思いの外
ついに動物らしくないものとの戦闘です。
戦闘シーンサクサク行き過ぎですかね?
宿に番蟲を部屋に置き、門番に挨拶して森に着く頃には太陽もしっかり顔を出していた。
それでもやはり森の奥は不気味なほど陽の光を通していない。
「やっぱり怖いなぁ……でも宿のためだ!頑張ろ!」
「ピンクのボールみたいなモン探せばいいんだよな」
「らしいね、番蟲は一匹しかいないからはぐれないように気を付ないと」
足元に絡む草を無理やり引きちぎって森の奥に入る。
しっかし、ルーキーやFランクは俺たちしかいねぇのか?今の今まで誰ともすれ違ってない。
森の中を暫く歩いていると、ヤブががさりと揺れた。
「きゃぁ!」
「なんだ?うさぎじゃねぇか」
飛び出してきたのは森に来る途中でも何度か見た一本角のうさぎだ。
俺たちに見向きもしないで飛び出していった。
「……なんだったんだ?」
「……さぁ?」
またヤブががさりと揺れる。
「こ、今度はなに?」
「……っ!?茜、下がれ!」
「きゃっ!?」
咄嗟に茜を突き飛ばした。
直後、茜のいた場所に棍棒らしきものが振り下ろされた。
入れ替わるようにしてそこに移動した俺は両手をクロスさせて棍棒を受ける。
振り下ろしてきたのは、赤い醜悪な生き物だ。
口は頬まで裂け、黄色い目はぎょろりぎょろりとせわしなく辺りを見ている。
顔の形は逆三角に近いだろうか?
頭の上には横に飛び出るように角が生えている。
身長は茜と同じくらいだ。
だが棍棒の威力は油断できないものだった。
ヒビは入っていないだろが、結構な威力を持っている。
そこらへんのチンピラが全力で殴ったよりもさらに強い。
当たり所が悪ければヤバかった!
「ご、剛毅!?大丈夫!?」
「あぁ!問題ねぇ!それよりなんだこいつは!?」
「Gyagyugyugyugyugyu!!!」
不気味な笑い声を上げて目の前の化物はこちらをじろりと睨めつけてくる。
その瞳に宿っているのは妬み、怒りなどの負の感情だ。
どんなやつなのか分からないがこちらに対して良い感情を抱いていないのは分かる。
「GyuuuuGGyaaaaa!!」
「あっぶねぇ!」
どうやら完全にこちらに狙いをつけたようだ。そこらへんの木をそのまま折ったような棍棒を振り下ろしてくる!
スピードは対したもんだが、いかんせん愚直だ。
横に回避して反撃……っ!?
「くそ!足場がっ!」
足を動かせば地面をのたくっている大量に生えた蔦のような植物が足に絡みついた。
そのせいで初動が遅れる。
無理だ、このタイミングじゃぁ、かわせねぇっ!
咄嗟に腕を十字にして棍棒を受ける。
棍棒が腕に当たった瞬間生々しい音をたて棍棒が砕け散った。
「Gyaa!?」
武器が砕けたことに驚いたのか、俺を潰せなかったことに驚いたのかは分からないが、化物から驚愕の声を聞く。
さて、運良く武器を消すことは出来たがこちらも無傷とはいかねぇ。
腕から響くような激痛が走る。
これは折れちゃァいねぇが罅ぐらいは入ってんじゃねぇか……?
無理に腕を使うことが出来なくなった。
かなりのハンデだぜ……こりゃあ。
「剛毅!?」
「心配すんな!問題ねぇ!」
とは言ったものの、どうすっかね。
獲物を失っても化物は逃げるということはしないようだ。
油断なくこちらを睨みつけてくる。
くそ、見たことねぇモン相手にすんのは疲れる。
ただでさえ足場が悪いってのに……何をしてくるかわかったもんじゃない。
「茜、傍から離れんなよ……」
「うん……」
さて……。
あちらも様子を伺っているのか、むやみには突っ込んでこなかった。
代わりにジリジリとこちらに詰め寄ってきている。
取り敢えず、普通に戦ってみるか…?
化物が射程に入った。
「オッラァッ!」
相手の背が低いのが幸いした。
先手を取れる上にあまり足を上げなくても顔を狙える。
顔面向けて喧嘩キックをお見舞いしてやる。
化物はそこまで伸びてくると思わなかったのか、避けることもせず攻撃を食らった。
「Gyaggyaaaaaa!?」
気味の悪い声を上げながらヤブの向こうへ消え
「Gyuuuaaauaa……」
「うわぁ!?」
「ヒィッ!?」
「おっと……誰かいたのか。すまねぇ!大丈夫か?」
誰かに当たってなければいいのだが、茜に付いてくるようにいい、ヤブを抜けるとそこには木に激突して動かなくなった化物と、
「うわぁ!?」
「ヒィッ!?」
人間のような声を出して化物を見ている猿だった。
ここまでありがとうございました!