再戦にして敗戦
…結局、あの後の私はアルバにお姫様抱っこされたまま保健室まで強制連行された。
途中、廊下ですれ違う女子生徒たちの殺意の視線が痛いのなんのって…。
…あれは私の作戦で、私が彼を誘惑するはずだったのにどうしてこうなったのだろう?
私はちやほやしてくる男子生徒に囲まれながら心ここにあらずで考える。
振り返りは大切だ。
そんな中、男子生徒の壁が進んで開かれた。
不思議に思ってそちらを見れば、そこには元凶であるアルバの姿があった。
「やあ、この前は大丈夫だったかな?」
どうやら心配して声をかけに来たようだ。
(魅了…されてきたわけではなさそうね)
私はそこではっとしてあざといスマイルを作る。
気を抜いていた。
いけない。
気を抜いてはだめよ。
モテの道は厳しいんだから!
そんな私に彼は余裕の王子様スマイルである。
(…くっ、負けないわよ!こっちはあざとい秘技“上目遣いの潤み目攻撃”よ!)
私はきょるんとした瞳で恥じらいながら、アルバを見上げた。
恥じらう乙女ほど可愛いものはない。
可愛い私が恥じらうんだから、それはもう超絶可愛いに決まっている。
「…私のこと、覚えててくれただけでも嬉しいのに心配まで…?リリィ、嬉しい…♡」
私はわざとはだけさせた襟元を抑え、熱っぽい視線を彼に送った。
まわりの男子生徒はおおっと声をあげた。
これだ。
これならアルバだって「当たり前さ。君には僕がいるよ」とか何とか言って、私の毒牙という名の魅力にやられるはず!
「元気そうなら何よりだよ」
彼はそれだけ伝えて、にっこりと微笑む。
あ、あれ…?
私は拍子抜けした。
その反応は何…?
私は頭の中でぐるぐる考えた。
(そんな反応されたのなんて初めてで…どうしたら良いのか分からないんだけど…っ!?)
私はどうしようもなくて、思わずぽつりと言葉が漏れた。
「そ、それだけ…?」
はっとした私がアルバの反応を見れば、アルバは不思議そうに小首を傾げていた。
その仕草すら計算され尽くしたモデルのように絵になるのが余計に腹立たしい。
「…ああ、そうだ。これはお近づきの印に」
そう言うと、アルバはポケットから可愛らしいラッピングが施されたキャンディを取り出し、私の手に渡した。
ぽかんとしている私に気付いていないのかアルバはマイペースに続ける。
「君、いつも私のことを見ていただろう?それで… 仲良くなりたいと思ってくれてるのかなって。…これからもよろしくね、リリィ」
そう言って、彼はまたあの“全人類を味方につける笑顔”を残して去っていった。
残された私と取り巻きの男子生徒。
手のひらのキャンディはほんのり彼の体温で温かかった。
「…何がよろしく、よ。私の計画はまだまだ始まったばかりなんだからね…っ!」
また顔が熱い。
鏡を見なくてもわかる。 今、この学園で一番“チョロい”のは間違いなく私だった。




