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16/22

16 海

 夕日が海に溶けていく。日本海の水平線は、濃い橙色に染まっていた。

 波の音だけが響く海岸で、砂浜に入る境界線に立っていた。

「何を考えているんだ?」

「何も。夕日が沈んでいくなーって」

「なんだソレ」

 フハッと宮野は笑った。

 何も考えたくないから、ここに来た。何も考えないために、この場所を選んだ。

 綺麗だな、とか感動するな、と思ったことはない。海はいつ見ても変わらない。天候や時間で雰囲気は変わるけど、海を見て感じることは同じだった。

 緋色に似た色の夕日は、『緋色』の名を持つ俺の心を動かしたりはしない。

「お前が喜怒哀楽を表すことはあるのか?」

「何だ、急に」

「いつもつまらなそうだから」

 つまらない、というのは適当ではない。そう見えるのは、感情を高ぶらせないようにしてきた結果だ。

 自分がクロだと知ってから、一層それは強まった。

「今は海を見て『ここに来て良かった』と思っているくらいはわかるけど」

「……十分わかっているじゃないか」

「ま、身内に無表情な人がいるから。あ、だからヒイロといるのが楽しいのかも」

 宮野は一人で納得していた。無表情な身内に似ていると言われて喜んで良いのか微妙だ。俺には両親以外の親類がいないから、身内というのがよくわからない。

 クロだから、感情を揺さぶられるものが少ない方が良いのかもしれないけど。

「……ジ! レイジ!」

 少女の声が波の音に混じって響いた。

 その声に、宮野は声が聞こえた方へ向いた。

 宮野零士。彼女は宮野を呼んでいた。

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