まさかの真実
「…今日こそ…今日こそっ!アルバの化けの皮を剥いでやるわ!」
時は深夜。
場所は学生寮。
私はサキュバスの特性を活かして霧のように姿を消し、アルバの個室に忍び込むのだ。
昼間の屈辱(?)を晴らすには寝込みを襲って精気を一気に吸い、彼を私なしではいられない体にさせてやるしかない。
(こ、こんなことするのは初めてだけど…っ!私だってサキュバスだもの!できるはずだわ!…それに、眠っている時ならあの天然たらしなあいつもなす術ないはず!)
こそっと監視の目を掻い潜り、アルバの個室へと忍び込む。
月明かりが差し込むベッドの上でアルバは静かに寝息を立てていた。
制服を脱いで、ゆったりとした寝着に身を包んだ彼はいつもより少し幼く、そして…ひどく艶っぽく見えた。
「ふふ、無防備ね?…いただきます」
私は彼の上に跨がると、その首筋に顔を寄せた。
サキュバスの吸精は肌と肌が触れ合うほど効率が上がる。
私は彼の寝着のボタンを一つ、二つと解いていきーーー
「…あれ?」
そんな私の指先に触れたのは鍛えられた胸板…ではなく、きつく巻かれた白い布。
そうだ。
これは、サラシだ。
そして、問題はその下にある。
男性には絶対に存在しない…柔らかく、しなやかな曲線。
「…え?うそ…ちょっと待って?」
私を混乱する頭で思わずそのサラシの上から確かめるように手を置く。
馴染みがある感触。
なんなら、私より大きい分柔らかいかもしれない。
「…んっ…?リリィ……?」
不意に彼ーーーもとい、彼女から熱い吐息が漏れた。
緩やかに目を開けたアルバがぼんやりとした瞳で私を見上げている。
寝起きの、少し潤んだ、無防備な瞳。
「こんな時間に…どうしたんだ?私のベッドで…。あぁ、もしかして、また寂しくなったのか?君は本当に甘えん坊だな」
「…ま、また、とは?ち、違うの!これは、あの…っ!」
逃げようとした私の手首を夢うつつなアルバが優しく、けれど、逃げられない強さで掴んでくる。
そして、そのまま私を引き寄せて、あろうことか自分の胸元へ私の顔をぎゅっと抱き寄せたのだ。
「…いいよ。気が済むまでここにいて」
彼女の心臓の音が聞こえる。
どくん、どくん と力強く、しかし、どこか優しい鼓動。
そして、鼻腔をくすぐる、香水ではない。
ーーー女の子特有の、甘くて柔らかな匂い。
(…女の子。……アルバって、女の子!!?)
衝撃の真実。
通りで私の魅了が効かない訳だ。
しかし、それ以上にショックだったのは相手が女の子だと確信した瞬間でも、私の心臓は今まで通り激しく跳ね上がったことだった。
(なんでドキドキしてるの?私、サキュバスなのよ!? 女の子を食べてどうするのよ…っ!?)
私がその事実に未だ混乱している最中、アルバは私の背中を大きな手で…否、女の子にしては大きな手でゆっくりと撫でる。
その手があまりにも心地よくて…。
私は心の中で答えの出ない自問自答を繰り返しながら彼女の胸元に顔を埋めたまま動けなくなってしまった。




