例えばの話
例えばの話だが、私が誰かを好きになったとして。
それを友人に話したとしよう。
友人は目を輝かせてその相手を問い質すのだろう。
友人の勢いに負けて私が素直に相手の名前を言ったとして。
次に友人はその人を好きになった理由を聞いてくるのだろう。
そして私はーーーーー
きっと何も言えないのだ。
「人を好きになるのに理由なんて必要ない」とはよく言ったもので。
私もそれに同意しよう。
それは正に正論だ。
そう、人を好きになるのに理由なんて必要ない。
必要である訳がない。
格好良いから、可愛いから、頭が良いから、
スポーツが出来るから、趣味が合うから、知り合いだから。
理由なんて何処にでも転がっている。
そう言う人も居るかもしれない。
だけどそれは、只の後付けではないだろうか。
その人を好きになった後で初めて気が付き、理由に付け足したものではないのだろうか。
例えばの話だが、本当は人は理由なんて無くて、必然にその人を好きになるのではないか。
所謂、運命の人というヤツだ。
人は、生まれる前からただ一人を好きになるように出来ているモノではないのだろうか。
大勢の人間の中からその人だけを選ぶように出来ているとしたら。
その人でしか駄目なのだとしたら。
もしかしたらその人も自分を選ぶかもしれないし、他の人を選ぶかもしれない。
また、別の人がその人を選ぶかもしれない。
そう考えたら、恋愛なんてつまらないものなんだろう。
選ぶか選ばれるか、それだけの事なのだ。
だから、私が選ばれなかったのも、あの子が選ばれたのも、彼があの子を選んだのも、全ては必然なのだ。
もしかしたら、私なんかを選んでくれる人が居るかもしれない。
でも、私にはその人を選ぶ事はできない。
だって、私は彼を選んだのだから。
彼は私の運命の人だから。
彼の全てが大好きだから。
選んで欲しかった。
私だけを見て欲しかった。
大好きだった。
あいしてたよ。
あいしてたの。
だから、バイバイ。
そうそう、これは例えばの話だったね。
じゃあ、
此処で私が飛び降りたらどうする?
はい、ある失恋のお話でした。
恋愛もロクにできない奴が調子に乗りました。
すいません。
まあ、例えばの話ですから、適当に流しちゃってください。
なかなか掲載できなかったのは、連載とこの小説、同時に書こうとした無駄にチャレンジ精神高い馬鹿が此処に居るからです。
誠に申し訳ございません。
連載のほうも大分出来ていますので、そちらも見てやっください。