6 整理
真木の家からの帰り道、軽くジョギングしながら情報を整理した。
感情が高ぶると熱を発する人間はクロと呼ばれていて、俺はクロだった。クロは単独で熱を発すると、発した熱と同じ熱量が自身に返ってくる。だから、クロは感情をコントロールして熱を発しないようにしている。クロのことは知らなかったけど、自分が火傷をするから感情のコントロールは自然と身についていた。
そして、クロはシロに操られる。シロに操られると、クロは無傷で熱を発することができる。その熱量は、シロの発する単語の数による。真木は三つの単語を発したけど、常時五つ見えているらしい。大木を退けるために必要な熱量は単語三つだったわけだ。
シロは希少で、その能力ゆえに政府に狙われている。シロを探すために、クロ狩りが行われるらしい。そこで俺はクロだと特定される。シロはクロを見分けられるからだ。特定された後は、暫くの間監視が付く。尾行だけじゃなく、盗撮や通信機器での遣り取りも含まれるらしい。クロの交友関係を調べ、その中からシロを探す。
だから、必ず真木に辿り着く。事故現場から真木の家に行くまではフードを被っていたし、人通りはなかった。でも、目撃者がいないとは限らない。変に隠すより、認めた方が嘘がつきやすい。真木と仲が良い、恋人だと設定しておけば、その設定で行動すればいい。隠すより付け加える方が矛盾が少ないだろう。
家に着いて、シャワーを浴びた。冷水は、頭を冷やすと同時に体も冷やす。
真木を巻き込んだ。俺のせいで。俺のせいで真木がシロとして利用されることになったら。
何かが焦げた臭いがした。シャワーですぐに火は消えて、壁に焦げた跡だけが残った。
左手の甲に現れた火傷が、シャワーで冷やされてチリッと痛んだ。