一話
処女作です。めちゃくちゃ短いです。指摘があればいってください。
.No Title
真っ白な世界。わたし以外のほぼ全てが白でできている。例外は文字のみである。文字のみが所謂黒でできている。真っ白な本棚が並び、歩いていくとやがて白い壁にぶつかる。天も地も白だ。そんな世界でもわたしは方向を見失わない。なぜならある一枚のかべから管が伸びており、わたしの手首に繋がっている。わたしの形態から推測するに、おおよそ人間に近い生物であることに間違いはない。しかし、この手首の管だけは生物的に自然と出来上がったものではなく、他者の何かしらの意図が働いた人工物であった。おそらくこの管でわたしに栄養を送り、排泄物を吸い取っているのだろう。
わたし以外にあるものといえば表紙が真っ白な本しか無かったので、わたしはもっぱら読書に明け暮れていた。やはり最初は謎の暗号の羅列に四苦八苦したが、徐々に内容が頭に入ってくるようになった。今ではこの部屋にあるあらゆる文字を読むことができる。
そうやって読書をしていく中でわたしは人間について多く学んだ。文明や文化、歴史に科学。人間の醜さやそこに見える美しさも。わたしは人間をこの目で観てもっと人間を知りたいと思った。また人間を知るに連れてわたしは一体何なんだろうかとも思った。この世界を抜け出すほかその答えはないのだろうか。