学園一のモテ女VS学園一のモテ男
私の名前はリリィ。
私は常に一番だった。
どんな一番なのかって?
外見?
それは私が一番で当たり前だけど、見た目が良いだけじゃだめなの。
知性?
ないと困るんだけど、そうじゃない。
運動能力?
いいえ、これはできないように見せる方が好都合よ。
じゃあ、何かって?
それは…。
「きゃあああ! アルバ様よ!」
「今日もなんて凛々しいの…っ!」
黄色い悲鳴の中、廊下を歩いてくる一人の生徒。
短すぎない黒髪に涼やかな目元。
そして、女子生徒を一人残らず射抜くような鋭くも優しい眼差し。
アルバ・ラングレイ。
そんな彼が学園一のモテ男。
…そのおかげで学園一のモテ女である私のプライドはズタズタだ。
(許せない…っ!学園一のモテの称号が似合うのは私なのに!大体…サキュバスである私の“魅了バフ”にかかれば、この学園の男なんてみんなチョロいものだったのに!)
私は男子生徒に囲まれながら、アルバを見て奥歯を噛み締める。
そう。
学園で私にちやほやしない男子生徒なんていないのだ。
…ただ一人、あのアルバを除いては。
(…ふふっ、今に見てなさい。あんな“エセ王子”なんて一週間で私の犬にしてやるんだから)
私はほくそ笑む。
今日のために鏡の前で最強に可愛い表情の練習を欠かさずにやってきたのだ。
可愛い努力は裏切らない。
そして、実績こそが私の自信の源。
(今日こそ!その澄ました顔を真っ赤にさせてやるわ!)
私は拳を握りしめて立ち上がった。
「あっ…?おっとっと…?」
私は何度も綿密に計算し尽くしたタイミングで彼の目の前で足をもつれさせた。
狙うは彼の胸の中である。
「きゃっ!?」
不自然さを感じさせない動作に完璧なタイミング。
ここにいる誰もが私は“たまたま”バランスを崩して倒れたとしか思わないだろう。
私は狙いを定めた場所へと身体を傾ける。
(さあ、抱きとめなさい! そして、私の甘い匂いに当てられて狼狽えるがいいわ!)
そう確信した次の瞬間。
「おっと…危ない」
衝撃に備えていた私の体は突如、予想外の浮遊感に包まれた。
何故か。
飛び込もうとした私の身体にアルバはタイミング良く腰を片腕でふわっと支えると、もう片方の腕を私の膝裏に通したのである。
ーーー所謂、お姫様抱っこというやつである。
「…え?」
「廊下で転ぶなんて君は意外とおっちょこちょいなんだね。リリィ」
…至近距離。
そこで、ふわっと香る石鹸と…なんだか甘い女の子の匂い。
まわりからは黄色い声が上がる。
そして、よりにもよってアルバは私を抱き上げたまま少しも揺らがずにあの“天然イケメンスマイル”を至近距離で炸裂させた。
「〜〜〜〜ッッッ!?!?!?」
私は顔が耳まで急激に熱くなるのを感じた。
そんな私を見て、アルバは心配したように更に顔を覗き込む。
「顔が赤いよ? 熱があるのかな…保健室まで、このまま運ぼうか?」
「ひゃ、ひゃいっ!? い、いえ、あ、あの……っ!」
心臓の音がバクバクとドラムでも叩くかのように大きく、それも速く響く。
私はうまく言葉も出ず、ただアルバから目を離せずにいる。
(ち、ちょっと待って!? 魅了をかけるのは私のはずなのに…なんで私の心臓がバックバクいってるのよぉ!!)
アルバの様子は変わりない。
…私の初戦は、わずか三秒で完全敗北に終わったのだった。




