お世話になりました
お気に入りにしてくれた5人の方々!ありがとうございます!これからも更新続けていきますのでご愛読よろしくお願いします!
「ここだ。おい!サーシャ!けが人だ!」
「はっ!はい!只今!」
どうやら着いたみたいだ。
俺を連れてきた男が大声を上げると奥で小さく女の声が聞こえた。
「こいつだ。治せるか?」
「はい。大丈夫です。【彼の者の傷を直せ】」
女が呟くと体の痛みが一瞬にして消えた。
これも技術か。
「はい、もう大丈夫ですよ」
「あぁ、ありがとよ」
元に戻った視界であたりを見てみれば、金髪の男女がこちらを気遣わしげに見ていた。
どちらも20歳くらいだろう。
「心配かけたか?もう大丈夫だ」
「そうか、では話を聞きたい。ついてきてくれ」
男に言われるがまま着いて行くと机と椅子だけが置かれている個室に案内された。
「では話を聞こうか。あぁ、あの気絶している二人にもまた別に話を聞くから安心してくれ。それで、何があったんだ?あぁ、いや、その前に名前を聞こう」
「俺の名前は鬼塚剛毅だ。俺の連れがナンパされてた。離せと行ったら喧嘩を売って来たんで買ってやったんだ。まぁ、先に手を出したことは認める」
「そうか。連れというのは?」
「茜って名前の女だ。木香の宿に二人で泊まっていて今は銭湯にいるはずだ」
「それで銭湯に行く途中でという訳か」
「そういうことだ」
「なるほど。先に手を出したのは褒められたことではないが、自分の女を守るためというのは情状酌量の価値はあるな」
男がニヤニヤしているのを見て、はっと気づく。
「いや、そんなんじゃねぇよ!」
「ほぅほぅ。まだ片想いか?」
「だからよぉ!」
「わかってるわかってる……そういえば俺の名前を告げていなかったな。俺の名前はアーサー。ここの警備隊長を任されている」
そう言って腰の剣をカチャリと鳴らしてみせた。
何か特別なものなんだろうか?
「へぇ、その年で結構いいとこについてんじゃねぇか。エリートってやつか?」
「まぁな。これで執務がなければ完璧だった。さて、話はわかった。後日呼ぶかもしれんからな。何かギルドに所属しているか?」
「あぁ、シーカーギルドに入ってるぜ。ほら、カードだ。これになんかあんのか?」
シーカーギルドのカードを見せるとアーサーは微かに笑った。
「は、ルーキーが欺術使いを倒したのか。将来有望だな」
そう言うとアーサーは自分のカードを取り出し、俺のカードを叩いた。
「なにしたんだ?」
「俺の権限でな。ワルティールに限り、あらゆるギルドカードの位置を把握することができるんだ。まぁ、こうやって合わせたカードだけだがな。すぐに出ていく予定もないんだろう?」
すぐにアーサーはカードを返してくれた。
「あぁ。だが、外に行くこともある」
「そりゃシーカーだからな。そこらへんは配慮しよう。もういいぞ。帰って安心させてやれ」
こいつは誤解してんな。
顔がニヤついてんぞ。
「わかった。だが、その前に聞いておきたいことがある」
「なんだ?」
「欺術ってなんだ?」
「は?お前欺術を知らないのか?」
「あぁ」
知らねぇよあんなトンデモ現象。
「随分と田舎から来たんだな。わかった。簡単に説明しよう。欺術っていうのはルールを騙す力だ」
「ルールを騙す?」
「あぁ。例えば、ここにワルティール銅貨がある」
そう言って財布から取り出したのはここでは見慣れた銅貨だ。
「こいつを上に弾けば、いずれ落ちてくる。当たり前だな」
「あぁ、当たり前だ」
重力があるからな。
「だが……【浮け】」
キィンと澄んだ音を響かせて弾かれた銅貨は空中で回転したままとまった。
「……はぁ?」
「いい反応だ。俺も初めて見たときは疑問でいっぱいだったよ。まぁ、8歳の時だったがな」
8歳くらいでこれ習うのかよ。
これがあるんだったらマジシャンは全員仕事失うぜ。
「なるほど。ルールを騙すってそういうことか」
「あぁ、風が吹かない場所で風を起こす。乾燥した地に雨を降らせる。物を飛ばす。作り出す。何でもアリだ。ほかの生物の体を操る以外はな。例えば【ゴウキは右腕を上げろ】……こういってもお前は強制的に腕が上がらないわけだ。だが、【風よ。彼の者の右腕を巻き上げろ】」
その言葉を言い終えた瞬間、俺の右腕に風がまとわりつき、腕を上にはね上げた。
おい。
「こういったような間接的なことならできる」
「本当になんでもできるんだな」
巻き上げるだけで、巻き上げたあと風はすぐに消えた。
「まぁな。だが、欺術には個人の限界がある。例えば【ワルティールよ。潰れろ】」
「おい!」
いきなり何言ってんだ!?
「いや、大丈夫だ。俺の欺術は潰れていない町全てを潰すほどにはルールを騙せないんだ。これが限界。だが使い続ければ騙せる範囲は増えるぞ。使い方はシーカーギルドで学ぶことが出来るだろう。大体は学校で社会ルールと一緒に使えるように教育されるはずだが」
「あいにくとウチのところでは必修ではなかったらしくてね」
「本当に田舎から来たんだな」
「まぁ、ね」
「ほかに気になることはあるか?」
そう言われると気になることがいくつかある。
「あぁ、そうだ。さっきのサーシャ?が俺の傷を治したのはほかの生き物の体を操ったことにならねぇのか?」
「なる」
「おい!」
さっき操れねぇって言ってたじゃねぇか!
「類稀なる才能ってやつか?時折他人を操るレベルの欺術を扱える奴が生まれてくるんだよ。まぁ、そこまで強くは命令できないらしいが、他人の傷を治すくらいあの通りというわけだ」
「そこには一般人はたどり着けないのか?」
「死ぬまで練習してもできるのは死ぬ間際だと言われている」
「はぁ、才能ねぇ……」
「ほかに質問はあるか?」
「あぁ、ギルドのランクってなんだ?」
これは気になってた。
「それは明日シーカーギルドで聞いてみるといい。多分教えてくれるはずだ。それに、一応俺の口からは言えんことになっていてな。ギルドにはギルドのルールがあるということだ」
「そうか。あぁ、最後に」
「なんだ?」
「地球、または日本、アメリカ。聞いたことはあるか?」
ここまでありがとうございました!