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鬼の喧嘩屋  作者: 鉄紺
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ヤンキーと根性論

さて、買うもの買ったし帰ろうとすると、ダイガンさんが


「ガントレットをしまうにも袋がいるだろう。持っていけ。壊れたりしたらウチに来い」


と言って袋をサービスしてくれました。

早速剛毅がガントレットを袋に入れる。


「ありがとうございます!ほら、剛毅もお礼言って!」

「おう、ありがとよ」

「あぁ」


そう言うとダイガンさんはまた奥へと戻っていってしまいました。


「もう!」

「挨拶なんざあれくらいでいいんだよ。要は伝わればいいんだ」


適当なこと言って!

教師や老人、子供にも変わんない口調なんだから……。

きっと喋る蜥蜴とかが居てもおんなじように喋っちゃうんじゃないかな。

無口というか無愛想というか……。

偉い人にもそう言っちゃうかも知れないし、僕が見てないとね!


「ねぇ、剛毅。ちゃんとお世話するからね」

「何をどうしてその台詞が出てきたのか小一時間問いつめたいが、それは後でだな」

「え?なに?」

「これからのことを決めるぞ、まだ昼だがどうする」


上を見れば太陽が真上に浮かんでいるのが見える。

バッグを売ったからお金にも余裕が出来たし、街を探索するのもいいかも知れない……けど、その前に。


「病院に行こう」

「あ?どっか怪我したのか?」

「なに頓珍漢なこと言ってるのさ。僕じゃなくて君だよ、剛毅」


そう言うと、めんどくさそうというかそんな表情でぼやく。


「バレてんのかよ」

「何年一緒にやってきてると思ってるのさ。まぁ、気づいたのはガントレットをつけてた時だけどね。バッグを持たせて確信したよ」

「腕が折れてるかもしれないやつに何キロもするバッグもたせんのかよ」

「えっ!?折れてるの!?尚更急がなきゃじゃん!」

「折れてねぇっ!おい!話を聞け!」


近くにいる人に病院について尋ねると、ケガを治すなら教会にいけと言われたからお礼もそこそこに近くに見える十字架が刺さってる建物に直行した。

多分ここだよね!?


「こんにちわー!すみませーん!」


扉を開けて声をかけるとパタパタと女性が走ってきた。

ザ・シスターって感じの修道服を着た彼女は慌ててきた僕たちに対してもすぐに対応してくれた。


「あらあら、本日はどのようなご要件で?」

「剛毅のっ、えと、あの、この人の腕が折れたみたいで!」

「折れてねぇっつんでだろーが!いい加減落ち着け!」

「落ち着け!?これが落ち着いていられるかい!?大怪我なんだよ!?」

「だから折れてねぇって言ってんだろーが!」

「あのー、他の人の迷惑にもなりますのでひとまず奥へどうぞー?」

「あ、すみません。ほら、剛毅、診てもらうだけ診てもらおう」


奥はベッドと椅子が二つあって診察室みたいになっていた。


「えっと、ゴウキさん、でしたっけ。どうぞ、座ってください」


剛毅を椅子に座らせると、シスターは剛毅の腕に触り始めた。

触診?ってやつかな?


「あらぁ、見事な筋肉……」

「「………」」

「…こほん。えっと、痛みますか?」

「今はもうほぼ平気だ」


強がりじゃないといいけど。

昔から剛毅は隠し事をすることが多い。

大体のことは見抜けるけど、本当に大事なことはほとんど見抜けない。

普段分かるだけに、君は逆にわかりにくいんだよ!


「なるほど、欺術で少しずつ修復してるんですねー」

「えっ、剛毅はもう欺術使えるの?」

「いや、使えねぇよ」

「あらあら、それじゃあこれは無意識なんですかぁ……すごいですねえ」

「どういうこと?シスター」

「あ、申し遅れました。私はここでシスターをしているアンジェラといいます。お見知りおきを」

「あ、はい。茜です。こちらこそ」


うーん……なんか調子狂わされるなぁ……。


「それでアンジェラさん。修復っていうのは?」

「それはですね、よくシーカーや騎士の方々がやる方法なんですけども。根性論というやつです」

「「は?」」


予想外の言葉に疑問符が浮かび上がる。

なに?根性論だって?


「『俺がこの程度でやられるはずがない!』『まだ戦える!』『この程度かすり傷だぜ!』……そんな風に強がって自分は絶対に大丈夫だという虚勢ですか?そういうのに欺術が反応して本当にかすり傷になったりすることがあるんですよ。大抵の人は欺力が足りなくて致命傷のまま死んでしまうんですけどね」

「つまり……剛毅は今、根性で体を修復してるってこと?」

「はい。そうなりますね。無意識となるとすごい欺力ですよ。明日には治ってると思います」

「……人間辞めてるね剛毅」

「うるせー。んで?今日は寝てりゃいいのか」

「私が治すことも出来ますけども、お金が掛かりますよ?具体的には銀貨5枚頂きます」

「それは手痛い出費だなぁ……剛毅、我慢して治して」

「教会に入るまでのお前はなんだったんだよ……」

「あはは、お金は大事だけど剛毅も大事だからね」

「……」

「照れた?」

「照れてねぇよ」

「ふぅーん?」

「あらあら、まぁまぁ」

「チッ。帰るぞ、茜。シスター、邪魔したな」

「いえいえ、今度は怪我以外で来ることを祈ってますよ」

「大変お騒がせしましたー」

「いいんですよー。大事にしてくださいねー」


急に押しかけてもこの対応。うーん。大人だ。

とりあえず剛毅を休ませるために今日は休みにしようかな。

下手に今動いてまた変なのに捕まっても嫌だし。


「んじゃ、今日はもう宿屋でのんびりだね」

「そうだな。明日になれば欺術の話も聞けるだろうし、今日は無茶しなくていいだろ」

「幸い、剛毅には欺力?とかいうのがあるみたいだし、使えないということはないだろうね。僕にもあるといいけど」

「それは明日のお楽しみってやつだな……今か。鐘が三回鳴ったぜ」


音が聞こえてきたのはちょうどさっき出てきた教会からだ。

ここで鳴らしてるんだね。

改めて見てみれば十字架の下の方に鐘が見える。


「それじゃ明日のお昼過ぎまでのんびりしよう。明日の朝にまた森に行ってアクシデントに見舞われても困るし」

「そうだな」


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