帰り道
お気に入りに一人!ありがとうございます!これからも執筆楽しんで書いていくので楽しんで読んでいってください!
パーカーは戦闘が終わったあとで着込んだ。
見れば穴が4つ空いている。
畜生、俺の一張羅が……。
既に太陽は山の向こうへ消え、あたりを薄闇が包み始めている。
門の方向がわからなくなるかと焦ったが、どうやら篝火が焚かれているらしい。
遠くにぽつりと二つ、炎が見えた。
暫く歩いていると、座り込んだ茜を見つけた。
草原なら大丈夫だと判断したんだろう。
幸か不幸か、襲われてはいなかった。
「茜」
「あっ!剛毅!…!?なにそれ!?狼!?」
茜から見れば狼の頭に挟まれて俺の顔がある奇妙な阿修羅像が見えることだろう。
「さっき襲ってきた奴らだ。換金出来るかと思って持ってきた」
「……大丈夫だった?」
心配そうに茜が覗き込んでくる。
「ハッ!俺を誰だと思ってやがる」
「知ってる。鬼の喧嘩屋、鬼塚剛毅でしょ……安心したよ。君が負けるところは想像もつかないけど、無事だとも思えなくてさ」
確かに、左腕を噛まれて無傷というわけにはいかなかったが、それは戦い方のせいだ。
有効打は受けていない。
「こんな雑魚に俺が負けるわけねぇだろうが、で、なんでお前はここに座ってたんだ?」
「…君が来るのを待ってたんだ「疲れたんだろ」うっ」
「やっぱりなぁ……お前貧弱だもんな。それでよく午後買い物に行こうって言えたな」
その言葉に茜が立ち上がって返す。
もうすでに日が沈んだが、それでも顔が真っ赤だとわかるくらいには近い。
「しょうがないじゃないか!デパートは休みながら回るつもりだったし!ここ草原で走りにくいし!走り続けるようなこともデパートだとしないし!それに……」
茜はそこで言葉を一旦区切った。
言っていいのか悪いのか、決めあぐねているようだ。
大体なんていうかは予想が付いてる。
「それに?」
「怖かったんだ!君がいないのが!こんな見ず知らずの場所で一人になるなんて嫌だったんだよ!君とは違って僕は弱いから!夜が怖いし、見ず知らずの地も怖いんだよ!剛毅以外に頼れる人がいないんだよ!」
これを言ってしまえばきっと俺の重荷に成り下がると、そう思って迷っていたんだろうな。
促したせいで言わせたようになっちまった。
まぁ、想定の範囲ないってやつだ。問題ない。
「そうだろうな。俺も多少はビビった」
「えっ?」
「歩きながら話す。あっこがいつまで開いてんのか分かんねぇしな」
「う、うん」
どうやら歩く位の元気はあるようだ。
後ろをさくさくと草を踏む音がついてくる。
「俺たちがここに来たとき、どこで何をすればいいのか全くわかんなかった」
「それは僕もだよ」
「いや、お前と俺は違う。あそこで俺ができることは恫喝、カツアゲ、喧嘩とまぁ、ろくなことじゃねぇ」
俺一人でここに来たならきっとそれくらいしか出来なかった。
それは口に出さないでおく。
後で立ち直られたときにいじってくるのは間違いないからだ。
「お前は人に話しかけることができた。そして今こうしてやるべきことがある。お前はお前の仕事をした。だから、俺は俺の仕事をする。お前が怖いならそいつをぶん殴ってやる。ここが怖いなら別の場所に連れて行ってやる。俺もお前を頼ってる。お前も俺を頼ってる。それでいいだろ」
「剛毅……」
その後は暫くどちらも無言だった。
ざくざくとさくさくと草を踏む音とどこかで静かに虫が鳴く音、風が耳元でなる以外の音はしなくなった。
「ねぇ、剛毅」
「んだよ」
「もしかしてさ、さっきの口説いてた?ちょっと僕獣臭いひとは……」
「ハァァ!?なんでそうなるんだよ!俺はなぁ!」
「アハハ!なーんてね!冗談だよ!でも、ありがと」
「……あぁ」
最後の声は少し涙混じりだった。
今まで口を開かなかったのは声の調子を戻そうとしていたからだろう。
そのことを追求するほど俺は野暮ではなかった。
ここまでありがとうございました!