5 これからのこと
つまり、俺がクロだと特定されて、俺から真木に繋がるというわけか。
政府が動くなんて、シロをどう使おうとしているんだ。道具として使うのか、兵器として使うのか。どっちにしろ、シロは利用される側だ。そして、操られるクロも利用される。
「学校や会社に政府の人とシロが来るわ。学校だと全校集会ね。そこで、クロが特定される。そこからクロに監視が付いて、クロに関わる人からシロを見つけようとするでしょうね」
「ああ。クロはシロを売る傾向にあるからな」
『クロ狩り』が昔行われて、実績があったからまた行うんだろう。でも、何度も行うことはできない。シロとクロという存在が知られていない中、何度も集会を行ったりしたら変に思う人が出てくる。希少なシロを見つけるのは困難だ。クロはシロがいないと利用できないから、クロだけを見つけても意味がない。クロがシロに操られたことが重要だ。
シロに操られたクロから、シロに繋がる。
「シロを売る……」
「自分を操る人を庇う必要はないでしょ?」
そういう考え方か。シロがいなければ自分が怪我をするんだから、力を使おうとは思わない。反対に、シロがいるから無傷で力を使うことができる。でも、そこに自分の意思はない。
シロがいなければ。自分と関係なくなれば。クロは百人に一人はいるんだから、自分の代わりはいる。シロは希少だから代わりはいない。だから、『クロ狩り』を行ってまで必死になって探している。そんなシロの正体を自分だけが知っているとしたら。シロに対して正体を言うと脅しても、操られてしまえば意味がない。だから、政府の人に告げ口するんだろう。
「君のことは信用してる。君が私のことを言わなくても、私に辿り着くわ」
「この際、恋人だってことにしなさい」
父親はあっさりと言った。覚悟はしていたと言っていたから、これも予想の範囲内だったんだろう。起こるだろう可能性を考え、こうなった時はどうすれば良いか。娘のために考え抜いてきたんだろう。クロが同性か異性か。年齢は近いか。どうすれば自然に見えるか。怪しまれないようにするための最善策は。
そんな人の意見に異論はない。だけど、それには問題がある。
「俺、演技なんてできないんですけど」
「じゃあ、周りの人には隠していた恋人。でも、それは偽物の恋人ってことで。『クロ狩り』の後は君が使う通信機器は盗聴されると思うから、今のうちに先のことを決めておきましょう」