?」
今までの旅で、お話で、激しく鈍い沙美にでも十分に分かりすぎるぐらいのローランとフレデリクの表情を見てきた。
「ま………間違ってはいない……」
ものすごーーーい、小さな声。
「だが……なぜ……」
「ナジュの好きな人って話があった時の、ローランとディックさんの表情を見て気づきました」
あれは、ものすっごく分かりやすかったと、沙美はコクコク頷く。
ナデージュは溜息をついて、「フレデリクか…あいつは、目ざといからな……ちっ……だが、あのローランが気づく訳がないだろっ!……くそっ…漏らしたのか………あの野郎っ!後でタタム!……」と、ボソボソと罵倒する。頬が赤い為、迫力は皆無。
「だけど、ファビさん、全然気づいてないみたいなんですけど………ナジュ……どういう態度で……」
沙美は、最後まで言葉が続けられなかった。目の前のナデージュは、真っ赤になって、「あ~」とか「う"」とか…言葉にならない音を発しながら、頭を抱えていた。
「とりあえず、好きだなって思った時からのお話を聞かせてもらえますか?」
「う"っ…………わ、分かった」
ナデージュは、一つ咳をして、それから優雅にお茶を一口飲み、ゆっくり深呼吸をしてから沙美を見た。
「サミは、10年前の話を聞いたのだな?」
言葉遣いが、最初の頃より、ぞんざいになっている。沙美は、激しく動揺しているなぁと、しみじみとナデージュを眺める。
「はい。なんか、切りかかるお国柄だったというお話でした」
「っ………う、ま、まぁ……否定はしないが……」
ナデージュは、困ったように遠くを見る。
「その…切りかかって剣を弾かれた時に………好きになったのだと思う………」
「一目惚れですかっ?!」
「一目というよりは……一剣惚れが……正しい……」
流石お姫様は一味違うと感心しながら、沙美は続きを待つ。
「私の剣の腕は、精霊からの授かりものだ。小さい頃から叩き上げで修練したものにとっては、ズルとしか言いようの無いものだ」
「でも、才能をもらったからって、鍛錬無しでは強くなりませんよね?」
沙美の拳が握られる。聞き覚えのある台詞。一番上の姫君が言っていた言葉。
「確かに私は、幼少の頃からラグエルに師事し剣の腕を磨いてきたが、それだけで普通の女性が、鍛え上げられた体を持つ男性に勝てるものではない。だいたい、必死になって鍛錬をしても、腕の太ささえも、ほとんど変わらない。私の体は、授かりものが無かったら、剣を持つ事さえ困難だっただろう」
「でも、あのラグエル卿さんに師事したって事は、生半可な努力じゃ勤まりませんよね?」
「そうだな。あやつは、戦いに関しては、まったく妥協が無い。小さい頃から、痣の絶えない生活をしてきたものだ」
沙美は、流石ラグエル卿、お姫様に対しても手抜きはしないんだと感心する。そして、心の底ではやっぱりとも思う。
握った掌は、未だそのまま。
「才能もあったのだろうが、それだけではない厳しい訓練を潜り抜けた者が、目の前に居たのだ。しかも精霊から力を授かった私よりも、遥かに上の技量を持っていて、だ。
たぶん私は、相手の顔なんか見ていなかっただろう。ただただ素晴らしい才能を感じ、それに感動をしていた。そして、妬ましく思った……」
「妬ましいんですか?」
「そうだ、妬ましかった。これが、自分の努力の結果だと誇れる腕前。それがゆえの、自信に満ちた言葉。そんなもの、私には何一つ無い。
ただ、強くあれという王家の勤めの為と、贈られた物を錆付かないようにする為でしかなかった私に、あんな声音は出せない」
聞いた姫君の話から離れていく新しい話に、少し安堵した沙美は、拳を緩める。
「あの戦いの後、ファビオに試合ってくれるよう頼んだ。妬ましかったが、あの剣にもう一度触れたいという欲望に逆らえなかった。それは、あれの戦いを見た後だったからこそ一層募っていた。
だが、内乱処理で忙しく、少しの間会う事が出来なかった。それに安堵していたはずなのに、少しの間もあれを忘れる事が出来ない。剣を弾かれた時の手の痺れを、日に何度も感じてしまう。
たぶん、妬ましいという気持ちは嘘ではなかったのだろうが、それ以上に憧れる気持ちが強かったのだろう。
後から後から、わいてくる仕事を必死になって片付けていた。早く国を安定させ、民に安心した生活をおくってもらう義務が私にはあるから……そう、必死になって己自身に言い訳をしていた」
「そして、試合のですよね?」
「あぁ。剣を合わせた瞬間、私は心から喜んでいた。己の持っているもの全てを出し尽くして戦った。
私にとって、それは初めての経験だ。今まで、少しでも本気を出せば、相手が必ず倒れてしまう。唯一その必ずが、必ずでもなくなる相手は、あの時ファビオが倒してしまった。
だが、目の前に立っていたファビオは、間違いなく私より強かった。私に対して、手加減をしていた。それを屈辱と思いながらも、嬉しくて堪らなかった。自分の先に立つものが居るという喜びが勝ってしまった。
そして、どうしても欲しいと思ってしまった……」
「未だにファビさんは傭兵だって…」
「そうだ。士官させるのは無理だろうというのが、デュカスの言。だが、傭兵のままであるのなら可能かもしれぬと、フレデリクが言っていたと告げてきた。
私は、それでも構わないと思った。あの時ほど必死になって言葉を捜し、人に接した事は無かった……奇跡的にファビオは残ってくれたが……本当に奇跡だったと…思う」
沙美は、なんとなくファビオがここに残った理由を推測していた。前に、位の高い者に対し辛らつに評価をしていた。そんな者に仕えるのは、ファビオ自身のプライドが許さないのだろう。なにせ、極太の荒縄理性の持ち主が、その荒縄をぶちきったのだから。
そのファビオが、目の前の姫君という位の高い人の傍に留まっている。それが答えだと、沙美は知っていた。
「ナジュは、最初ファビさんの剣が大好きになったんだね。
でも、いくら腕がたっても、あの性格であの話し方だよねぇ?その大好きって気持ちが、無くなったりしなかったんですか?」
「サミ!」
ナデージュは、椅子から立ち上がり沙美の両手を握り締める。
「は、はい?」
「あいつの、白々しい演技に騙されてはだめだぞ!」
沙美は、くすくす笑う。ここにも気づいている人が居る。
「サミも気づいているのだな?」
「あたしは、ディックさんに教えてもらったんです。でも、内緒だって言われました」
「内緒だぁ?あんな分かりやすいのにかぁ?ちょっとでも頭があるヤツなら、誰だって気づく!」
「そうなんですか?」
沙美は、ナデージュの荒い言葉使いが、あの時ローランが、ファビオに対して言ってはいけない事を言った時と同じ感情だと感じる。少し、水臭いと思っているのだろう。
「子供の頃から躾けられたモノは、消せないものだ。あいつの立ち居振る舞い。特に食事の作法なんか、一般市民が出来るものではないぞ!」
なるほどと思う。自分も親から躾けられたものは、確かに偽装するのは難しいだろう。
「だいたい、あの基本がしっかりとした剣だって、子供の頃から嗜んでなければ、あそこまでのものは出来るはずもないんだ。そんな事をする家庭は、貴族だけだ」
「なるほど…」
「それにな、あいつは二軍の長だ。当然書類仕事も、仕事のうちに入る。その書類の見事な事と言ったら……デュカスが、引き抜きたがって煩いぐらいなんだぞ」
ファビさん凄い!と、沙美は、あの頭脳明晰な人に認められるぐらいの才能に尊敬を飛ばす。
「え?でも、ローランも、ディックさんも、書類仕事得意そうですけど…」
「甘い!」
「あ、ローランは、術仕事だけなのかな?」
「そうだ、ローランときたら、術仕事以外は役立たず!だいたい、術開発にのめりこみすぎて、他の仕事を全て放り投げる。自分の事さえ疎かになる。
確かに、術士長は忙しい職務なのだが……まったく、融通が利かなさ過ぎだ」
沙美は、コクコクと頷く。なにせ、幽霊屋敷の持ち主である。臭いとお姫様に言われちゃうような魔法使いとご同業な上に、同じタイプだと言っていた。
だが、それがローランさんらしいと、沙美はにっこり笑う。
「それから、フレデリクだが、あいつは……直感で仕事をするタイプなんだ」
「は?」
「なぜ、この仕事に、こんな調べものをするんだ?という仕事の仕方をする。結果、それが必要な事が多いんだが、過程ではそれを説明出来ない……あいつは、最初ラグエルに教育されたのが、失敗だったな。その後、デュカスの下についたのだが、遅すぎた。デュカスも、頼りにはしていたが困ってもいたな」
「ディックさんは、コツコツ型だと思っていました」
「それは、ファビオへの評価だ。フレデリクには、一切使えない」
「ん~でも、仕事はきっちりやるんですよねぇ?」
「そのきっちりの線引きが、あいつに関しては、難しい。
例えばだ。
10の仕事を与えたとする。その内容は、色々な方面に富んでいる。
ローランだったら、術に関する事を真っ先に仕上げ、時間が空いた時点で、術以外の仕事を仕上げてくる。だが書類を見ると、術に関しての書類の完璧さに比べて、他が少々手抜きになる」
沙美は、楽しそうに聞いている。
「ファビオの場合、一つ一つ丁寧に順番に、こなしていく。どの書類も、きちんと理路整然としたものが、あがってくる」
沙美は、ローランとの違いに感心する。
「そして、ディックだ。あいつは野生の勘で、まず書類を仕分けするんだ」
「は?」
「一番急ぎで必要な書類を選び、まず、それからきっちり仕上げていく。書類の仕上がりは悪くないのだが、なぜこんな事まで?って所も調べてあったりする。そして、さっきも言ったが、それが最終的には必要になる事が多い。だが、それを、あいつは説明出来ないんだ」
「動物?」
「そうだ。あいつは、あの外見に似合わず。非常に野性的なんだ。
そして、必要の無いものと割り振られた書類は、捨てられる」
「え?やらないんですか?」
「あいつは、必要があれば何でもするが、必要の無い事には一切手を出さない。それこそ、見事なぐらいに切り捨てる」
「げ………ファビさんと、ローランには、なんとか拾ってもらえそうだけど、ディックさんに愛想つかされたら、拾ってもらえないんだ」
「その通りだ」
沙美は、どこを気をつけていいか、さっぱり分からないけど、見捨てられないよう頑張ろうと心にメモする。自分が見てきた、おっさん達とは、随分印象の違うおっさん達評に、沙美は楽しんでいた。
「んで、そのファビさんなんですけど……貴族出身確定だとしても、今はこの国の傭兵で、将軍様なんですよね?」
「そうだ」
「結婚するんですか?」
ナデージュのようやく消えた頬の赤みが、突然全身に回った。真っ赤になって、硬直した。
「えっと、表面上の性格も、内面に隠された性格も合わせて、好きなんですよね?」
ナデージュは声を発する事が出来ずに、コクコク頷く。
「最初、剣の腕に魅かれて、時間が経つにつれご本人自身も好きになってしまったんですよね?」
ナデージュは、もう一度、コクコクと頷く。
「なのに、女の人を挟んで、決闘されたんですか?」
「う"っ……………」
「なぜ、それを知って……あ、あいつらかっっ!!」と怒鳴った後、ボソボソとナデージュの罵倒は続く。だが、突然覚悟を決めたように、顔をあげ、視線を泳がせながら声のボリュームをあげた。
「さ、最初は、あいつのマネをしていただけだ……生真面目すぎると評価された剣を変える為だったのだが………いや、好きだったからこそ…その言葉に従ったのかもしれない……ま、まぁいい。そのだな、女の人を口説くのが剣にとって良いと言われたので、あいつの真似をするようになった。真似をするというのは、あいつを観察するのと同義で……その、ずっと、見ていて……う"~~~……………あいつが他の女性と話してるのが、不快だと気づいたんだ………」
それだけ言うのに、体力の全部使い果たしたかのように、ゼィゼィと呼吸を荒げている。
沙美は、可愛いなぁ~と思いながら、暖かい視線でナデージュを見ていた。
「そして、なぜ不快なのか気づいてしまった………だから、あいつが口説いている女性を片っ端から口説くように…………」
ナデージュは、テーブルにうつ伏せてしまった。
「ナジュ、お茶を飲んで、お菓子を食べるといいですよ」
沙美は、一つ小さなクッキーを取り、口に放り込む。
「甘さ控えめで美味しいですよ」
ナデージュの頭をトントンと叩く。
「恥ずかしいけど、友達とお菓子食べながら、軽いものを食べながら、話をするのって、気が楽じゃありませんか?」
ナデージュの頭が、少しあがる。
「私は、こういう事をした事が無いから……」
「ファビさんが言っていた、剣とはまったく関係ない事の一つにどうですか?」
「……難しいな……本音を漏らしていい立場では……ないからな…」
「では、あたしとは、どうですか?若輩者ではありますが。たまには、いい息抜きになると…いいなぁ……」
ナデージュが、にっこりと笑う。
「サミは、私の女友達になってくれるのか?」
「はい!」
「…………サミが……初めての友達だ…」
幸せそうな声音のまま、再びナデージュは、うつ伏してしまう。だから、沙美の顔が歪んだのに気づかなかった。必死になって、拳を握っているのに気づかなかった。
沙美は、ゆっくりと大きく深呼吸をする。これから自分が考えている事を成す為に、泣いてなんかいられない。無理やり、手の甲をぎゅっと抓った。
物凄い痛かったけど、別の意味で涙が出そうになったけど、大丈夫だと思えた。もう一回深く深呼吸する。小さく頷いた。
沙美は、ナデージュの顔を覗き込む。「ナジュ、聞きたい事があるんですが、いいですか?」と、目の前の淡い金髪を撫でながら聞いた。
今回ナデージュの話ですが、実は第二部へのつながりの話なので、どちらかと言うと、ナデージュ自身の話は少ないです。
もしかしたら、今回のタイトル沙美の方が良かったかもwww
今回は、少ないかもしれませんが、可愛いナデージュを書きますんで、楽しみにして下さいm(__)m




