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10 心構え

「これから準備で忙しくなるけど、向こうに行くまではまた会いたいな。文通相手で近くに住んでるのは君だけだから」

「暇だから良いけど。文通は終わりか?」

「そうだね。メールの方が予定を合わせやすいし」

 結局俺から手紙を書くことはなかった。留学の話がこんなに早く進むとは思っていなかったけど、良い方向に進んでいる。これからは、監視されているメールでの遣り取りになる。

 メールを他人に見られる、か。別に見られても困らない。ほとんどが短文で、宮野からは「業務連絡かよ」と言われるほどだ。絵文字も顔文字も無く、文字だけしか使わない。だから、いつも通りで良いということだ。普段からメールや電話をしないし。連絡を取りやすいようにと親から携帯電話は持たされているけど、電話とメールが出来れば良いから流行りのタブレット型ではない。

 真木にはそのことは言ってあるから、メールについては心配されていない。

「そういえば、今日の全校集会のことを他の文通相手にメールで訊いてみたんだけど、そんなの無かったって」

「俺の友達は、近くの高校の奴に連絡取ったら集会はあったって」

「市内の学校だけかな? 何でだろうね」

 わかっているけど、わからないふりをしなければいけない。

 真木の行動は不自然に見えなかった。俺には真似できない。

 だから、真木から話題を振って、それに答えることに決めていた。まあ、いつも自分からは話したりしないから問題ない。

 真木がシロじゃなかったら。普通の友達でいられたんだろうか。そもそも出会っていなかったか。同じ生活圏にいても、すれ違って終わっていたんだろう。

 俺と出会わなかったら。真木は自分がシロだと意識しないでいられたのかもしれない。今でも、真木には俺の周りに単語が浮かんで見えているはずだ。

「ちょっと調べてみるね。君も何かわかったら教えて」

「ああ。友達も調べているみたいだから、訊いてみる」

「うん、よろしく。じゃあ、用があるから帰るね。時間がなくてごめん」

「こっちこそ、時間がないのに来てもらって悪い」

 別れる時も自然だった。監視者にも自然に見えていると良いけど。

これから真木も調べられる。監視も付くかもしれない。でも、俺みたいに四六時中監視されることは無いらしい。クロの交友関係は調べるけど、クロの数が多いからそこまで人手が割けないみたいだ。

 真木が過去にシロだと推測されるような行動を取ったのは、母親に漢字を訊いた1度だけだったらしい。それ以前は漢字を気にしていなかったようで、母親に聞いた後は訊いてはいけないことだと思って隠していたとのことだ。それから自分がシロであることを知り、留学を望んだ。

真木が留学するまで。日本を出るまでに、シロであることに気付かれてはいけない。

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