俺にとってのいつもの
兄の引越しの手伝いしてて更新が遅れました!すみません!
「おい、モテモテだな茜」
「あ!剛毅!見てないで助けてよ!」
どうやら手を掴まれているせいで逃げられないようだった。
「あ?誰だテメェ」
「そいつの連れだ。離してやれよ」
「あぁん?いまお嬢ちゃんは俺たちとお話してんだよ。連れだがなんだか知らねぇがあっち行ってな!それともあれか?このシーカーランクDの俺様達とやろうってのかぁ!?あぁん!?」
いや、だからそのランクってなんだよ。
喋ると言うことは自慢出来ることなんだろうが、全くランクについて知らないため強さが分からない。
答えに詰まったのを怯えたと見たのか、男ふたりが更に調子に乗る。
「ギャハハ!怯えて声も出せねぇってか!?笑えるぜその図体でよぉ!」
「帰って枕を涙で濡らしとけ坊ちゃん!ギャハハハハハ!」
とりあえず。
「うるせぇ!雑魚がァ!」
先制で一発だ。
(知り合いに)手を出したのはあっち。
喧嘩を売って来たのもあっち。
俺は買っただけ。
よし、理論武装完了。
あとはぶちのめすだけだ。
俺の右ストレートは茜の手を掴んでいた男の顎にぶち当たった。
「アガッ!?」
「あ!おい!てめぇ!よくもやりやがったな!」
いい感じに入ったのか、一撃で目を回したようだ。
激昂したもうひとりが剣を抜く。
ここの住人喧嘩早すぎやしねぇか……。
人のこと言えねぇけど。
「茜。先行ってろ。もう絡まれんなよ」
「う、うん……」
とりあえず自衛手段を持たない茜をここに置いておくのは危ない。
いつ刃がそっちに行くか分かんねぇからな。
またなにかに引っかからないように心の隅で祈る。
前の酔っぱらいとはまた違う顔の赤みが顔にさしているのを見る感じ、周りに何があろうが剣を振ってくるだろう。
勘弁してくれ。
「よそ見するたぁ随分余裕だな!」
「事実、余裕だ。雑魚が!」
顔が真っ赤というのは間違いないようで、酔っぱらいと何ら変わらない大振り。
剣は振り下ろされ、地面を抉った。
ワンパターンだな。また剣を弾き飛ばして終わりだ。
「あばよ!」
そして俺が野郎の手を蹴りあげようとした時だった。
「【風よ!逆巻け!】」
「ぐっ!?」
突風が正面から吹き付け、バランスを崩す。
「なんだ…お前……なにかしたか?」
野郎が叫んだ瞬間突風が吹いた。
偶然ならそれでもいいんだが……。
剣を握り直した男はやや落ち着いたようだ。
まるで自分の優位性を思い出したかのような。
そんな表情だ。
隠し玉を持ってる奴や増援が来るのを知ってる奴が同じ顔をしていた。
「お前、欺術を知らねぇのかぁ?」
「あぁ、知らねぇな」
「は!ギャハハ!それで俺に挑んできたわけ!?腹いてー!」
反応から見てこいつがなにかしたのは間違いない。
もう一度だ。何をしたのか確かめさせてもらう!
「何がおかしい!ヘナチョコな剣振りやがって舐めてんのか!?」
「うるせぇよ!欺術も知らねぇくせに生きがるなよ!【炎よ!燃やせ!】」
また男が叫ぶ。
今度は炎?
嫌な予感がして全力で右に飛ぶ。
「惜しいっ!もう少しで火達磨だったってのによぉ!」
数瞬あとに俺が居た場所が炎に包まれた。
どこから火を出したんだ?
「ギャハハ!回避するので精一杯かよ!【炎よ!奴を燃やせぇ!】」
「ッ!」
咄嗟に右に避ける。
が、
「読めてたぜぇ!」
クソッ!燃やせるタイミングは自由なのかよ!
「ガァアアァァア!」
地面を舐るようにして生まれた炎は俺を包むようにして体にまとわりついてきた。
クソ!このトンデモ現象がっ!
息すらつけねぇっ!肺が焼かれそうだ。息を止めろ。
目も開くなっ!
どうやら燃やすことができる時間は短いようだ。
時間にして5秒くらいだろうか。
急に火が消えた。
全身が消して軽いとは言えない火傷を負っているのが分かる。
風や衣擦れすら痛みに感じる。
これは風呂には入れねぇな……。
目を開けばニタニタと嫌な笑みを浮かべて剣を担いでいる野郎が居た。
「どうよ?欺術の火の味は?」
「……最悪だ糞が」
勝利を確信しているのだろう。
手を出してこない。
確かに、体を満遍なく焼かれた。
体は動かすのが辛いほどだが、
「…れねぇ……ねぇ」
「あん?なんだってぇ?」
野郎が聞き耳をたてて俺に近づく。
はっ!余裕かましてんじゃねぇよ!
「殴れねぇほどじゃねぇって言ったんだよ!雑魚がァ!」
痛みを無理やり押さえつけて顔面をぶん殴る。
動けると思っていなかったのか、モロに拳を受けた男はそのまま倒れた。
「クソ痛ェ……」
「おい!お前ら!そこで何をしている!」
誰かが通報でもしたのか?
路地で喧嘩していたときによく聞いたセリフが聞こえてくる。
あぁ、目が痛くてよく見えねぇ。
「何って……喧嘩だ」
「喧嘩……ねぇ。詳しい話は詰所で聞こう。おい!伸びてる奴らも運んでおけ!」
「「「ハッ!」」」
「では一緒に来てもらおうか。そのケガは?」
「欺術で焼かれたらしいぜ。かなり痛いが歩けないほどじゃない……」
「そうか。では詰所まできてもらう。その傷を治すためにもな」
「わかった……あぁ、ここの近くの銭湯に茜って奴がいるはずだ。そいつに先に戻っているように言っておいてくれねぇか」
茜には悪いが、一人で戻ってもらうことになるな。
「あぁ、わかった。聞いたな?お前がやれ」
「ハッ!」
「随分と…統制が効いてるな」
「効いていなくては使い物にならん。こっちだ。ついてこれるか?」
「あぁ」
こうして俺はここに来て初めて警察の世話になった。
茜が聞けば呆れてモノも言えねぇだろうな。
ここまでありがとうございました!