スタートライン
ようやくシーカーとして、スタートラインに立ちました。
これから事件に巻き込まれたり、依頼を完遂していきます。
「剛毅!大怪我させてない!?殺してない!?」
「俺の心配をしろ!」
木香の宿に帰ってきた途端にこれだった。
「剛毅が負けるわけないじゃん!」
「まぁ、負けねぇけどよ」
「それで!?」
「殺してねぇよ!骨も折ってねぇ!これでいいか!」
「うん。よかったぁ。いきなり逮捕とか嫌だからね僕」
茜は安心したというようにベッドに座り込んだ。
その様子を見ると少し申し訳ない気持ちになる。
「まぁ、なんだ。心配かけたな」
「剛毅が居なくなったら困るのは僕なんだから気をつけてよね!」
……照れ隠しだろ。だよな?
「はいはい。気をつけますよ……なぁ、茜」
アーサーとの会話。
これだけは話しておかないとな。
いずれ向き合う問題だ。
「なに?」
「ここが、地球じゃないと言ったらどうする?」
「え?何さ、いきなり」
「薄々感づいてんだろ。見たことねぇ生き物やら分かんねぇ植物、欺術とかいうとんでも現象。こんなもん地球にあるかよ」
「……」
「それにな。聞いてきたぜ。ここの警備隊長に」
「……なんて?」
「地球、または日本、アメリカ、聞いたことはないかってな……聞いたことないってよ」
「……なんとなく僕もわかってたよ。日本語通じるとか色々変なこともあるけど、ここが僕たちが知っている世界じゃないっていうの。でも信じたくなかったなぁ。歩くなり、船に乗るなりで帰れる場所だったら、どれだけ良かったか」
「茜。俺たちやっていけるか?」
「………わかんない。でも、今日生きてこれたんだから明日も生きていけるよ。まぁ?僕と違って剛毅はその場その場で享楽的に生きてきたんだろうから?大丈夫でしょ」
「お前なぁ」
「まぁ、僕もあの街に未練はないし、いいよ。ここの服が微妙なのと、宿暮らしなのがあれだけどね。とりあえずの目標として……うーん。生活を安定させる。かな。まぁ、とりあえず寝よう!もう夜だし!」
「……あぁ」
「今回は特別に僕の隣で寝てもいいよ!?剛毅が働き手なんだから!」
「わかった」
「なんだい?ヤケに素直だね?」
「知ってるからな」
「何を?」
「お前がめちゃくちゃ喋る時は、緊張してる時か不安な時だけだってことだよ」
「……僕は大丈夫だよ」
「……そうだな。お前は大丈夫だ…寝るか」
「うん」
俺が守るから、なんて臭いことは言わない。
お休みと一言言葉を交わすと二人でベットに入った。
「なんで一緒のベッドなんだよ……」
「まぁまぁ、冷えたらいけないし!」
まぁ、今日くらいはいいか。
ベッドの半分を茜に譲り眠りに就いた。
朝になれば茜は既にベッドから起き上がっていた。
でかい鐘の音が聞こえてきた。
これか、昨日話に出てた鐘って奴は。
窓から差し込んできた光に目を細める。
「おはよう、剛毅」
「あぁ……そういやぁ宿で寝たんだったか」
「うん。朝ごはんはもう頼めるみたいだから近くの井戸で口をゆすいでくるといいよ」
「あぁ……」
どうやら宿の裏庭には井戸があるようだ。
鶴瓶を巻き上げれば透明な水が入っている。
触れれば痛いほど冷たい。
とりあえず口をゆすいで顔を洗う。
「ふぅ……目ェ覚めた」
生えてきた無精ひげをぞろりと撫で宿に戻る。
なんか剃るもんも買わねぇとな。
茜は既にテーブル席に腰掛けていた。
「何食べる?」
「何がある」
「サンドイッチか目玉焼きとパン」
「サンドイッチ」
「僕も、すいませーん!サンドイッチ二つでー!」
注文して5分もすれば頼んだものが届けられた。
前回頼んだものは覚えてくれているようで果実水が添えられている。
「じゃあ今日の予定を確認するよ」
「あぁ」
サンドイッチに挟んであるのなんの肉だ?牛でも鳥でもないな。
結構うまい。
「ご飯を食べたらシーカーギルドに行ってランクについて聞いてから依頼を受けて今日の宿代を稼ぎます」
「あぁ」
昨日食ったうさぎと一緒か?うさぎってどうやって捕まえんだ。弓か?
「あぁ、その前に袋とかいろいろ買わないとね!」
「あぁ」
狼程度なら殺せることがわかったが、どこまで通用するのか……。
「……聞いてる?」
「あぁ」
出来ることなら欺術も習得したいところだが……。
「……サンドイッチ美味しいね」
「あぁ」
「……もぅ!いいよ!お仕事行くよ!」
「あ?あぁ。そうだな」
急に大声をあげた茜に引っ張られるがまま、シーカーギルドについた。
カウンターにはリザが座ってこちらを見ている。
居酒屋のほうはまだ朝ということもあって昨日のように誰かが溜まっているということはなかった。
「おはようございます!リザさん!」
「おはようございます、アカネ様、ゴウキ様」
「昨日の話聞きに来たぜ、ランクってのは何なんだ?」
それを聞けばリザはニッコリと微笑んだ。
「初めての依頼を達成されましたので説明します。元々シーカーギルドにはAからFまでのランクが存在します。依頼を達成するほど上がって行き、最終ランクはAです。と言いましても、登録すればすぐにFから始められるというわけではありません。本人には内緒で試験を行うんです。周りに知られすぎて一種の形骸となってしまいましたが、それでも無茶をする人を減らすために今も続けている制度ですね。というわけで、アカネ様とゴウキ様は今日からFランクとして依頼を受けていただきます」
「なるほど、そういう話だったのか」
「じゃあ今日からが本当のシーカーとしての初日ってことだね!」
「そういうことになります。Fランクの依頼は左手のコルクボードをご覧下さい。依頼のランク欄にFと書かれているものがそうです」
「わかった。これから頑張るからね!」
「ランクアップ、楽しみにしています」
ここまでありがとうございました!