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3 クロ

 兵器。それは戦いの場で使用するものだ。人間が兵器になるなんて、俺が兵器になるなんて考えたことがなかった。ただの弱い火力だと思っていた。

 人助けになった力が、人を傷付ける力にもなる。

「大木を吹き飛ばす力が?」

「それ以上の力が出せるからね。さっき言った単語は三つだったけど、普通は五つ見える。漢字でね。単語が増えるごとに力は強くなるよ」

「三つであの威力か」

 単語五つだったら、どれだけの熱量になるんだろう。大爆発を起こせるんじゃないか。それが何の代償もなく起こせるとしたら。

 確かに兵器と言えるだろう。

「覚悟しておいて。君が『操られる』側だということを。自分の意思とは関係なく、力を使ってしまうんだってことを」

 自分の意思ではなく、『シロ』の意思で力を使う。

 真木は素早く髪を解いて両側に三つ編みを作り、胸のポケットから赤縁眼鏡を出して着けた。

 印象がかなり変わった。髪型を変えるだけで大分違うけど、眼鏡で雰囲気も変わった気がする。あと二分ほどで人通りが多い道に差し掛かる。念には念を、真木は慎重だった。

「私の家は大通りを出て、真っ直ぐ進んだ先にある花屋を左に曲がって五分くらい歩いたところにある。一軒家で表札もあるから分かると思うよ。ここからは別々に行動しよう。私は近道を通るから、君は説明した道順で来て」

 俺が頷くのを確かめてから、真木は早歩きで先に行った。

 さて、俺も変装するか。リバーシブルのパーカーを裏返してフードを深く被った。さっきまでは黒だったけど、今は臙脂えんじ色だ。こっち側は着たことがなかった。学校指定の体操服と同じ色だから、体育以外でこの色を着たくなかった。体操服、ダサいし。そんな体操服と同じなんて嫌だ。

 道端で柔軟をしながら十分程待ってから、軽くジョギングをして家に向かった。パーカーとジョギングの組み合わせは悪くないだろう。フードを被っていても不自然ではなく、トレーニングの一環だと思われそうだし。

 花屋を左に曲がって、少し進んでからペースを落として表札を確認していった。真木、真木。牧や槇と間違えないように、名乗った時に漢字の説明をしたのか。あの時、どこまで先のことを考えていたんだ。

 真木、という字が目に入り、足を止めた。一息吸って、インターフォンを押した。待機していたのか、すぐにドアが開いた。

「うん、ちょうど良いね。早く中に入って」

 急かされるように家に入り、後ろでドアが閉められた。真木は流れるような動きでスリッパを用意し、廊下を歩いて行った。慌てて靴を脱いでスリッパを履き、真木の後に続いた。

 淡々と行動しているように見えるけど、急いでいる。何かに追われるような危機感を覚えた。

 これからとんでもないことが起こるような気がした。

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