日常以上平穏未満
お気に入りに入れてくださった3名の方々!ありがとうございます!これからもマイペースに更新しますのでマイペースにお待ちください!
「お待たせしました!ワルティール銅貨190枚です。間違いのないようにお確かめください」
そう渡された袋は巾着のような口を閉じることができるタイプのものだ。
銅貨が200枚近く入っているため、動かせばジャラジャラと少しうるさい。
重さは銅貨が小さいのか、それほどではなかった。
「お確かめくださいって190枚をか?」
何分かかるかわかったものではない。
それに考えても見ろ。
居酒屋で財布ひっくり返して小銭を数えている客がいたらどう思う。
つまりはそういうことだ。
「……僕はリザさんを信じるよ」
「俺もだ」
同じ結論に達したのだろう。
茜も数えることを放棄していた。
「そうですか?」
こう言われることはないのだろうか。
リザがやや驚いたような声を出す。
「うん。大変そうだし。あ!この袋もらってもいいかな?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。初めての依頼を終わらせた方にサービスで配ってるんです」
「そうなんだ!ありがと!」
「どういたしまして」
「……そういや、さっき野次飛ばしてた奴らが言ってたランクってなんだ?俺たちにはないよな」
「それは明日、シーカーギルドに来てください。そこで説明しますので。シーカーギルドは鐘が5つ鳴れば開きますので、お間違えのないように」
「あぁ。わかった」
「ありがとう!リザさん!それじゃあ宿に行こっか。なんだっけ、木香の宿?」
「はい!出て左の初めの宿ですよ!」
「そういやそうだったな。じゃ、行くか」
「お世話になりました!」
「お疲れ様でした」
リザに別れを告げ外に出れば帰ってきた時よりも賑わいを増しており、通りの左右に屋台が並んでいるせいで少し狭くなっている。
「こりゃ急がねぇと泊まるとこ無くなるかもな」
「急がないと!剛毅!」
「なんだ」
「かたぐる「却下だ」えー」
「理由がねぇだろーが」
「2mプラス私の身長で看板を探しやすい!人ごみに紛れない!僕が疲れない!」
「俺が疲れる。却下。ほら、見えたぞあっこだ」
肩車してる姿を見られんのは恥ずかしい。
ならこっちのほうがまだ幾分楽だ。
はぐれないようにというのには賛成なので手をつなぐ。
「えっ!?わっぷ!」
低身長の茜にはこの人ごみは辛いものだったようだ。
宿の前に行く頃には髪がボサボサになっていた。
「うぅ……髪ボサボサ、服ヨレヨレ……お風呂入りた……あ!お風呂あるのここ!?」
「知らねぇよ」
扉を開ければ、なるほど。
木香ってのはこのことか、至るところに木屑のようなものが小さな皿に乗せられている。
ヒノキの匂いに似てるな。嫌いじゃない。
扉を開けてすぐ右にカウンターがあり、奥まで続いている。
左にはイスとテーブルがいくつか置かれており、数人の男女が各々座り夕食にありついていた。
どんなもんかあたりを見ていると白い三角巾をつけた少女がこちらにパタパタと走ってきた。
「いらっしゃいませ!木香の宿へようこそ!お泊りですか?」
話しかけてきたのは黒い髪を肩まで伸ばした少女だ。
歳は15、6と言ったところか。
明るい笑顔がまさに看板娘といった感じだった。
「あぁ、部屋は空いてるか?」
「はい!1部屋空いてますよ!」
「1部屋?」
その言葉にぴくりと眉が動く。
おいまさか。
「はい、今の時間ですと予約や既に入ってしまっている人でいっぱいいっぱいなんですよ。先ほどキャンセルがはいったせいで1部屋空いてるんです。あ!二人でも大丈夫ですよ!ベッドは広いですから!」
「ひとつしかねぇのかよ!」
「ひゃぅ!ごめんなさい!」
「こら!剛毅!初対面の子怖がらせちゃダメだよ!ひと部屋でもいいじゃん!安く上がるし!一緒に寝た仲でしょ!」
「そりゃ小学校の話だ!何年前の話持ち出してやがる!」
「泊まりたいんだけどいくらする?」
「あ、朝夜二食付きでワルティール銅貨60枚です!ベッドが少ないので!」
「はいよー。1…10…50…60…120っと、二泊ならこれでいいかな?」
「はい!」
「聞けや!」
茜のやろう!無視するたァいい度胸だコラ。
俺が実力行使する前に茜は既に泊まる分の代金を払い終えていた。
くそ!油断も好きもあったもんじゃねぇ。
「いいかい、剛毅」
話し終えたんだろう。
こっちを向いて腰に片手を当ててもう片方の人差し指を立てる。
「これからどれだけお金がかかるかわかんないんだ。少しでも節約したほうがいいでしょ?ベッドは大きいって言うから二人で寝ればいいし、不満なら君が床で寝たらいい」
「俺かよ!」
「そうだよ!こんな幼気な少女を床で寝かせようっての!?」
「そうは言ってねぇよ…!あぁ!わかったよ!それでいい!お前の言うことに従うよ!」
「ははは!なんだあんちゃん!その年で尻にしかれてんのか!」
「いや、あの年で尻に敷いてる嬢ちゃんがスゲェんだろ!」
「チゲぇねぇ!」
「「ハハハハハハ!」」
「うっせぇぞ外野!」
「コラ!剛毅!」
「アァァァァーー!うっせぇぇぇえ!」
結局泊まることになった。
ここまでありがとうございました!
実は書置きとかなくて終わりだけはイメージしてるんですけど途中が書きながら進んでるんですよね。これが結構楽しい。その場のノリで進むから!
収拾つかなくならないか少し不安です。