21 シロとクロ
「シロはここで教育されるんだ。単語が全部読めるようになるために。蘇芳はここではエリートだ」
赤城さんはシロがテストを受けているのを見ながら話しかけてきた。
赤城さんは青柳の単語がルビ付きで見えるからテストは免除されているらしい。蘇芳も俺という銀がいるけど、テストは受けさせられている。まあ、嘘の銀だからテストを受けるのは当然なんだけど。
緋色がガラス越しで見ているから。良いところを見せたらどうだ。
そう三國さんに説得されて、渋々部屋へ入っていった。三國さんは蘇芳のことがよくわかっているようで、上手く俺を餌にしていた。
「ここに来て、お前が守りたいモノは守れたのか?」
「はい」
一度は死を覚悟したんだ。もう、怖いものは何もない。
蘇芳が他のクロを傷付けないなら俺は利用されても良い。
蘇芳は他のシロに俺を使わせたりしないだろう。そのために銀という嘘を吐いたんだから。
蘇芳の執着は、子供の頃に俺だけが一緒にいたことが原因になっている。だから、俺を傷付けたりはしない。俺に嫌われることを怖がっている。それと同時に、俺だけが味方だと思っている。
「俺は姉のためにここにいる。俺がここにいることで、治療費と入院費が免除されて、姉は生きていられる」
「……モモカが言っていたシスコンって」
「そういうことだ。俺は自分からここに来たからな」
蘇芳のように見つかって連れて来られたシロではなく、赤城さんは自分からここに来たのか。姉を助けるために。姉を生かすために。
俺に似ているのかもしれない。自分勝手な自己犠牲なところが。親がどう思っているかなんて考えないで、自分が守りたいモノのために自分が犠牲になる。
「シロとクロって漢字でどう書くか知っているか?」
「色の白と黒じゃないんですか?」
「人偏の『使う』に道路の『路』で『使路』、将棋の『駒』に暖炉の『炉』で『駒炉』。シロの『路』は方法っていう意味がある。クロの『炉』は燃料を燃焼する部分だからな。それを持つ駒がクロで、それを使う方法がシロってわけだ。ここではわかりやすく色の白と黒で服の色を分けているけどな」
ここで支給されている服は白を基調としたものと黒を基調としたものになっている。デザインは多種多様だから、それは自分で選ぶことができる。
見た目でシロとクロだと分かるっていうのは、実験動物みたいで気分は良くない。
それにしても、使路に駒炉か。爆発物と使用者。いや、使う『人』じゃなくて、使う『方法』だ。
「その漢字だと、シロの方が道具みたいに聞こえるんですけど」
「そうだ。シロが主導権を持っているわけじゃないんだ。シロの方が道具なんだ。それに、クロは自分で死を選べる。この施設で自殺したヤツはいるからな。あと、クロはシロを殺せない」
「クロにシロである自分を爆発させるように命令できない、と」
「ああ。シロは見つかったら一生壊すための道具だ」
赤城さんは笑った。それは抜け殻のような感情のこもっていない笑みだった。
真木。
アンタが日本を出ることができて良かった。
シロだということがバレなくて良かった。
俺がアンタがシロだとバレるような行動を取った罪は償えたかな。
俺の銀。
俺の知らないところで幸せになってくれたら嬉しい。
この話は、石.川.智.晶さんの『不完全燃焼』をイメージして書きました。




