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あざと可愛さ100%の私 vs 天然たらしの男装の麗人! 〜落とすつもりが返り討ちでオーバーキルってどういうことですか?〜  作者: 初摘みミント


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6/8

距離をおきたいVS距離を縮めたい


「…最近、おかしいのよ。何かが絶対におかしいわ」


私は学園の噴水前で真っ赤になった顔を冷やしていた。

原因はさっき廊下でアルバとすれ違った時のことだ。

彼女は私の横を通り過ぎる際に微笑んで言った。


「やあ、リリィ。今日の髪型、すごく可愛いね」


…それはなんてこともない聞き慣れた褒め言葉の一つ。

いつもなら内心当然でしょ!と思いながら、あざといスマイルで謙虚に返せるはずなのに。

何故なのか。

私は心臓が跳ねすぎて返事すらできずに逃げだしてしまったのだった。


(サキュバスが人間に、しかも女子にドキドキしてどうするのよ…っ!?)


そんな私の前にそっと一人の男子生徒が近寄ってきた。

私が彼の気配に気付くと、彼は後ろ手に隠していたものを差し出しながら言った。


「あの、リリィさん! ずっと好きでした! これ、受け取ってください!」


差し出されたのは一通のラブレター。

かつての私であれば、こんなときは“魅了”の魔法を少しだけ乗せて彼を私の忠実な下僕に変えていたはず…なのだが…。


「ええと、私は……」


何故か言葉が出てこない。

彼は健気に私の言葉を待っている。

どうして?

こんなに忠実な人材もってこいでしょ?

私が迷っていると違う声が飛んできた。


「リリィは今、忙しいんだ。ごめんね?」


突如、私の背後から伸びてきた腕がそのまま私の肩を抱き寄せる。

振り返らなくてもわかる。

この石鹸の香り。

温かくて大きな存在感。

私は彼女の名を呼んだ。


「アルバ…?」

「やあ、リリィ」


アルバはいつものように完璧な“王子様”の微笑みを浮かべていた。

それから、私を自分の方に更に寄せれば、そのまま男子生徒に向き直る。


「申し訳ないけど、彼女は私と“特別な約束”があるんだ」


男子生徒はびくっと肩を揺らす。

…なんだか肩を抱く手の力が少しだけ強いような?

それから、真意を確かめるような彼の視線に私は指を口に当てながら照れたような、困ったような表情を浮かべて言った。


「そうなの。あなたの気持ちは嬉しいんだけど…アルバも来ちゃったから、また今度、ね?」


私がそう言えば彼は何かを盛大に誤解したかのような顔をして走り去っていった。

あれれ?なんか思ってた反応とは少し違うような…?

そして、残されたのは私とアルバーーー彼女のみだ。


「…リリィ」


二人きりになった途端、アルバが私を覗き込んできた。

何故だろう。

その瞳にはいつもの余裕がない。


「最近、私を避けていない?…私が何か嫌がることをしたかな?」


捨てられた子犬のような瞳をうるうるとさせながら、彼女は私を見つめる。

その目にきゅんとした自分の心臓を無視しながら、私は慌てて訂正した。


「ち、違うわよ!避けてなんて…ただあなたの顔を見ると、最近はなんだか調子が狂うっていうか…!」

「調子が狂う?」


アルバは私の髪をそっと撫でた。

その指先が震えていることに私は気づいてしまった。


「…実は私もなんだ。最近はリリィが避けるから…せっかく仲良くなれたと思っていたのに、私、寂しくて…」


彼女の瞳が切なげに揺れる。

それから、アルバははっとして言った。


「そうだ。お互いにまだ仲良くなれたばかりだし、慣れればその“調子が狂う”のもきっといつか治ると思うんだ。それまでずっと一緒にいるってのはどう?」

「…へ?…ずっと一緒に…とは?」


突然の彼女の提案に困惑する私をよそにアルバは私の手をそっと包み込んだ。

その手から伝わってくる彼女の体温を意識すれば、先程、ようやく噴水で冷やしたばかりの顔が再び熱をもち始めるのをひしひしと感じる。


「そのままの意味だよ。登下校も休み時間も放課後もずっと一緒。なかなか名案だと思わない?」


彼女の唇が悪戯っぽく弧を描く。

珍しい彼女の表情に心臓がうるさくて言葉が出ない。

どうにか、やっと出てきた言葉は…。


「…っ、もう!好きにして!」


私はぷいっと顔をそむけながらも繋がれた手は振り払えなかった。

そんな私を見てアルバは満足そうに微笑みを深くする。

人類を虜にするはずのサキュバスの私がたかが一人の人間ーーーそれも同性にペースを乱されているだなんて…。

こんなの絶対に何かの間違いに決まっている。

ーーーでも。


(…このまま心臓が壊れるまで慣れなかったら、どうすればいいのよっ!?)


夕暮れ時のチャイムが遠くで鳴り響く中、私は自分の心臓が破れる方が先か慣れる方が先かを考えるかより彼女の一挙一動が気になって仕方なかった。

白旗をあげるまでそう遠くはないなんて、この時の私は絶対に認めないだろうけれど。



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